研究・事例発表

Session1

故障メカニズムの追究1
故障物理と反応定量化

1-1

金めっき品の腐食に関する調査

栗原 丈 氏
ユーロフィンFQL株式会社
M.2端子やFPCの接点部には接触抵抗を低くするため金めっきが施されている。近年の貴金属の高騰により、めっきの厚みを薄めっき化にすることでコストダウンを図られているが、信頼性が低下する傾向が見受けられる。今回、信頼性低下の原因と発生メカニズムを解明するためにテストサンプルの信頼性試験を実施し解析を行った。今回の発表では、信頼性低下となった原因解明の報告をすると共に、信頼性試験の注目ポイントを踏まえながら報告する。
1-2

モータ接着接合部の高温時の特性評価および熱解析手法

有田 佳織 氏
株式会社安川電機
昨今サーボモータの小型化や出力の増加によりモータの動作温度がより高くなる傾向にある。特にSPM型サーボモータの構成部品である磁石は、発熱部位であるロータに接着接合されているため高温での強度低下が課題となっている。このため、高温状態を考慮した信頼性設計が求められている。本発表では、当社で構築している接着接合部の高温時の特性評価および熱解析手法について報告する。
1-3

MGステータIH加熱温度ムラ最小化の取組み

嘉悦 康治 氏
トヨタ自動車株式会社
カーボンニュートラルの実現に向け、電動車市場の拡大と共に製造工場においてもゼロエミッション化が必要である。電動車に欠かせない駆動モータ製造の中で、CO2排出量が突出しているステータIH加熱工程の省エネ化は喫緊の課題であり、本取組みでは、工場のカーボンニュートラルに尽力する技術者に向けた、IH加熱コイル設計の速く賢い省エネ最適化MBDとして、機能ブロック図・CAE高速化・機械学習・探索を組合せた工法開発のDX手法を確立した。
Session2

故障メカニズムの追究2
新解析法による特性計測技術

2-1

Acoustic Emission(AE)法を活用した接着材料の微小剥離不具合予測

長塚 祐真 氏
ソニー株式会社
近年、接着材料はこれまでの単純な接合機能の役割に加え、光屈折、防水、防振といった付加機能を期待した利用が増えてきている。付加機能の場合、接合機能で課題とならなかった微小な剥離が課題となり、従来の接合評価による寿命予測が困難であった。
今回AE法を採用し微小剥離の特性計測システムを考案した。温度変化機構を有するシステムと環境試験の組み合わせにより、これまで抑制できなかった不良の未然防止が可能となった。
2-2

電気-光サンプリング技術を用いた
Time Domain Reflectometry法による
高密度半導体パッケージの故障解析

前原 泰秀 氏
ルネサス エンジニアリングサービス株式会社
非破壊で半導体パッケージのオープン故障位置を推定する手法の一つに、TDR (Time Domain Reflectometry)法がある。
TDR法では、印加するパルス信号の時間分解能が位置特定の空間分解能に直結する。従来機より短パルス生成が可能な電気-光サンプリング技術を用いた、高分解能TDRを解析に適用し有効性を検証した。高密度パッケージの故障解析事例を紹介する。
2-3

画像分類と異常検知を用いた アルミ鋳造部品の外観検査

武藤 功樹 氏
株式会社アイシン
自動車部品には2~3万点の部品が使用されており、安全性・品質を保証するために生産工程では厳しい検査が行われている。なかでも、外観検査では今でも目視検査が広く行われているが、安全性・機能性能に大きな影響を与える場合があるため、目視検査における見逃しが許されない。そのため、検査員に集中力持続等の過度な負担を強いている。
今回対象とするアルミ鋳造部品の検査工程では、外観検査の一部を画像検査への置き換えを検討しているが撮像した画像から欠陥を発見する処理において、表面性状のバラつきが大きく、良品を不良品と間違えて過検出を多くしてしまうという課題があった。
そこで、異常検知を前段に、画像分類を後段に置きカスケード構成にしたことで、製造業で致命的な見逃しを防ぎつつ、過検出低減を実施した。
Session3

