クオリティフォーラム 2021

企画セッション

第1日目

A会場

品質で勝つ!これからの品質経営を考える

~「令和大磯宣言」後の日本産業界競争優位への道〜

「品質経営研究会」が示す、これからの品質経営の進め方

~品質経営をどう測るか~

佐々木 眞一 氏
トヨタ自動車㈱ 元副社長
一般財団法人 日本科学技術連盟 理事長
佐々木 眞一 氏 以前、日本の産業はジャパンアズNo.1と言われるまでの急成長を遂げました。
社会やお客様のニーズに素早くお応えする「もの造り」は、品質経営の根幹で統計的手法と組織的な取り組みを統合したTQMはそれを支える大きな力となりました。20世紀終盤に起きた社会やお客様の価値観(ニーズ)の変化は、それまで日本の産業が得意としてきた「品質の良い製品を量産することでコストを低減し競争に勝つ」というビジネスモデルは通用しなくなり競争力が急激に低下してしまいました。その中にあってもモノからコトへと言われる価値観の変化に素早く対応し業績を上げている企業が実践する「コト価値時代の品質経営」と「それを支えるTQMとは」の研究結果をお話します。

コニカミノルタの顧客価値創造と組織能力向上

杉江 幸治 氏
コニカミノルタ株式会社
上席執行役員 品質本部長
杉江 幸治 氏 当社は「Imaging to the People」というビジョンのもと、「創業以来磨きあげてきた画像や色を核としたイメージング技術」と「全世界でのお客様との繋がり」の強みを活かしながら、顧客価値・社会課題解決につながる企業活動に取り組んでいます。経営環境が激変する中、持続的に成長・発展していくためには変化に対応でき、自ら変化を創り出せる組織力の獲得・向上が必要です。当社の目指す姿、事業構造や事業モデルの転換、お客様視点に立った価値創造の変革プロセス、組織能力向上など、それらの挑戦・取組みについて事例を交えて紹介します。

「アクシアル リテイリングにおける品質経営」

原 和彦 氏
アクシアル リテイリング株式会社
代表取締役社長
原 和彦 氏 当社グループはスーパーマーケット「原信」「ナルス」「フレッセイ」130店舗を北陸、北関東にチェーン展開しています。経営理念を実現するために、グループ長期ビジョン「 Enjoy Axial Session ♪ 」のもと、品質経営を基本政策に掲げています。TQMを経営の根幹に据え、「判断の基準はお客様」を指針としてお客様のご満足向上に努めています。スーパーマーケットにおけるおいしさ、価格、品揃え、清潔感、便利さ、楽しさなどの品質を高め、地域のお客様を大切にしつつ、今まで以上のマスメリットを創出できる組織を目指しています。
40年にわたって培ってきたTQMを原点に、お客様への新たな価値の提供と組織能力の向上で経営に磨きをかけてまいります。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

鈴木 浩佳 氏
【コーディネーター】鈴木 浩佳 氏
トヨタ自動車株式会社
モノづくり開発統括部 主査
B-1会場

デジタルトランスフォーメーション(DX)による
新しい価値の創造 Ⅱ

ニューノーマル時代の製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)と東芝の取り組み

福本 勲 氏
株式会社東芝
デジタルイノベーションテクノロジーセンター
チーフエバンジェリスト
福本 勲 氏 東芝は2018年に発表した新たな経営戦略「東芝Nextプラン」の中で、世界有数のCPS(サイバー・フィジカルシステム)テクノロジー企業を目指すことを宣言し、様々な取り組みを行ってきました。本講演では、DXの取り組みのポイントやその実現において重要となるステージ、DXの取り組みが期待されるカーボンニュートラル時代における当社の取り組み事例、これらを支えるリファレンスアーキテクチャー策定の取り組み、日本の製造業がDXに取り組むためには何が必要なのかなどについてお話をさせていただきます。

「製造業DX調査」から見えた現場の「本音」と「課題」

三好 敏 氏
日経BP 総合研究所
クリーンテックラボ 上席研究員
三好 敏 氏 日経BP総合研究所は、日本の製造業DXの全体像やその実態を明らかにするために、日本科学技術連盟様の協力もいただき、製造業321社と製造業従事者3000人を対象にした2つのアンケート調査を実施しました。このセッションでは、その結果をまとめた「製造業DX調査レポート」に掲載したデータを紹介しながら、DXに取り組む企業の意識や、企業内のDXの実態を解説するとともに、そこから見えてきたDXを進めるうえで課題について言及します。

