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日刊工業新聞連載記事

顧客価値創造と現場力(8)組織オペレーションの仕組みづくり

この記事は日刊工業新聞社の転載許諾を受けています。

つくり方提案力、飛躍的に向上

企業が環境変化に適応するためには、外部環境の要求に応えるべく「外部適応」として自らの事業を位置づけた後に、組織内部の諸機能を最適に組み合せる「内部適応」が欠かせない。今回は内部適応に焦点を当て、2016年にデミング賞を受賞した丸和電子化学の優れた組織オペレーションの仕組みを紹介する。

完成品メーカーである得意先は、国際競争激化に対応すべく、部品レベルの細部に踏み込んだ「モノづくり改革の原価低減活動」を推進しようとしていた。そのためにはサプライヤーの技術力を開発の上流工程から活用することが求められる。同社は「良品廉価の高度実現」を外部適応として定め、これに適合した組織オペレーションの仕組みづくりに着手した。

その中核は、組織横断的に不良再発防止を推進する同社独自の品質未然防止活動(QMB活動)だ。品質保証部が集約した過去の不具合を、関係部署が連携して工程別に分析し、製造課が対応策を新たな作業標準として作業手順項目に織り込む活動であり、同社の自工程完結保証の強化に貢献している。

さらに、工務課や技術課などが一体となって、「自動化できないか」「センサーなどハード化して検知できないか」など、人による作業を設備に置換する検討を通じて、「人による自工程完結保証」から「設備による自工程完結保証」への移行が推進される。

QMB活動を通じて蓄積されたノウハウは、製造の立場から設計に対して「つくり方」を提案する能力を飛躍的に高めた。製品企画構想の初期段階から得意先と同社が一体となって、企画と設計と製造が協働して検討する機会がもたらされた。同社のコアとなる組織能力は、過去の不具合データを出発点とした同社独自の自工程完結保証に留まらず、製造の立場から得意先の設計部門に対する「つくり方提案力」を通じて、設計の信頼性に裏打ちされた顧客製品の良品廉価に貢献している。

職業能力開発総合大学校 客員教授 加藤雄一郎