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日刊工業新聞連載記事

顧客価値創造と現場力(6)いかに事業全体で収益化するか

この記事は日刊工業新聞社の転載許諾を受けています。

マネタイズ・シナリオでビジネス進化

「長期的展望に立って顧客の成長に寄り添う」という顧客志向は、顧客成長プロセスを支える実現手段としての商品ラインアップを充実させ、複数の商材を組み合わせたソリューション提供型ビジネスへの移行をもたらす。

「大学」は言うまでもなく教育機関であるが、理工系大学の場合、「要素技術を商品として販売する(学内で発明された技術を産業界に移転する)」ことで利益を得る製造業に似た顔を併せ持つ。文部科学省が毎年度調査している大学などでの産学連携の状況中、民間企業との共同研究費受入額ランキングで、研究者数が300人以上―500人未満の大学部門で首位(2016年度)を走る名古屋工業大学における検討の一端を見てみよう。

同大の産学官金連携機構では、企業が“不足シーズの獲得→研究企画機能の獲得→他社との協業機会の継続的獲得”という成長プロセスを描くことができるよう、不連続な社会変革を顧客企業とともに切り開くべきだとの検討がなされた。これにより獲得する収益は第1コマ:産業界支援実績に裏打ちされた競争的研究資金の獲得による要素技術開発→第2コマ:企業などに技術移転及び共同研究の獲得→第3コマ:脱・自前主義志向の企業が参集する協業機会の継続的提供→第4コマ:パートナーラウンドテーブルと呼ぶ大学・企業間の包括提携を通じた研究企画機能の外販というシナリオとなる。

マネタイズ・シナリオは「事業全体でいかに儲(もう)けるか」という問いをわずか4コマで表すというシンプルなフォーマットだが、この単純さがむしろ功を奏し、実務家にソリューション・ビジネスの意識づけを促す。ハード単品販売が染みついている製造業の場合、「商品の販売」と「保守・メンテナンス」という2コマしか埋まらないケースが散見される。マネタイズ・シナリオを用いることで事業の打ち手の貧弱さに気づき、製造業がソリューション提供型ビジネスに進化する契機となることが期待される。

職業能力開発総合大学校 客員教授 加藤雄一郎