インタビュー

気持ちも業務もスッキリした職場を目指した間接部門における「仕事の進め方改革」

アイシン・エィ・ダブリュ 取締役・専務役員の中村泰也氏に聞く(1)

(聞き手:ジャーナリスト 伊藤 公一氏)

中村 泰也(なかむら やすなり)

アイシン・エィ・ダブリュ 取締役・専務役員
1980年トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)に入社。オートマチックトランスミッション開発に従事。その後、トヨタテクニカルセンターロサンゼルス、ダイハツ工業に出向するも技術開発一筋。
2013年アイシン・エィ・ダブリュに出向し技術副本部長、2015年から品質本部長を兼務。2015年から現職。
――直接部門から移ってこられて、間接部門の空気をどのように感じられましたか。
中村:トヨタ自動車時代から開発畑を歩んでいて、6年前に当社に参りました。技術本部で設計に2年ほど携わったところで、品質本部との二足のわらじを履き始めます。品質本部はいわば間接部門の牙城のような部署ですから、慣れ親しんだ直接部門との肌合いの違いに戸惑いました。同じ会社でありながら、間接部門は外の世界だったからです。
 しかし、内側に身を置くと見える風景が変わります。率直に言えば、ここに来るまで「間接部門はあまり付加価値を生み出さない部署」という印象を漠然と抱いていました。なぜ、そう感じたのか。直接部門は自分の描いた夢をカタチにする。一人ひとりはその想いを求めてひたすら走る選手のようなものだと思っていたからです。優秀な選手はやがてキャプテンになり、監督になり、GMになる。そんなイメージを描いていました。しかし、間接部門の戦い方は違うなと感じました。
――双方を経験してみると、直接部門と間接部門とにはどんな違いがありますか。
中村:端的に言うと、製造とか技術、生産技術といった直接部門の職場は団体種目の競技に例えられると思います。それに対して、人事や経理、総務、品質管理などの間接部門は個人種目の要素が強い。言い換えれば、団体種目はチームで戦う多才なスペシャリスト集団。一方、個人種目は文字通り個人で戦う単一種目のスペシャリスト集団です。
 直接部門は業務を通じて、夢に向かって走り続けます。しかし、間接部門では決められたことを繰り返すことが仕事になっている。そこで、間接部門にもチームで戦う変革が必要であると強く感じました。投手に例えるなら、先発完投型から継投型への移行です。

■職場がスッキリしない原因を見つける

――先発完投型から継投型に移るために取り組まれたのが「仕事の進め方改革」ですね。
中村:私が品質本部も見るようになった翌年の 2016年6月に改革をスタートしました。「スッキリした職場を目指した」ということは、当時の職場が非常にもやもやしていたということです。ですから、まず、そのもやもやの原因がなんなのかをみんなで話し合いました。
 間接部門は往々にして個人商店的なところがあります。だから、一人で考えるのではなく、グループで話し合うことにしました。小集団活動の基本ですね。新入社員からは「マニュアルに肝心なことが書いてない」という率直な声が寄せられました。中堅社員は「資料の作り直しが常態化している」「思うように結果が出ない」と訴える。異動してきた部長には「なんでそんな細かいことをやるの」と素朴な疑問を投げかけられました。
――立場に関わりなく、さまざまなもやもやを抱えていることが浮き彫りになりますね。
中村:挙がった声はどれも共感ポイントが高かったものです。つまり、スタッフはみな同じ思いを抱いているということです。直接部門はそれぞれの仕事を通じて、目指すべき目的がはっきりしています。電動化や自動化やスマート化ですね。夢と言い換えてもいい。だから、自然にイキイキしてくる。自分が作ったものが売れるのは嬉しいことです。
 それに引き換え、間接部門にはそういう決め手がない。新しいことに対する指示は飛んでくるが、それにどう応じればよいのかが分からない。夢を描けといわれても何が夢なのか見えてこない。要するに、どうしていいか途方に暮れる。だから、ますますイキイキしてこないという悪循環に陥ります。

■間接部門の工程は意思決定のプロセス

――「仕事の進め方改革」の取り組みには自工程完結(JKK)の考え方が用いられていますね。
中村:JKKはトヨタの技術部時代に触れていますが、当時はその真髄がよく飲み込めなかったので少し距離を置いていました。しかし、今回の改革を進めるにあたって私自身がもやもやしていたので、改めてトヨタの大先輩でもある日科技連の佐々木眞一理事長が書かれた何冊かの本を手に取りました。目からうろこが落ちましたね。JKKの有名なフレーズである「八百屋の親父が元気なわけ」は特に胸に響きました。間接部門の抱える課題を解くためのヒントが示されていたからです。
 考え方の中では「間接部門における工程は一つひとつの意思決定である」という指摘が刺さりました。まさに「これだ!」という感じです。間接部門の仕事には直接部門のような工程がないので、なかなか改善できないと思い込んでいた私の考えがくつがえされました。答が分かれば後は楽です。意思決定のプロセスをうまく運べば必ずイキイキした職場になると確信したからです。

■付帯業務のスリム化と切り出しに挑む

――「指南書」を得たことで、活動はどのように進んだのですか。
中村:まずは、ふだんの仕事の付帯業務のスリム化と切り出しを中心とした業務効率改善に挑みました。自動車業界は百年に一度といわれる大変革を迫られています。それに伴って、間接部門がなすべき仕事の量は年々、飛躍的に増えています。それらに対応するためには本来業務に集中できる環境づくりが欠かせません。そこで、それぞれが抱える悩みや課題を持ち寄って、手順を見える化しました。その手順をフローにすればシンプル&スリム化を図ることができるからです。
――間接部門では同じ仕事でも、相手が違うと対応が変わる場合があると聞きました。
中村:その通りです。例えば、工程設計 変更が生じると、その内容をまとめて自動車メーカーに届けなければなりません。これまで見てきたように、間接部門は決められた仕事を決められた手順でする仕事です。
 ところが、やっている仕事は同じであっても、担当する相手の会社や国の事情などによって、手順や方法は違います。要するに、規定はあっても個別対応になる。だから、一人ひとりが個人商店化する。席が隣でもやり方が違う。それを持ち寄って、互いの相違点を確かめることができたのは良かったですね。