本会議2日目 講演テーマ・講演者紹介
特別講演
日本取引所グループシステム部門の取組み
~システムトラブルからの学びと今後の挑戦~
登壇者
横山 隆介 氏
株式会社日本取引所グループ 専務執行役

今回の講演では、安定的なマーケットインフラを提供するために、JPXが「発注者」の立場から行ってきた様々な取組みをご説明すると共に、システムトラブルを契機に開始した「独自のシステム開発能力、設計監理力、保守運用力をさらに高めるため」の取組みついてご紹介させていただきます。
一般発表
組織的にシステムテスト自動化を推進する体制の構築
登壇者
内山 守 氏
株式会社エビデント
共著
株式会社エビデント | |
江良 徹 氏 | 石野 武 氏 |

しかしテスト自動化は製品個別で推進されるため、担当者の力量に左右される傾向が大きい。そのため、①テスト自動化の活動が継続しない、②重複した検討作業を行い非効率、③自動化の推進に消極的、といった問題を抱えていた。
このような属人的な状況を打破するためには、組織的にテスト自動化に取り組む必要があると考えた。まずは、部門としてテスト自動化戦略を作成し、組織としてのテスト自動化の実現を目標として掲げた。加えて、テスト自動化の普及および定着を実現するための実行部隊としてWorking Groupを結成し活動を推進した。
【主な活動】
- テスト自動化する目的の共有、およびコミットメント
- テスト自動化ツールの検討、導入
- 得られたノウハウの蓄積、共有 など
この活動により、現在も継続的にテスト自動化の成果を出しつづけている。
今回の発表では、自動化を推進するためにやったこと、およびそこから得られたテスト自動化のノウハウを共有する。
失敗から学ぶ自動テストの設計プロセス
登壇者
林 尚平 氏
失敗したプロジェクトを見てみるとどの現場もほぼ同じ要因で失敗していることが多いです。
数々の現場を分析したところ、3つ失敗の分類に分けることができます。
- 「実装スキル」の失敗(→必要な試験が自動化できない)
- 「進め方(プロセス)」の失敗(→手戻りが多く進まない)
- 「人・組織」の失敗(→チームの意見が纏まらない)
今回この中で導入に影響する内容は「進め方(プロセス)」の失敗になります。
その導入プロセスを以下の4つに分類分けしました。
- ①計画 :自動化の方針を決める
- ②設計 :自動化の内容、処理構成を決める
- ③実施 :スクリプト作成、実行確認
- ④振り返り :実績検証と改善
このプロセスに従って進めることでリスク/失敗を回避し成功率を高めることができると考えます。
各プロセスの説明には実際にあった現場の失敗を交えて説明します。
個人の見解になりますが自動テストの成功基準を以下のように考えています。
- 1回の実行で手動に比べ最低30%以上の効率化/工数削減ができる
- 必要なテストが自動化できている
- 数百件のシナリオが連続で実行出来る
- 誤判定などなく全て正しく実行出来る
- 実行から結果確認まで人間の手を入れずに最後まで実行出来る
- メンテナンスやリスクの対策済み
この成功基準を満たせる自動テストの導入プロセスを説明します。
状態遷移モデルの一部が明示されていない場合における
自動テスト生成手法
登壇者
松尾 正裕 氏
パナソニックITS株式会社
*2021年度 SQiP研究会 研究コース5「AIとソフトウェア品質」の成果報告

システム開発において、ユーザが直接操作するアプリケーション(以下、アプリ)は仕様変更が頻発する。そのため、設計ドキュメントへの記載は最小限に留め、頻繁に修正が必要な状態遷移図は記述しないことがある。
その場合、アプリの状態遷移モデルが明示されていないため、入力に対する期待動作を機械的に記述できないことから、アプリの状態遷移テストを自動生成することは難しい。
そこで、複数アプリの共通機能である、アプリケーションフレームワーク(以下、フレームワーク)に着目した。アプリ開発者への情報提供の観点からフレームワークの状態遷移モデルは明示されていることが期待できる。従って、フレームワークの状態遷移モデルが常に満たすべき性質を記述することにより、アプリの状態遷移テストの成否を判断する方法を検討した。
また、テストケースについても、フレームワークの状態遷移モデルを活用することで、不具合を効率的に発見するためのテストケースの生成方法についても検討した。
以上、状態遷移モデルが部分的に明示されていない場合における状態遷移テストを自動生成する方法について検討した内容に対して、実験を行い検証したので、その結果について報告する。
ODC分析実践の2つの壁を乗越える取り組み
登壇者
瀬能 芳幸 氏
キヤノン株式会社