データの利活用による故障診断と予防保全

3-1

再使用ロケットエンジン向け故障診断システムの
最適な監視センサセットの選択

永島 史悠 氏
株式会社IHI
再使用ロケットエンジンを対象とした故障診断システムについて、故障検知率向上のために最適な監視センサセットの選択実験を行なった。本研究では、ロケットエンジンの作動を模したシミュレータを用いて故障診断システムの機械学習に必要なデータを作成した。故障モードごとに監視するセンサの組合せを最適化することで、当該故障モードの検知率が向上することを確認した。
3-2

フライトデータと機械学習を活用した航空機ブリードシステムの予知保全

谷口 誠 氏
全日本空輸株式会社
航空機の予知保全は確実なリスクの排除と経済合理性の両者が求められる。弊社が保有するA320/A321neoシリーズにおいて運航阻害要因となるブリードシステム不具合に対し、フライトデータと機械学習を活用して信頼性の高い予知保全モデルを構築した。
3-3

エアバスA320型機 VOR(超短波全方向式無線標識)装置不具合の
予知モデル構築

永田 昌義 氏
全日本空輸株式会社
弊社で運航している航空機にはデータロガーが搭載され、様々な機体パラメータが記録されている。蓄積されたデータを活用し不具合兆候を見つける活動の中で機体の電波受信アンテナ不具合予兆の発見があった。航空機システム故障による安全性低下やダイヤ遅延を防ぐ観点から未然に整備することが重要であり、今回、データ分析のアプローチから、最終的なモニタリング環境のリリースまで構築を行ったので紹介する。
Session4

データの利活用による信頼性応用

4-1

民間航空機 コックピット・ディスプレイ仕様の
早期評価手法の開発と設計プロセス

山井 洋一 氏
三菱重工業株式会社
民間航空機のコックピット・ディスプレイの最新計器配置をエアライン・ニーズの観点から早期検証し、設計上の重要課題の抽出を促進する新しい評価手法を開発した。シミュレータを用いた動的評価を行う従来手法とは違い、それより早期にモックアップにてパイロット評価を行う手法である。さらに、抽出した重要課題に対する設計要求を整理し、航空機の設計プロセスに反映することで設計後期に発見される課題等のリスクを低減する。
4-2

無人運転技術の実車信頼性実験への適用事例

紀野 広樹 氏
日産自動車株式会社
自動車の実車信頼性実験の実験員の負荷低減/効率化を目的に、市販の汎用無人運転装置の適用開発を実施した。各実験の走行条件に応じた車両挙動を再現をするために、汎用無人運転装置に固有の操作設定を施した事例や、実車信頼性実験固有の無人運転化することによる安全上の課題を抽出し、その課題を対策した事例を紹介する。
4-3

学習情報を最適化した異常診断手法の適用事例報告

佐藤 收 氏
株式会社IHI
IHIが独自に改良・開発した異常診断システムを発電プラントの稼働データへ適用検証事例を報告する。
品質工学的手法の一つであるMahalanobis-Taguchi法をベースに、環境変化に追従した診断が可能な異常診断手法により、異常を高精度に検知することができ、対応の迅速化・計画外停止防止の貢献が期待できる結果が得られた。
本発表では、開発した技術の概要と適用検証事例,事業活用における有用性を報告する。
Session5

信頼性・安全性と最適化

5-1

遺伝的アルゴリズムにおける近傍を用いた探索空間制限

高橋 奈津美 氏
防衛大学校
本研究では、信頼度および構築コストを評価指標とする2目的ネットワークにおける最適化問題に対し、遺伝的アルゴリズム(GA)による解法を検討する。GAの各世代において、親個体の選択では判定が容易であり、かつ現世代までのパレート解の欠損が無い選択領域設定を行う。また交叉ではエッジの評価指標に基づいた方法とネットワークの構造特性を考慮した方法を組み合わせ、親個体の優位性を反映させた子個体生成法を提案する。
5-2

