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日刊工業新聞連載記事

顧客価値創造と現場力(11)品質保証の対象を「モノ」から「コト」へ

この記事は日刊工業新聞社の転載許諾を受けています。

品質マネジメントシステム拡張

実務家と話していると、品質保証の二極化が進んでいると感じる。一つは、モノに着目した従来型の品質保証。もう一つは、顧客が実現したいコトに着目した品質保証だ。前者は、モノに対する顧客の要望を満たすことに重きを置き、後者は、顧客が実現したいコトのサポートを重視する。

モノの品質保証とコトの品質保証のどちらが重要かという質問は、適切ではない。スマートコンストラクションというダントツソリューションを展開するコマツの強さは、ダントツ製品なくして実現しない。モノの品質保証に裏打ちされたコトの品質保証が、これからの製造業が目指す姿と言えよう。

コトの品質保証の実践には、現行の品質マネジメントシステム(QMS)を拡張する必要がある。モノの企画、開発、設計、生産準備、製造を中心にした現行プロセスの前段階に、(1)片付けるべき顧客のジョブを発見し、ジョブに紐(ひも)づく個々のDoニーズ(行為ニーズ)を抽出するプロセスと(2)抽出されたDoニーズをHaveニーズ(ハード・ソフトに対する要求品質)に変換するプロセスがあれば、その後ろに控える現行QMSによって、顧客が実現したいコトを共創できるようになる。

品質保証は「顧客・社会のニーズを満たすことを確実にし、確認し、実証するために、組織が行う体系的活動」と定義される。ただし、これまでは着目する対象がHaveニーズだったため、「モノのできばえ」に留まる傾向があったといえないだろうか。

これからの品質経営が目指すことはDoニーズに着目した「コトのできばえ(顧客のジョブを片付けた程度)」の追求。これにより、「ハードとソフトを組み合わせて顧客のジョブを解決する」というソリューション提供型ビジネスによる持続的な脱コモディティ化を実現するからだ。この実現に向けて、製造業各社のQMS拡張をサポートしていきたいと考えている。(おわり)