そこには2つの壁がある。1つは分類を正しく行うこと、2つ目はどう分析するかである。
それらを乗り越えるために行ったこととは、実際のバグ情報を使うこと。経験者と議論すること。分類と分析を繰り返すことです。
これらを実際どう行ったか、どんなことが分析分類のコツだったのか、そしてどんな成果があったか、を発表します。
ODC分析を導入する際のハードルを下げた取り組み事例
登壇者
岡本 慎司 氏
京セラ株式会社
共著
大山 一典 氏 (パナソニックITS株式会社) |
吾妻 仙一郎 氏 (キャノン IT ソリューションズ株式会社) |
小島 義也 氏 (エプソンアヴァシス株式会社) |
牧野 里香 氏 (ブラザー工業株式会社) |
白 宇飛 氏 (株式会社ベリサーブ) |
石田 敬太郎 氏 (富士フィルムイノベーション株式会社) |
鈴木 慎太郎 氏 (りらいあコミュニケーションズ株式会社) |

ソフトウェア品質の可視化の効果が実証されている手法としてODC分析があるが、導入にはいくつかの障壁がある。
ODC分析の導入を検討している、または導入したが壁にぶち当たっている開発者たちが、組織の壁を越えて事例を研究する機会があり、成功事例や失敗事例から導入障壁について調査した。
その結果以下のことがわかった。
- 既存の不具合管理システムにはODC分析に必要な情報を入力する仕組みがない
- ODC分析の精度に直結する、正しい属性情報付与の知識がない
- ステークホルダーにODC分析の効果を説明することが難しい
これらの導入障壁を解消する取り組みとして、以下の2つの組織に対して各アプローチを実施した。
- ■ODC分析の有識者が不在、環境準備も完了していない状況で導入を決定した(組織A)。
⇒既存の不具合管理票の未使用フィールドの活用や入力ルールを適用 - ■ODC分析の有識者はいるが、導入に対して開発者の協力を得にくい状況である(組織B)。
⇒ODC分析の属性に変換する「読み替え表」を適用
本発表では、ODC分析導入の敷居を下げるアプローチや使用したツールおよびその結果から得られた知見について紹介する。
サービス特性観点でのサービス品質指標の明確化
およびサービス品質の見える化
登壇者
伊藤 功 氏
株式会社日立システムズ
共著
株式会社日立システムズ | ||
赤木 勝由 氏 | 青木 大和 氏 | 大村 憲男 氏 |
吉藤 淳治 氏 | 村上 薫 氏 |

サービス品質に問題があるのか否かは、見えにくい状態のままでは確認することが困難な為、サービス品質の『指標』を定義し、上流工程である企画フェーズから提供後の運用フェーズまで全範囲に指標を導入した。そして、指標の測定結果を各フェーズで評価することでサービス品質の見える化を図った。
本発表ではサービスの品質を各種指標により可視化し、高品質なサービスを継続的に提供するために立案、推進した品質確保施策について報告する。また、本施策を適用したプロジェクトの事例と過去発生した事故への適用シミュレーションによる効果測定の結果についても報告する。
ウォーターフォール開発が浸透した組織へのアジャイル開発導入
登壇者
飯田 貴大 氏
オムロンソフトウェア株式会社
共著
オムロンソフトウェア株式会社 | |
清久 功治 氏 | 阿南 佳之 氏 |