デジタルトランスフォーメーションによる価値創造への挑戦

髙山 茂樹 氏
旭化成株式会社
代表取締役 兼 副社長執行役員 技術機能部門統括
髙山 茂樹 氏 旭化成は、製造業としてより良いものモノをより安く提供することを価値提供と信じ、長い間、製品の性能・品質の改善を継続してきました。しかし昨今、世の中の仕組みや価値観は大きく変化しつつあります。企業を取り巻くステークホルダーも複雑化し、品質という価値の概念さえも大きく変わろうとしています。
既に、最近の品質要求は、お客様からだけではなくステークホルダーとしての“社会”からも、カーボンニュートラルあるいはリサイクルという新たな価値を要請されています。これに応えるには、製品設計、製造プロセス、運転管理、さらには市場での使われ方にまで踏み込んだ変革が求められます。ここでの品質管理・品質保証においては、バリューチェーン全体の最適解を見出す必要があり、そのための手段がデジタルトランスフォーメーションです。
以上の視点を元に、我々が取り組むデジタルトランスフォーメーションによる価値創造の挑戦を紹介します。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】福本 勲 氏
株式会社東芝
デジタルイノベーションテクノロジーセンター
チーフエバンジェリスト
福本 勲 氏 現在のデジタルトランスフォーメーション(DX) の取り組みの多くはデジタルテクノロジーを用いた既存ビジネスの延長線上での効率化に留まり、本来のDXの取り組みである未来視点、パーパス視点での取り組みはまだ多くないと思われます。手段の目的化に陥らず、未来視点、パーパス視点でのビジネスモデル変革が進まない理由は何で、加速・成功させるためにすべき工夫は何なのでしょうか。皆様の意見を聞きながらパネルディスカッションを進めてまいります。
B-2会場

トップが語る「質向上」に向けた取組みと課題

デミング賞挑戦を通じた顧客価値の提供で「品質至上を実現」

~次の100年へバトンをつなぐために~

石原 光章 氏
アート金属工業株式会社
EA(エグゼクティブ アドバイザー)
「2020年度デミング賞受賞」
石原 光章 氏 当社は長野県上田市を拠点におく、自動車など内燃機関用ピストンの専業メーカです。創業100年にあたる2017年に自動車業界の大変革期に対応するため、(株)アイシンと経営統合したことがデミング賞へのチャレンジのきっかけとなり、2020年にデミング賞を受賞することができました。振り返ると、TQMの理解不足からいかに組織的な活動ができていなかったかに気づかされ、必死に取り組んできた3年間でした。今回は、デミング賞の挑戦を通じ今一度顧客志向を強く意識し顧客価値を再認識することで組織能力を獲得するまでの活動を説明します。また、将来の経営ビジョン達成に向けて、さらに組織能力を向上し、持続的な成功を実践する戦略シナリオ策定に至る過程についてもご紹介します。

新製品立ち上げ業務改善を通した体質強化

~常に成長できる会社づくりを目指して~

望月 郁夫 氏
トヨタ紡織九州株式会社
取締役社長
「2019年度日本品質奨励賞 TQM奨励賞受賞」
望月 郁夫 氏 当社は自動車用シート・ドアトリム等の内装品およびエアクリーナ等のエンジン周辺部品を主力製品とした自動車部品メーカーです。過去より様々な取り組みを行い体質強化を図ってきましたが、2014年から2015年にかけて2車種の立ち上げが続いたことで、不良発生率を一時的に増加させてしまいました。この状況を大きな危機ととらえ、単にその時点での不具合を是正するのではなく、将来も見据え今後想定されるお客様の更なる新製品展開に十分対応することができる体制作りを目指し2016年よりTQM活動を導入・推進してきました。
今回はその活動の主な柱である「高い目標設定とトップによる活動の牽引」「仕事の流れの整理と標準化」「フロントローディングをはじめとした新製品立ち上げ業務の改善」といった活動内容とその成果を紹介させて頂きます。

