講演概要

第118回品質管理シンポジウム

※組織名・役職は2024年9月現在の表記になっております

特別講演

南海トラフ巨大地震・富士山噴火・首都直下地震の予測と防災
—「大地変動の時代」を生き残る企業戦略

鎌田 浩毅 氏 京都大学名誉教授
京都大学経営管理大学院客員教授
龍谷大学客員教授
鎌田 浩毅 氏

【講演要旨】
近い将来「南海トラフ巨大地震」「富士山噴火」「首都直下地震」が必ず発生します。南海トラフ巨大地震では総人口の半数6800万人が被災し、2011年に起きた東日本大震災の10倍の経済被害をもたらします。発生時期は2035年±5年と予想され、休んでいた東海地震が連動し、「噴火スタンバイ状態」の富士山の爆発を誘発します。また首都直下地震の震源は19箇所あり、東日本大震災の5倍の経済被害になります。昨今、地球温暖化で気象災害が激化していますが、脱炭素とカーボンニュートラルの政策は、カルデラ大噴火がもたらす地球寒冷化でひっくり返る可能性があります。「京大人気 No.1 教授」を24年間続けた「科学の伝道師」が、最先端の地球科学が示す予測と防災対策を開示し、生き残るために企業は何を準備すべきかを具体的に提案します。予備知識としてYouTube「京都大学最終講義」(現在100万回再生中)もご覧下さい。

基調講演

変化に対応する品質経営
~Machining Transformation~

森 雅彦 氏 DMG森精機株式会社
代表取締役社長
森 雅彦 氏

【講演要旨】
近年、我々企業を取り巻く環境が大きく変化しています。当社が工作機械を納入している製造現場においても、少品種大量生産から多品種少量生産への移行、少子高齢化による労働人口の減少、脱炭素・省資源への要求の高まりなど、多くの変化が見られます。
当社では、お客様が生産活動においてこれらの変化に対応し、サステナブルな社会を実現するために、MX(Machining Transformation)を提唱し、全世界のお客様に訴求しています。MXとは、「従来分割されていた長い工程を1台の工作機械に集約し、それに自動化システムを搭載することで、変化に強い、稼働率の高い製造現場を作ること。そして、この一連の流れをDX(Digital Transformation)によって加速すること」を意味します。
今回は、MXの事例を交えて、当社が変化する環境の中で顧客に価値を提供し続けていくための取組について紹介します。

講演1

サステナブルな価値創造
~「できない、無理だ」は出発点~

小谷 高代 氏 株式会社ユーシン精機
代表取締役社長
小谷 高代 氏

【講演要旨】
当社はプラスチック射出成形工場向け産業用直交型「取出ロボット」を主力製品としたFAメーカーです。取出ロボットが把持、搬送するプラスチック部品は幅広い業種で様々な製品に使用されることから、取出ロボットに対する顧客要望は多様です。当社は、取出ロボットを顧客ニーズに合わせて一品一様にカスタマイズし、高品質かつ短納期で納品、長期に渡り安心できるメンテナンスサービスを提供するための仕組み化を行っています。変化する時代の中で、顧客の工場環境や要望を正しく認識して製品づくりを行うとともに、労働人口の減少や環境等の社会課題の解決に貢献することを目指します。顧客価値を創造し、社名の由来であるお客様からの信頼(ユーシン:有信)を獲得し続けるための取り組みをご紹介します。

講演2

研究品質
~変化する社会課題と向き合う~

伊藤 みほ 氏 株式会社デンソー
執行幹部 先端技術研究所長
伊藤 みほ 氏

【講演要旨】
デンソーは、自動車業界で培ってきた様々なコア技術を活かし、「自動車業界のTier1」から「モビリティ社会のTier1」へと価値提供範囲を広げ、持続可能なモビリティ社会の発展に貢献することを目指しています。
本講演では、2035年の社会課題解決に向けた当社の技術開発の取り組みについて紹介いたします。カーボンニュートラル、資源循環、安心な移動、幸福循環などの実現に向けた課題は複雑化してきており、これらの課題解決には、最適なイノベーションエコシステムの構築や産学官連携の重要性が増しています。
また、生成AIが急速に進化・普及する今日において、研究品質向上に向けた試行錯誤型からデータ駆動型への研究スタイル変革についてもお話しさせていただきます。

講演3

(仮)アートと社会 ~現代アート普及の意義~
歴史的文化芸術都市、京都から

カルドネル 島井 佐枝 氏 アートプロデューサー
MUZ株式会社 代表取締役
カルドネル 島井 佐枝 氏

【講演要旨】
過去から現在にかけて芸術の役割は変化しています。
現代社会におけるアートの役割とは何でしょうか。
人類が新しい時代の様々な課題に立ち向かうために現代アートは存在します。
アーティストが鋭い感性で表現する自然や社会の中で感じ取った気づきを、アートメディエーターが発信し、それを鑑賞者が受け取り、共感し、周囲の人々と対話すること全体が芸術活動であり、人々を理性のある思考へと導きます。
今回は、京都での取り組みを中心に弊社のいくつかの文化事業を紹介しながら、現代アートと工芸、装飾について、仮説と探求の源となる好奇心と疑問、想像力と創造性、主体性と向上心、これらを身につけるためのこれからあるべき美術教育、未来に向けてよりよい社会を築くための一般市民のアートリテラシー修得推進についてお話しします。

講演4

品質管理を支えるダイバーシティ経営

渡邊 弘子 氏 富士電子工業株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 ものづくりなでしこ 代表理事
一般社団法人 日本金属熱処理工業会 会長
渡邊 弘子 氏

【講演要旨】
変化していく環境において、品質管理を支えるためには生産システムの見直しや効率化など制度・体制面での対応が必要ですが、その対応を支えるのはやはり「人」です。これからの現場を担ういわゆるZ世代が生き生きと働けるためには何が必要かを考え、世代間での考え方のギャップを私たちが認識しない限り、これからの変化に対応し続けることができる企業体質は構築できないでしょう。
今回の講演では、当社のダイバーシティ経営の歩みとその成果、国際的に見た女性活躍の実態などから、これからの企業を支える「人」に焦点を当てたお話をさせていただこうと思います。