- 問題1:ウォーターフォール開発を主軸としてきたためアジャイル開発の知識・ノウハウが無い。
- 問題2:プロセスに沿った開発に慣れているため、受動的な考え方や行動になる。
- 問題3:ウォーターフォール開発で愚直にやってきた実績があるため、強いこだわりがあり変革を受け入れにくい体質になっている。
これらの問題を解消するためにどのような試行錯誤を行ってきたか取り組んだ内容について紹介する。
アジャイル開発の生産性とは
〜リードタイムのメトリクスを3階層に分けることで見えた生産性の指標〜
登壇者
石垣 雅人 氏
合同会社DMM.com

そこで、よくボトルネックとなるのは、リードタイムの問題である。
「開発が遅くてリリースができない」「組織内の承認がおりず、手戻りが発生した」等の問題に対して、どこに問題の根源があるのか、何に時間がかかっているのかの詳細な洗い出しが困難な現場が多い。または、それらの問題に対して定量的ではなく定性的で感覚的な意思決定を下すことも多い。
本研究では、それらのリードタイムの可視化難化について、定量的であり且つチームに伝えやすい粒度で改善が進むように可視化するアプローチを行った。また、そこから派生する形で、リードタイムを可視化するだけではなく、アジャイル開発における生産性の指標についても見えてきた部分があるのでご紹介できればと思う。
MicroService, AIによる
エッジデバイス判定システムの品質向上
登壇者
Moreillon Maxime 氏
株式会社ジェイテクト
共著
株式会社ジェイテクト |
山田 大貴 氏 |

- ルールベース判定ロジックは構築に時間を要し、環境に応じた判定精度の維持管理が難しい。また特定のケースではその構築自体が困難である。
- モノリシックなシステム構成のため一部を改修すると他の機能に影響が及び予期せぬトラブルが発生する。
- 開発と運用の環境不一致により、運用時に想定外のトラブルが発生する。加えて、バージョン管理ミス等の人為的ミスが生じやすい。
本発表では、これらの考え方を外観検査システム開発に取り入れ適用した際の要点として、システム構成・使用ツール・フレームワーク等を紹介する。
招待講演
メタモデルによる設計情報定義を活用した
トレーサビリティ記録方式の提案
登壇者
西村 隆 氏
株式会社デンソークリエイト
共著
株式会社デンソークリエイト | |
山路 厚 氏 | 原 健三 氏 |

本発表では、度重なる設計変更が発生する現場でも、設計と同時進行でトレース情報が記憶できるトレーサビリティ記録方式として、「メタモデルによる設計情報定義とマルチビューを活用したトレーサビリティ記録方式」を紹介する。本手法を適用することで、トレーサビリティ管理にかかるコストが大幅に削減され、かつ、開発終盤で設計の抜け漏れ発覚し大きな手戻り工数が発生するリスクを減らす効果が期待できる。
ニューロンカバレッジ技法を用いたAIモデル特性分析
およびガイドワード抽出によるテスト十分性向上施策
登壇者
中川 純貴 氏
株式会社日立製作所
共著
株式会社日立製作所 |
明神 智之 氏 |

提案手法では、発生頻度が高いと想定される外乱要素に着目してメタモルフィック関係を導出したが、さらにテスト十分性を向上させるためには、発生し得る外乱要素をより網羅的に検討することが有効である。本報告では昨年の報告内容に加え、弊社で研究を進めているガイドワード抽出技術を用いて様々な外乱要素を洗い出す手法をご紹介する。
アジャイル開発における欠陥検出の
フロントローディングのための品質チェック方法の提案
登壇者
谷﨑 浩一 氏
株式会社ベリサーブ
共著
株式会社ベリサーブ | ||
田上 諭 氏 | 森 龍二 氏 | 蛭田 恭章 氏 |
名古屋大学 |
森崎 修司 氏 |