東海理化が考える「日本のモノづくり」の現状と課題

~勝ち残りをかけた仕入先との二人三脚~

二之夕 裕美 氏
株式会社東海理化
代表取締役社長
二之夕 裕美 氏 日本のモノづくりは、大企業と専門性の高い中小企業による垂直分業構造によって支えられてきた歴史があります。しかし、海外での生産増加や市場ニーズに合わせた生産品目の変化、中国を筆頭にした海外との価格競争にさらされ、その構造が維持できなくなり、大企業に依存してきた中小企業の中には、自助努力だけでは生き残れない企業も現れ始めています。
東海理化も自身の勝ち(価値)残りをかけ、「既存事業での利益確保」「新事業への挑戦」に取り組んでいます。
しかし、足下のオペレーションの体質を強化し、良いモノを造り、しっかり稼ぐためには、パートナーである仕入先(大半が中小企業)と運命を共にし、困りごとをオープンにして品質・生産性等の現場力を高める活動に取り組んでいかなければ生き残っていけません。
本講演では、上記内容について、具体事例を基に「東海理化と仕入先様の取組み」について紹介します。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】棟近 雅彦 氏
早稲田大学 理工学術院 教授
棟近 雅彦 氏 本企画セッションでご講演いただく方々の組織は、いずれもTQMを推進されていますが、今回のご講演ではTQMの全体的な活動をご紹介いただくのではなく、アート金属工業様には「経営目標・戦略の策定」、トヨタ紡織九州様には「新製品開発」、東海理化様には「パートナーとの共創・協調」に焦点を絞っていただき、各トピックでの取り組み内容の詳細をお話しいただきます。その後、視聴者の方々も交えて、質向上に向けて取り組むべき課題は何か、そして日本企業がふたたび質に関して競争優位に立つためには何をすべきかについて討論したいと思います。特に、各事例はトップの方々に語っていただきますので、日本のモノづくりで何をなすべきかについて、トップへのメッセージを発信したいと思います。
C会場

TQMのコアツール「方針管理」の重要性を改めて考える
~日常管理、機能別管理との効果的活用も含む

-JAQ連携セッション-

日常管理/方針管理の今日的問題/課題と対応の方向性

光藤 義郎 氏
元 文化学園大学 特任教授
一般財団法人 日本科学技術連盟 嘱託
光藤 義郎 氏 TQM活動要素の一つである方針管理は、変化に適応し変化を生み出すための経営ツールとして多くの企業で導入され、様々な効果を上げてきた。しかし、時間経過とともにマンネリ化/形式化などの内的制度疲労に加え、昨今の経営環境変化への対応遅れといった外的不適応にも直面し、中々実効が上げられなくなったという声が聞かれる。このような時代背景のもと、昨年、「方針管理研究会」が創設され、現在、企画委員5名、参加企業9社17名という構成で2年目の活動に入っている。本講演では、足掛け2年にわたる本研究会での研究活動を踏まえ、日常管理や方針管理が直面している今日的問題/課題と、それらを克服するための対応の方向性について、その一端を述べるものである。

コーセルにおけるTQM活動の改善に向けた取り組み

~方針管理と人財育成~

清澤 聡 氏
コーセル株式会社
取締役
TQM推進室 室長
清澤 聡 氏 自社を取り巻く環境が大きく変化している中で、企業にとって、従来の慣習にとらわれることなく、目指すべき経営目標・戦略を定め、企業理念のもと全社が一丸となってその実現に向けて取り組む=“TQM活動”の重要性がますます高まってきています。
またそのような中にあって、変化に対応した経営目標・戦略を策定し、これを実現するための「方針管理」活動自体を見直していくことが求められ始めています。
弊社では、1983年の「方針管理」導入以来、38年間にわたり「方針管理」活動を進めてきましたが、以下の①~④の問題・課題を抱えながら現在に至っており、まさに変革に向けた取り組みを開始したところです。今回は、成功事例のご紹介ではなく、今後の「方針管理」のありたい姿について弊社の取り組みをもとに、皆さんとともに考える場、機会としたいと考えています。
〔問題/課題の認識〕
① 経営視点での全社横ぐし問題/課題抽出と方策展開(部門間連携)のあり方
② 目的―問題/課題―アクションの関係性、構造化の質向上(論理的アプローチ重視)
③ 部門の果たすべき機能・役割における重要指標の見える化
④ 活動プロセスの質向上(科学的問題・課題解決力を高める実行力)

