企画セッショ

社会システムのレジリエンス設計

-各種インフラシステムの保全による社会基盤の維持-

現在の社会インフラは高度成長時代に作成されたものが未だ現役で稼働しており、早急に保全の必要性が叫ばれております。

今回の企画セッションでは24時間・365日稼働を宿命づけられた社会インフラに着目しました。特に「信頼性・保全性・安全性シンポジウム」において、どちらかというと地味で基盤的な役割を担ってきた「保全性」を主役としてセッションを構成することにいたしました。また、単なる事後保全のみではなく、保全を考慮した社会システムのレジリエンス設計を主題にいたしました。

社会システムの保全やレジリエンス設計の重要性は、特に大規模災害発生時毎に社会の着目をあび、東日本大震災以降は完全に市民権を得ております。

社会インフラとして「鉄道、電力」を例に、実際のシステムのレジリエンス設計及び、日常における保全活動や、将来システムへの展望について皆様と共に考えたいと思います。

各々の講演もさることながら、講演終了後はパネルディスカッションを予定しております、皆様も参加しての熱い討議を期待しています。

講演1

鉄道構造物のレジリエンス向上

-設計と維持管理(異常検知)の取組み-

神田こうだ 政幸 氏
鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部長

ききどころ


神田 政幸 氏

我が国の鉄道は、明治5年新橋・横浜間の開業以降、150年の歴史を有する。在来線2万7000km超、新幹線2千900km超の路線距離を有し、供用期間が100年超の鉄道構造物も数多く存在する。しかしながら、近年の局所的強雨や巨大地震により、鉄道構造物が甚大な被害を受け、鉄道運行に支障を及ぼす場合があった。他の社会インフラと同様に鉄道においても、レジリエンスに着目し、持続可能な鉄道を追求してきた。

本講演では、鉄道構造物のレジイエンス向上策として、設計等の事前対応、災害発生後の事後対応の他、平常時の維持管理(異常検知)の取組みを紹介する。最後に、鉄道システム全体に関わる鉄道施設の異常検知や、省力化・省人化に繋がる最新の取組み(これをデジタルメンテナンスと呼ぶ)を紹介する。

講演者紹介

1993年の入所以来、鉄道構造物の基礎、地下構造物など、地盤中の構造部材や構造物の研究開発に従事し、鉄道構造物の設計基準や維持管理基準のコードライターの1人である。従来の基礎形式の他、新しい基礎形式の研究開発や、既設基礎の耐震補強技術、老朽橋りょうの構造変更による一体化補強に取り組む。この他、鉄道の災害復旧支援やJICAインド高速鉄道の設計支援に携わる。

2005年 財団法人鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部基礎・土構造研究室 主任研究員
2009年 財団法人鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部基礎・土構造研究室 室長
2017年 公益財団法人鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部 部長

現在に至る。

研究論文や著書(代表的なもの)


  • 巨大地震と高速鉄道-新潟県中越地震をふりかえって,山海堂,2006.(分担)
  • 基礎の耐震設計と解析例,総合土木研究所,2008.(分担)
  • 神田政幸他:既設の鋼桁・橋台形式橋梁の構造一体化による延命・耐震化の実大施工試験, 土木学会論文集F4(建設マネジメント), Vol.71, No. 3, pp.125-141, 2015.
  • Fumio Tatsuoka, Masaru Tateyama, Masayuki Koda, Kenichi Kojima, Toyoji Yonezawa, Yoshinori Shindo, Shinichi Tamai: Recent Research and Practice of GRS Integral Bridges for Railways in Japan, Japanese Geotechnical Society Special Publication, Vol.2, No.68, pp.2307-2312, 2016.
  • 鉄道安全解体新書,日本鉄道技術協会,2021.(分担)
講演2

エネルギーレジリエンス

小宮山 涼一 氏
東京大学大学院 工学系研究科 教授

ききどころ


小宮山 涼一 氏

東日本大震災における深刻な被害の経験や近年の自然災害に伴うエネルギー需給のひっ迫等を踏まえ、レジリエンスに対する社会の要請が高まり、その一側面として、エネルギーサプライチェーンのレジリエンスへの関心が高まっている。エネルギー供給障害の発生時、被害影響の最小化ならびに迅速な復旧を遂行しうる能力を強化することが社会にとって重要な課題となる。燃料や電力のレジリエンス強化の意義や状況、社会実装への課題等に関して報告する。

講演者紹介

日本エネルギー経済研究所専門研究員、同主任研究員、東京大学大学院助教、同准教授を経て、現職。
専門は、エネルギー・電力システムの数値シミュレーション分析。

研究論文や著書(代表的なもの)


著書に「レジリエンス工学入門:「想定外」に備えるために」(日科技連 2017[分担執筆])、「Resilience: A New Paradigm of Nuclear Safety」(Springer 2017[分担執筆])、など。
パネル討論

2者によるパネル討論

パネリスト

神田こうだ 政幸 氏
鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部長
小宮山 涼一 氏
東京大学大学院 工学系研究科 教授

モデレーター

門田 靖 氏
㈱リコー 先端技術研究所 IMD研究センター 第四研究室 シニアエキスパート
RMSシンポジウム組織委員会副委員長