企画セッション
ソフトウェア・ファーストから考えるソフトウェア品質
登壇者
及川 卓也 氏
Tably株式会社 代表取締役

業務上の経験や研究を主とした経歴
早稲田大学理工学部卒。専門だった探査工学に必要だったことからコンピューターサイエンスを学ぶ。
卒業後は外資系コンピューター企業にて、研究開発業務に従事。現在で言うグループウェア製品の開発や日本語入力アーキテクチャ整備などを行う。その後、数回の転職を経験。OSの開発、ネットワークやセキュリティ技術の標準化などにも携わる。プロダクトマネジメントとエンジニアリングマネジメントという製品開発において軸となる2つの役職を経験。
2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。
研究論文や著書
『ソフトウェア・ファースト~あらゆるビジネスを一変させる最強戦略~』(日経BP)、『プロダクトマネジメントのすべて 事業戦略・IT開発・UXデザイン・マーケティングからチーム・組織運営まで』(翔泳社)
組織にテストを書く文化を根付かせる戦略と戦術(2022秋版)
登壇者
和田 卓人 氏
タワーズ・クエスト株式会社 取締役社長

業務上の経験や研究を主とした経歴
学生時代にソフトウェア工学を学び、オブジェクト指向分析/設計に傾倒。執筆活動や講演、ハンズオンイベントなどを通じてテスト駆動開発を広めようと努力している。株式会社リクルート技術顧問、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社技術顧問。
研究論文や著書
『プログラマが知るべき97のこと』(オライリージャパン、2010)監修。『SQLアンチパターン』(オライリージャパン、2013)監訳。『テスト駆動開発』(オーム社、2017)翻訳。『Engineers in VOYAGE ― 事業をエンジニアリングする技術者たち』(ラムダノート、2020)編者。
SQiP特別セッション
【講演】
ソフトウェア人材のエンゲージメントを高める組織づくりと、
SQuBOK/JCSQE活用への期待
登壇者
野中 誠 氏
東洋大学 経営学部経営学科 教授

それには、人材の心理的エンパワーメントを高める取り組みを組織的に行うことが鍵となります。
そして、ソフトウェア人材の品質知識、スキル、意識を高めることが心理的エンパワーメントに結びつき、その過程でSQuBOKとJCSQEが果たす役割があるものと考えています。
本講演では、この一連の流れについてお話しします。
【JCSQE企業実践事例】
日立グループにおけるJCSQE資格試験,SQuBOKの活用について
登壇者
手塚 聡子 氏
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 品質保証統括本部

日立では、ITサービス・ソリューション提供に関する社内資格制度として、「ITプロフェッショナル認定制度」を運営していますが、その中で、「品質管理エキスパート」という品質管理のスペシャリストも認定しています。当該資格認定をその認定要件にするなど、具体的な資格認定の活用方法について説明します。
業務上の経験や研究を主とした経歴
日立製作所にて、主にSI事業における品質保証業務に従事したのち、情報システム開発やサービス提供を担うSE向けの品質教育の企画運営など、人材育成を担当。過去の事例や現場ノウハウを中心とした社内ナレッジの標準化、その利活用の仕組み作りなどナレッジマネジメントについても推進。
ベリサーブにおけるSQuBOKなどを活用した技術者教育について
登壇者
長谷川 聡 氏
株式会社ベリサーブ

多くの、またさまざまなドメインの業務にあたるソフトウェア品質保証技術者を育成するために、JCSQEおよびその参考になっているSQuBOKや、ソフトウェアテスト技術者の資格認定であるJSTQBなどをどのように活用しているのかを含め、社内の技術教育についてお話します。
業務上の経験や研究を主とした経歴
組込みソフトウェアのシステムテストに長く携わっていたが、JaSSTのテスティングライブに参加したことをきっかけに、より深くソフトウェアテストの世界にのめり込む。その後、組込みシステム、エンタープライズシステムのテストマネージャを多数経験し、2016年ベリサーブに入社。
現在は、品質保証部としてテストの現場がより幸せになるための品質保証組織のあり方を模索し日々奮闘中。
NPO法人 ASTER理事、JSTQB 技術委員など。
ミニパネルディスカッション

野中 誠 氏
東洋大学

手塚 聡子 氏
株式会社日立製作所

長谷川 聡 氏
株式会社ベリサーブ
本ミニパネルでは、これまでの講演内容を踏まえ、一歩踏み込んだ議論を行います。
ご参加の方からの質問も受け付けながら、有意義な議論となることを目指します。
ご参加の方からの質問も受け付けながら、有意義な議論となることを目指します。