再生関数の近似を利用したブロック取り替え方策における最適解の精度

田村 信幸 氏
法政大学
予防保全方策のための古典的な数理モデルの一つであるブロック取り替え方策の最適解(最適な取り替え時点)を導出するには再生関数が必要になるが、これが解析的に求まらないケースも少なくない。
本発表ではJiang (2020)により提案された近似法に着目し、ブロック取り替え方策の下でこの近似法を用いて得られる最適解の精度について,数値的に調べた結果を報告する。
5-3

要因効果図によらない望目特性のパラメータ設計
(選好度付きセットベース設計手法によるアプローチ)

石川 晴雄 氏
電気通信大学
品質工学における望目特性のパラメータ設計の一つの方法として、要因効果図を用いてなるべく高いSN比のもとで目標平均性能値を近似的に実現する直交表の水準値(ポイント)値を探索する手法もある。要因効果図を用いず、なるべく高いSN比および目標平均値のそれぞれの実現範囲を内側の直交表の水準値の範囲内から直接求めるセット(集合)ベース設計の考え方と具体的手法について提案・説明をする。適用例として簡単な電気回路設計を用いた。
Session6

故障メカニズムの追究3
試験技術と新プロセス技術

6-1

全天候型試験装置を用いたカメラや無線アンテナの動的気象環境の影響評価

瀬戸 治樹 氏
エスペック株式会社
自動運転を支えるカメラなどは、歩行者や車両、建物など障害物検出をリアルタイム認識する必要がある一方、霧や西日、着雪は識別力を悪化させるため気象環境への対応が望まれている。また、災害時の緊急速報通信の確保のため着雪に強い無線アンテナ開発も急務となっている。
そこで、地球気象環境で起こりうる複合した気象環境や、動的に変化する気象環境を再現可能な新たな全天候型試験装置を開発し、それを用いてカメラやアンテナへの影響評価を行ったので報告する。
6-2

変更品管理における限界試験の適用検討

松岡 敏成 氏
三菱電機株式会社
部品変更の判断に、実使用可否を検証する試験時間を十分に確保することが難しい事案が多くなっている。
信頼性は、初期的な動作余裕度の大きさと、その余裕を消費する速さに依存するので、このバランスに変化がなければ、変更後にも、変更前の信頼性を確保できる。
余裕を消費する速さは、品質工学で適用される機能の安定性試験で、比較評価可能である。
観測可能な動作限界を調べる試験で、効率よく部品変更可否を判断できる試験計画を提案する。
6-3

静電式インクジェット装置の最適描画法の検討

石田 雄二 氏
西日本工業大学
インクジェット描画の応用拡大のためには、描画ドットのサイズとばらつきの最小化が必要である。それを実現するために、静電式インクジェット描画装置を使用して, 最適な描画法を検討した。
入力である印加波形数と出力である描画ドットのサイズとの関係から、ばらつきの尺度であるSN比ηと、描画サイズの尺度である感度Sを求めた。さらに、要因効果図を作成して、最適条件を決定した後に、確認実験を行った。
Session7

故障メカニズムの追究4
実装プロセスでの解析技術

7-1

はんだ接合強度試験におけるクラック三次元解析の応用

鬼塚 梨里 氏
株式会社クオルテック
はんだクラックの評価方法として断面観察や接合強度試験が一般的に行われるが、どちらも破壊試験であり、同時に評価することはこれまで不可能であった。本研究ではX線CTと深層学習を組み合わせた非破壊三次元クラック解析手法を用い、その後に強度試験を行うことで上記2つの試験を同時に行った。三次元的なクラックの状態と接合強度の関係性を明らかにし、冷熱衝撃試験時のはんだ形状変化を含めて考察を行った。
7-2

パワーデバイスのウェハプロセスにおける欠陥サイズ分布の統計解析

馬場 正太郎 氏
富士電機株式会社
半導体プロセスでは微細パーティクルへの対応が永遠の課題であり、パーティクル低減と欠陥品の工程内除去が市場信頼性の確保に重要です。今回、欠陥の外観スクリーニングの結果から、欠陥サイズ分布を統計的に解析することでパーティクルの発生メカニズムを特定し改善につなげた事例についてご紹介いたします。
7-3