トヨタ九州におけるビジョン実現に向けた方針管理の取り組み

原田 聡 氏
トヨタ自動車九州株式会社
経営企画本部長
原田 聡 氏 当社は、トヨタ自動車の100%出資の子会社で、国内3極体制(東海、九州、東北)の、第二の生産拠点として、ブランド「LEXUS」を製造しています。92年生産工場として操業を開始し、現在では設計開発の一部を担っています。経営ビジョン実現に向けた戦略的目標を達成するための推進力として、デミング賞へチャレンジしました。16年にデミング賞、19年にデミング賞大賞を受賞することができました。そのチャレンジを通じて、「お客様第一」「絶え間ない改善」「全員参加」の理念のもと、方針管理、組織能力の向上、小集団活動の活性化など、愚直にTQMを取り組んでまいりました。その中でもコアである活動である方針管理の活動を紹介します。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】光藤 義郎 氏
元 文化学園大学 特任教授
一般財団法人 日本科学技術連盟 嘱託
光藤 義郎 氏 本セッションでの総合討論では、コーディネータによる冒頭の講演、およびコーセル(株)とトヨタ自動車九州(株)における具体的な方針管理活動の実施状況報告を元に、TQMのコアツールとして位置づけされる方針管理や日常管理について、各社が抱える今日的問題や課題の一端を明らかにするとともに、それらの問題/課題をクリアーしていくためには、今後、どのようなことを検討していくべきなのか、今年で2年目を迎える「方針管理研究会」の3つのワーキンググループで進めている活動状況も踏まえて、その方向性を、フロアにいる皆さんとともに、一緒に考えていきたいと思います。
D会場

第27回 品質機能展開シンポジウム

コーディネーター:渡辺 喜道(山梨大学大学院)

品質機能展開の基礎と活用

木内 正光 氏
玉川大学
経営学部国際経営学科 准教授
木内 正光 氏 品質機能展開(QFD: Quality Function Deployment)は、開発・設計部門を中心に多くの企業で導入されて成果を上げています。その一方でQFDは活用の領域が広いことから、はじめて見聞きする人にとっては、具体的に何をして、何に貢献するかが、今一つわかりづらいところがあります。
本講演では、QFDの基本概念、活用の仕方、今後の動向などについて解説します。講演終了時にQFDへの理解が少しでも深まり、他の講演や文献などの事例が読みやすくなれば幸いです。

「形で考えない設計研究会」におけるQFDの活用

岡 建樹 氏
株式会社ISIDエンジニアリング
技術アドバイザ
岡 建樹 氏 新しい価値を創出するには、既存の設計領域にとどまらず、設計領域をより広く拡張することが必要です。そのために、対象とするさまざまな現象のカラクリを理解して「本質」を見抜き、「形で考えないモデル(機能モデル)」を作成し、それらの機能モデルを入出力の関係性に基づいて繋いで全体を俯瞰した上で設計検討することが望まれます。その結果として、新しい価値の創出に加え、多性能適正化(全体設計最適化)と開発効率向上を実現することができます。
「形で考えない設計研究会」では、自動車の音振動を含む複数の現象について、上記の考え方で進めております。その中で、対象とする現象のカラクリ解明の結果を二元表群に落とし込んで、音振動を含む複数現象の最適化を図る取組を行っています。
それらは、QFDの拡張・展開(QFD-Advanced)手法の適用のひとつの姿であると考えています。その検討状況を紹介します。

ワコムにおけるソフトウェア評価へのQFD活用

~シンプトン分析とデザインアプローチ~

山本 高廣 氏
株式会社ワコム Engineering Design Quality
シニアエンジニア
科学工学技術委員、QFD Green Belt
山本 高廣 氏 製造業のIT化に利用されるPLMソフトウェアの最初のバージョンがイスラエルでリリースされたとき、日本語化だけでなく3次元CAD/ERPと連携した複雑なマルチサイトデータベースシステムの品質確保と大規模アセンブリへの対応が必要になりました。この課題を克服するために、企画・設計で活用されるQFDが評価にも使えることに気づき、故障ツリー解析の結果と設計評価をそれぞれ深堀して連携させる評価展開手法を確立しました。この手法はQFDを標準化したISO 16355-1:2021の文献[134]として引用され、米国やEUのQFD研究者と連携しながら改良を進めています。また液晶タブレットの品質確保のため、複雑なソフトウェア環境で発生する障害の原因をシンプトン分析して効果的な対策を実施する必要がありますが、個々の操作と対象の要素分析だけでは限界があり、操作と対象の間のあるべき関係を見出すためのデザインアプローチによる取り組みについてもまとめます。

