企業価値向上経営懇話会(旧:品質経営懇話会)

開催実績

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第16回会合

~「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」について、
パナソニック、積水化学工業の2社の事例発表が行われる~

1.第16回開催概要

第16回会合は、2022年12月1日(木)に神奈川県大磯町の大磯プリンスホテルとオンラインでの同時開催として実施した。
今回は、第109回品質管理シンポジウム(2019年12月)にて発出した「大磯令和宣言」を受けて、日科技連「品質経営研究会」(委員長:佐々木眞一日科技連理事長)で検討を進めている「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」にもとづき、パナソニックと積水化学工業の2社の事例発表とそれを受けた質疑応答を中心に議論を進めていった。

2.「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」

冒頭、佐々木副委員長から、「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」の説明を行った。この品質経営行動はサブタイトルとして「価値変化に追従できる品質経営行動の研究」とある通り、本会でも複数回議論して考え方には賛同を得てきたものだが、今後具体化に向け以下の検討が不可欠と位置づけている。(以下、図2点を参照)

1) 実際の企業活動としてどんな組織で何をアウトプットとして経営判断に結び付けているか、を示す
2) それを一般解に落とし込み、どのような手順で行動するか、を提示する

3.「企業の存在価値最大化を目指す品質経営行動」の事例発表とディスカッション

(1) 事例発表「パナソニック ホールディングスグループにおける価値創造プロセスについて
  - 経営基本方針に基づく、品質経営活動 -」

「品質経営行動プロセス」に照らし合わせた企業の事例として、パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 小川 立夫氏から事例発表があった。構成は次の通り。
  1. パナソニックグループ概要
  2. 価値創造プロセス
    -「品質経営行動」の取組みに照らして
  3. 戦略とオペレーションについて
  4. 中期戦略の考え方
  5. 経営基本方針の実践
戦略とオペレーションの結び付け、「パナソニックにおける価値創造プロセス」を1枚の表にまとめたことによるグループ全体最適へのしかけとプロセスとESGの枠組みで回していく推進力、サステナブル経営委員会をCEO自らが委員長となり、全社で横串を通して進める活動としたこと、「デザイン経営」という観点から、未来を見据えて自分たちの行くべきところを描きながら、足元の競争力強化という部分に注力していること、品質経営行動において貢献するための人材育成、事業部長品質経営研究会での工夫、パナソニックの現場カイゼン道など、大変多くの示唆に富む発表であった。

(2) 事例発表「積水化学における価値創出プロセス品質経営行動プロセス
  ~「品質経営行動」プロセスの活動紹介~」

2件目の事例として「積水化学における価値創出プロセス品質経営行動プロセス ~「品質経営行動」プロセスの活動紹介~」と題し、積水化学工業株式会社 執行役員 生産基盤強化センター 所長 出口 好希氏から発表があった。

イノベーションの基盤「28のプラットフォーム」、積水化学グループのESG経営、サステナブルな貢献拡大に向けた考え方、持続経営力、品質管理シンポジウムで⓪たの不正改ざん・防止の取り組みである品質データの堅牢性確保、外部損失費の低減を目指す品質ナレッジの活用、事業プロセスの統合実現のためのQMSの運用管理徹底を図るためのガイドライン制定・運用などの取り組みが次々と紹介され、質問が絶えぬほど、高い関心が寄せられていた。

4.「品質経営研究会」の検討内容の報告:
テーマ「コト価値創造を、全員参加で実施するための組織能力の検討活動状況報告」

日科技連「品質経営研究会」のメンバーであるトヨタ自動車・鈴木浩佳氏から、以下の通り報告があった。
  1. 【1】 活動目的・目標
  2. 【2】 これまでの取り組み内容
     ①これまでの取り組み内容 品質経営行動
     ②品質経営実践に必要な組織能力の検討
     ③組織能力開発におけるTQMの貢献
  3. 【3】 5つの主要課題を受けての取り組み
     ①品質管理シンポジウム、クオリティフォーラム等の過去知見の整理
     ②方針管理研究会での検討「顧客価値創造と方針管理を結びつける方法の研究」
     ③コニカミノルタの事例をベンチマークした検討
     ④コト価値開発とコト品質保証のマリア―ジ
  4. 【4】 これまでのまとめ
これらは、まさに「これからの品質経営」を具現化、一般解化するための取り組みであり、概念論、抽象論ではなく産業界に役立ちうる具体的な検討である。
懇話会メンバーからも多くの質問が出され、今後の研究成果に対する期待を述べる、コメントも出されていたのが印象的であった。
最後に、品質経営研究会の委員長も務める佐々木副委員長から、以下の説明があった。
  • 2023年12月の「品質管理シンポジウム」(リンクhttps://www.juse.jp/qcs/)において、品質経営研究会の集大成の発表と討論を実施する予定である。
  • いろいろな階層の方に「これからの品質経営」を実践するためにはどのような組織能力、事業発想をしなければならないのか、というセミナーも検討していく。
  • また研究会の集大成として、一冊の本に纏めたいと考えている。

5.まとめ

閉会にあたり、正・副委員長から以下のまとめがあった。

(1)坂根委員長

私の経験だが、他に安価で同じ商品やサービスが受けられるにも関わらず、それでもコマツを選んでくれるお客様がいた。理由はコマツの企業や商品・サービス、あるいは個々の人などへの「信頼」であった。「ビジネスモデルで先行して…」というのはとても優等生的な言い回しであるが、要するにお客様の信頼を得る、ということである。顧客価値創造ももちろん重要であるが、その前にいかにお客様の信頼を得るのか、ということを今後広い視点で議論したいと思う。

(2) 佐々木副委員長

各企業の発表、また品質経営研究会の発表を拝聴し、品質経営が目指す方向というものが非常にクリアになってきたと感じた。事業を通じて、単にお客様満足を追求するだけではなく、社会貢献に寄与することも、回りまわってお客様満足に結びついていくことである。しかしながら坂根委員長のご指摘どおり、やはり議論の発端はお客様価値を創造することであり、小笠原委員の指摘するように初めからモノやコトに分けて考えるのか、それともお客様価値に軸にしていくのか、それをトータルとしてどういうアプローチがベストであるのか、それを明確にしていくことが本懇話会の求める方向であると感じた。

(3) 佐々木副委員長からのメンバーへの依頼

最後に、佐々木副委員長より、2023年の企業価値向上経営懇話会の進め方についていかのような説明があり、各メンバーともこれを了承した。
  • 本懇話会の傘下に「ワーキンググループ(WG)」を設置し、より具体的なアウトプット創出を目指していきたい。
  • そのため、WGメンバーには、懇話会メンバーの所属企業の部長クラスの方に就任いただきたく、改めてご依頼を申し上げたい。
  

(報告・まとめ:品質経営創造センター 安隨 正巳)