半導体パッケージの保管湿度がプラズマ表面改質効果の持続性に与える影響

ソウ ショウウ 氏
西日本工業大学大学院
半導体パッケージング分野において、半導体素子とモールド封止樹脂との密着性を向上させることができるプラズマ表面改質工法が注目されている。しかしながら半導体の製造現場では、プラズマ表面改質処理を行っても、生産量の関係ですぐにモールド封止できない場合がある。その場合、プラズマ表面改質効果の持続性が問題となる。今回我々は、プラズマ表面改質効果の持続性がプラズマ処理後の保管湿度に依存することを明らかにしたので報告する。
Session8

安全設計の作り込み技術

8-1

システムデザインレビューによるシステム設計の合理化

河佐 卓慶 氏
日産自動車株式会社
自動車の電動化・知能化に伴い、システム同士が車載ネットワーク上で連携して新規機能を提供するなど、車載システムはより複雑さを増している。このため、構想初期から上位システム要求を定義し、構成要素である部品や制御ロジックが備えるべき要件を明確にして詳細設計に移行する必要がある。この一連のプロセスをシステムデザインレビューとして標準化し開発プロセスに適用している。本取り組みの狙いと成果について報告する。
8-2

フェールセーフモードレビューによる
メカトロニクスシステムの安全と安心の実現

小林 周司 氏
日産自動車株式会社
自動車の電動化・知能化に伴い、システム同士が車載ネットワーク上で連携して新規機能を提供するなど、車載システムはより複雑さを増し、かつ、安全・安心への市場の要求も高まっている。大規模で複雑なシステムを構築し安全・安心を着実に実現させるため、乗員の使い方視点で審議するフェールセーフモードレビューを設定し、またシステムデザインレビューとの連携で実現させることとした。本取り組みの狙いと成果について報告する。
8-3

システムと安全性のアーキテクチャを可視化するための
マトリクス型表記法「SSDM」

竹内 芳樹 氏
竹内システムデザインコンサルティング
自動運転車、無人航空機、空飛ぶ車など、多くの運用モード、機能、構成品を有する複雑なシステムの安全設計およびその認証が益々重要となっている。そこで、この複雑なシステムの安全設計を含めたアーキテクチャを可視化するための手法としてSSDM(System and Safety Design Matrix)という新たな表記法を紹介する。システムズエンジニアリングや各種安全解析の手法を要素として取り入れているが、分りやすくかつ誰でも作成可能なものにしている。
Session9

安全と環境に対する取り組み

9-1

地域交通自動化での事故0に資する自動車旅客輸送業の
事故報告書デジタル化

関田 隆一 氏
福山大学
本研究は、タクシー会社で蓄積してきた手書き事故報告書の数量化データの解析から事故の原因と背後要因を明らかにし、運転意識調査の解析も加えて事故未然防止モデルを昨年報告した。しかしタクシー会社は、未だ手書きの事故報告書作成を継続しており改善がない。その解決として事故報告を確実に入力できクラウドに数量化データベースを構築できるアプリケーションを開発した。本発表はその開発概要と試行結果がききどころである。
9-2

エアライン整備における CO2 排出量削減に向けた取り組み

松井 宏司朗 氏
全日本空輸株式会社
地球温暖化の原因となる温室効果ガスのうち、その大部分が二酸化炭素(以下、CO2)となっており、昨今、あらゆる企業でCO2排出量削減に向けた取り組みが行われています。航空業界は、「飛び恥」のレッテルも貼られ、特に厳しい環境下にありますが、2050年のカーボンニュートラルを目指し、チャレンジングに課題解決に挑むエアライン整備の取り組みをご紹介致します。
9-3

オペレーターガイダンスを通じた安全・省エネ運転の実現

野口 彩純 氏
株式会社小松製作所
安全性向上と燃費改善の実現のために、ダンプトラックの運転改善を継続的・自律的に促すガイダンスツールを開発した。ツールを建設機械に取り付けて実際の稼働現場で使用してもらいトライアルを実施したのでその結果と効果検証について紹介する。