シーズドリブンQDによる KoT カット OPAW 水晶振動子の
用途開発

~自社のユニークな技術を活かせる新規事業機会の創出の取り組み~

芦沢 英紀 氏
リバーエレテック株式会社
商品開発部 部長
芦沢英紀 氏 KoT カット水晶振動子は、長らく水晶振動子業界で変化のなかった周波数精度の概念に新たな風穴をあける技術シーズとして、リバーエレテックが独自開発した高周波水晶振動子です。しかしアメリカ電気電子学会での論文発表では評価が高かったものの、商品の販売は思うように進みませんでした。当社では新商品販売はマーケットインが中心で、今回のように新しい概念で飛び抜けた性能のものは、従来顧客との適合に課題がありました。シーズドリブンQDは現在保有している強い Seeds(種)をベースとし、それに合うまだ見ぬ有望な顧客を見つけ出す手法です。それまでのリソースでは見つけ出すことが到底できない顧客を品質表と Goldfire を使いながら想像し、顧客潜在ニーズとシーズを結びつけることで、新しい市場を開拓することを試みます。今回は、私たちがシーズドリブンQDを用いて KoT カット OPAW 水晶振動子が航空宇宙分野の無線に有望であることを見つけ出し、新しい顧客への門戸が開いた事例を紹介します。

第2日目

A会場

失敗から学ぶ成功への道 Ⅲ

~企業事例に学ぶ失敗学実践による未然防止~

JR西日本における、失敗学の取り組み事例について

後藤 幸雄 氏
西日本旅客鉄道株式会社
近畿統括本部 安全推進室 担当室長
後藤 幸雄 氏 当社では、2005年に発生させた「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」という変わらぬ決意、その反省と教訓からリスクを抽出し対処する仕組みとして2007年より「リスクアセスメント」に取り組む中で、「失敗学」と出会いました。
「失敗学」では特に、発生事象から教訓を抽出し、一般化・上位概念に上ることで、水平展開が可能となるという長所が注目されがちですが、我々は「言い訳から人の行動に着目して分析する」という、事象を分析する際の視点が最も重要であり、我々に不足していると感じ、分析する際の重要な考え方・手法として展開を図っている最中です。
今回は道半ばではございますが、当社での取り組みを紹介させていただきます。

日鉄テックスエンジにおける 失敗学の導入・推進と今後の取組み

熊倉 政宣 氏
日鉄テックスエンジ株式会社
技術本部 品質管理部長
熊倉 政宣 氏 弊社は総合エンジニアリング企業として、機械・電気計装・システム・土木・建築の複合技術をベースに、企画・設計・施工・メンテナンス・操業まで一貫した総合技術・サービス及び商品にてお客様に満足を実感いただけるよう事業を展開しております。
弊社においては、多岐にわたる業務を行う中で様々な品質トラブルが発生することがありました。そのため 2018 年から失敗学を導入し、安全・品質最優先の浸透に向けて取り組みを開始しました。この 3 年間は濱口先生のご指導による失敗学実例検討会を定期的に開催し、主に社内品質トラブルの分析と未然防止の取り組みを続けております。今回の発表では、弊社における失敗学の導入の経緯、社内への展開状況、実業務への組み込み、従来の品質トラブル対策との比較、今後の課題等について報告し、弊社におけるはまり易いワナの事例などについても紹介致します。

IHI 資源・エネルギー・環境事業領域における
失敗学による未然防止への取り組み

井戸 伸和 氏
株式会社IHI
資源・エネルギー・環境事業領域 品質保証部 主査
井戸 伸和 氏 2018年頃、当社当事業領域では大きなプロジェクトで各種不適合が発生し、それに伴う後戻り作業等で業績悪化につながる事象が連続して発生しており、この原因究明と再発防止が急務でした。原因分析と再発防止は実施していたのですが、その結果の有効性に疑問があり、これまでとは違うアプローチが必要と考えているところで失敗学に出会いました。失敗学における分析、対策立案は極めて有効なアプローチだと思われましたので、2019年度から当社当事業領域に本格的に導入を始めています。導入したからには業績へ貢献できるところまでもっていきたいと誰しも思うところですが、我々はそのために「失敗学分析スキルの習得」、「失敗学による分析実施の実務での定着」、「分析済FWの未然防止への活用」が必要だと考え活動に取り組んでいます。まだまだ試行錯誤の状況ではありますが、これらの取り組みをご紹介します。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】濱口 哲也 氏
株式会社濱口企画
代表取締役
濱口 哲也 氏 おかげさまで近年、失敗学の失敗分析のやり方に賛同して、失敗学を導入してくださる企業がとても多くなりました。その一方で、多くの企業が未だ教育・訓練レベル(失敗学の考え方が理解できるレベル,失敗学の失敗分析が出来るレベル)に留まっており、企業として目指している「失敗学を活用し、未然防止を図る」、すなわち活用レベルにまで到達できていないのが実態です。そこで今回は「失敗学を活用し、未然防止を図るためにどうしたら良いか」ということを討論テーマに、登壇企業を中心に、本セッションにご参加される皆さまと一緒に議論を行い、皆さまと一緒に道筋を考えていきたいと考えております。オンラインでご参加の皆さまも積極的なご発言をお願いいたします。
B会場

グローバルでの競争優位を目指す設計・開発革新

これからのモノづくりにおける課題と期待

-内閣府SIP(Ⅰ期)「革新的設計生産技術」の取り組みを中心に-

佐々木 直哉 氏
株式会社日立製作所
研究開発グループ シニアアドバイザ
佐々木 直哉 氏 新しい情報技術や最先端科学の急激な進展に伴い、人や社会を取り巻く環境の複雑化において、Society5.0やSDGs、AI、IoT、カーボンニュートラル等の大きな動きと技術の進化、COVID-19のようなウィルス感染等の予測不可能な現象など、VUCA(Volatility〔不安定〕、Uncertainty〔不確実〕、Complexity〔複雑〕、Ambiguity〔曖昧〕)とも言われる、今まで経験したことがない不確実で不透明な時代を迎えている。
とりわけ、価値の多様化、ハードからデータ、サービス、ソリューション等へのシフトの流れの中で、これからのグローバルに勝てる製造業をどのように描いて行くかが問われており、持続性科学として、新たなものづくりの考え方が必要になってきている。
本講演では、上記背景に呼応するためのアプローチを考える上で、原点に返り、技術開発プロセスとして、内閣府SIP第1期「革新的設計生産技術」プロジェクト例を中心に、イノベーションにつながるものづくりのあり方を紹介する。

マツダにおける選択と集中による開発革新

人見 光夫 氏
マツダ株式会社
シニアイノベーションフェロー
人見 光夫 氏 マツダは2000年代初頭、1990年代のバブル経済崩壊の後遺症で存続の危機に直面し、フォード傘下で開発受託して生き延びていました。来るべき極めて難度の高い燃費規制に対応しなければならないのに、パワートレインの新技術を開発するべき部門には大手の30分の1程度しか技術者が配置されていないという過酷な現実に対応せねばなりませんでした。課題は山積していてもよく見れば各々の課題は絶対つながっているのでボーリングのように一番ピンにぶつければすべて転がるというような主要課題を見つけてそこへ集中することで多くの課題に対応してきましたのでその考え方を適用事例を交えて説明します。

新時代を生き抜くための、
お客様ファーストの新製品開発から商品開発までのプロセス変革

-開発設計生産性革命のためのプロジェクト型品質マネジメント手法(PQM)

江間 裕通 氏
リコーテクノロジーズ株式会社
執行役員 プロダクト事業本部 本部長
江間 裕通 氏 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的蔓延により世界中の企業が変革を余儀なくされています。この時代を生き抜くためにはアフターコロナ、ウイズコロナの新しい時代に合わせたお客様ニーズにあった商品開発が求められます。リコーテクノロジーズで推進しているプロジェクト型品質マネジメント手法(PQM)の紹介と、この時代を生き抜くために、お客様にとって自社製品がなくてはならない存在にするための商品開発をどのように進めるかについて具体的な事例とともに解説していきます。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】藤井 暢純 氏
合同会社グローバル品質経営研究所 代表
一般財団法人日本科学技術連盟 嘱託
藤井 暢純 氏 本セッションでは、“グローバルでの競争優位を目指す設計・開発革新“と題して、3人の方々にご講演をいただきます。順に簡潔に論点を整理すると以下のとおりです。 講演登壇者3名の方々から「内閣府が進める「革新的設計生産技術推進委員会」の取り組み」の概要とポイント、マツダが成し遂げた開発革新、リコーテクノロジーズが実施している開発設計生産性革命のためのプロジェクト型品質マネジメント手法などを紹介して戴き、以下の論点を基本に、バネルデスカッションを進めていきます。
1)世の中のニーズの多様化とグローバル化への対応とは
2)製品に求められる機能や品質・性能も高度化かつ複雑化
3)製品開発における開発スピードの向上と求められるコストダウン、品質確保
4)従来の延長でなく、製品開発プロセスの変革とイノベーションの加速
以上を進めて行く中で、フロア、視聴者からの質問を中心に、開発設計生産性のイノベーション事例などについて、短い時間では語りつくせなかったポイント及び具体的な成果、更に課題をどう克服したかについて時間が許す限り、引き出せる方向でディスカッションを進める予定です。視聴者、フロアからの積極的な参加を期待してます。
C会場

持続的な企業価値の向上のためのSDGsの取り組み

Society 5.0 を通じたサステイナブルな資本主義の確立とSDGsの達成

長谷川 知子 氏
一般社団法人 日本経済団体連合会
常務理事
長谷川 知子 氏 経団連は、昨年11月に「。新成長戦略」を公表し、その中で新しい資本主義の形として、「サステイナブルな資本主義」を掲げました。目指す社会は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)に、多様な人々の想像・創造力をかけ合わせて課題解決・価値創造を図る創造社会、Society 5.0に他なりません。2030年に向けて「行動の10年」に入った現在、企業は、Society5.0を通じて国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指す「Society 5.0 for SDGs」への取組みを加速し、サステイナブルな資本主義の確立を目指します。
フォーラム聴講者である企業の方々に向けて、経団連が2017年11月に改定した「企業行動憲章」から、「持続可能な経済成長と社会的課題の解決」、「人権の尊重」、「経営トップの役割と本憲章の徹底」に焦点をあてて、具体的に説明していきます。また、どのように企業が実践しているのか、アンケート調査結果や事例も紹介します。

東レグループのサステナビリティ・ビジョン

須賀 康雄 氏
東レ株式会社
取締役 専務執行役員 経営企画室長
品質保証本部長 HS事業開発推進室統括
須賀 康雄 氏 私たち東レグループの使命は、人口増加、高齢化、気候変動、水不足、資源の枯渇など世界が直面する「発展」と「持続可能性」の両立をめぐる様々な難題に対し、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供していくことにあると考えています。
自らの成長によって、世界の持続可能性に負の影響を与えない努力を尽くすとともに、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念の下、全世界のパートナーとともに、パリ協定や国連SDGsをはじめとする世界的目標の追求のために、全力を尽くしています。
世界的な課題の解決に貢献するために、東レグループが取り組む活動について紹介します。

サラヤにおけるSDGsへの取り組み

牧野 敬一 氏
サラヤ エスビーエス株式会社
TQM推進部 TQM推進室 室長
牧野 敬一 氏 サラヤでは、原材料であるパーム油の調達先のボルネオ島における環境保全活動や、東アフリカウガンダでの衛生環境改善のための各種プロジェクトを中心に、SDGsに深く関わる活動を継続的に行っています。また、そうした代表的な活動・プロジェクト以外にも、あまり表には出てきませんが、マネジメントシステムに組み込んだ形での社内全部門参画でのSDGsへの取り組みも推進しています。今回は、代表的取り組みと、全社で推進している取り組みの両面からサラヤのSDGsへの取り組みをご紹介します。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】今野 勤 氏
神戸学院大学 
経営学部 教授
今野 勤 氏 SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に国際連合で採択された全世界の共通目標で17のグローバル目標と169の具体的なターゲットからなる。
SDGsが企業に求めるのは、事業そのもの(本業)による社会課題解決企業が取り組むべきは「持続可能な経営」である。SDGsはあくまでも「活用するもの」であることは言うまでもないことだが、持続的な企業価値向上のために各企業が取り組むべく事項について先進企業の講演と経団連の指針を通じて明らかにしていく。

本企画セッションは3つの講演と、パネルカッションからからなり、以下の通りである。
講演① 長谷川 知子 氏 日本経済団体連合会常務理事
「Society5.0を通じたサステイナブルな資本主義の確立とSDGsの達成」
講演② 須賀 康雄 氏 東レ㈱ 専務執行役員経営企画室長、品質保証本部長、HS事業開発推進室統括
「東レグループのサステナビリティ・ビジョン」
講演③ 牧野 敬一 氏 サラヤ エスビーエス㈱ TQM推進部 TQM推進室 室長
「サラヤにおけるSDGsへの取り組み」
パネルディスカッション
登壇された3氏とコーディネーターで、フロアおよびオンラインからの質問に答える形でデスカッションを進めていく。ふるってデスカッションにもご参加していただきたい。
D会場

経営戦略としての働き方改革の実践 Ⅱ

生産性と満足度を高めるリモート実践マネジメント

大塚 万紀子 氏
株式会社ワーク・ライフバランス
取締役・パートナーコンサルタント
大塚 万紀子 氏 2020年から続く感染症対策で、多くの企業が新たな働き方として「リモート」「オンライン」を活用し始めています。一方で、「いつかコロナ前のように対面式に戻るだろう」と遅れをとっている企業や「ツールがIT化されただけでマネジメントやコミュニケーション方法は変わらない」と考えている管理職が多いことも事実です。
そこで、本セッションでは、「リモートワーク」というビジネスでの新たな働き方の前提を確認しつつ、メンバーの生産性・満足度を高めるマネジメントのポイントについてお話しいたします。
この機会にあらためて、働き方改革の必要性、生産性向上のカギ、リモートワークでのマネジメントのコツはどこにあるのか、ご一緒に探ってまいりましょう。

「月曜日が楽しみな会社にしよう!」
知的生産性を飛躍的にあげ、現場にゆとりを創る
全体最適のマネジメント理論TOC

岸良 裕司 氏
ゴールドラット・ジャパン CEO
アニメーション制作プロデューサー
岸良 裕司 氏 全世界で1000万人が読むベストセラー『ザ・ゴール』。アマゾンのジェフ・ベゾス氏が愛読し、未来を描くために経営幹部全員に読ませているのは世に広く知られ、この本から学び世界の著名経営者になった事例は数知れない経営者の必読書と言われているのはご存じの通りです。
『ザ・ゴール』は経営危機の逆境から飛躍への物語ですが、この中で紹介されている全体最適のマネジメント理論TOC(Theory Of Constraints)はモチベーションとコラボレーションを職場に創り、「月曜日が楽しみな会社」にすることを可能にすることをご紹介します。
  • 逆境から飛躍へー目覚ましい事例の数々
  • 全体最適のマネジメント理論TOCとは
  • なぜ知的生産性倍増が可能なのか 実証実験
  • ゴールドラット博士が語るデミング博士の偉業
  • 数字で表せないことにこそ本質がある「月曜日が楽しみな会社にしよう!」
特別な準備は必要ありません。組織をよりよくしたいという志があれば十分です。

過重労働から“超”ホワイト企業へ

~「残業ゼロ」「男性育休100%」達成からの幸せな「増収増益」~

坂田 匠 氏
株式会社サカタ製作所
代表取締役社長
坂田 匠 氏 人口ボーナス期に称賛された家庭や自身の健康を顧みないモーレツ労働。個人も会社も国家すらその成功体験に縛られ、人口オーナス期という社会変化に対応できなくなっています。過重労働企業であった当社は、ほぼ一年という短期間に「残業ゼロ」を成し、その後「男性育休100%」が常態化し、現在は「健康経営」「ダイバーシティマネージメント」へ邁進しています。「働き方改革」は決して会社業績の負担となるものではありません。少なくとも当社は業界景況の厳しい中でも、好業績を残せています。どのようにして「残業ゼロ」「育休100%」を達成させたのか。その結果、会社はどうなったのかをご報告させていただきます。

3者とフロアによる総合討論(パネル)

【コーディネーター】大塚 万紀子 氏
株式会社ワーク・ライフバランス
取締役・パートナーコンサルタント
大塚 万紀子 氏 2019年の働き方改革関連法成立以来、多くの企業が、将来の成長・競争力強化のために、働き方改革を進めています。しかし、目先の残業削減や業績向上にとらわれ、近視眼的な取り組みに終始してしまう企業や、上意下達な構造を前提とした指示命令で現場の理解を得ないままで取り組みを進めてしまう組織も少なくありません。
本総合討論では、働き方改革の本質とはどのようなものか、経営者としての意識転換のポイントはどこにあるのか、具体的取り組みを進める際にマネジメントとしてどのような役割を担う必要があるのか、などを取り上げ、登壇者・会場の皆様の意見を聞きながらパネルディスカッションを進めてまいります。