本会議2日目講演テーマ・講演者紹介

特別講演

ソフトウェアエンジニアが経済成長を牽引する時代へ

― AIとともに進化する「品質と専門性」の次のステージ ―

登壇者
和泉 憲明 氏
株式会社 AIST Solutions
CTOオフィス Vice CTO

概要


和泉 憲明 氏

システムの大規模化はソフトウェア産業を成熟させた一方、開発の分業化により、品質は「契約遵守」へと縮退し、エンジニアの役割も構造設計から実装中心へと変質した。
しかし、産業革命の歴史が示すように、新技術は労働者の役割を奪うのではなく引き上げる。
生成AIもまた、ソフトウェアエンジニアの品質観と専門性のスコープを一段上へと拡張する転換点である。

本講演では、DXレポート以降の産業構造における国内外動向を踏まえ、AI前提の社会で求められる品質管理・アーキテクチャ設計・データ駆動の専門知識を整理し、個人の生産性向上にとどまらず、企業変革と経済成長を牽引するエンジニア像を、政策・産業・技術の交差点から提示する。

業務上の経験や研究を主とした経歴

大阪府立大学大学院および静岡大学情報学部での研究を経て、2002年より産業技術総合研究所(AIST)に着任。AI研究の具体的なドメインとして、オントロジーに基づくソフトウェア開発方法論、大規模システムの設計・品質向上など、一貫してソフトウェアの構築・検証・移行に関わる技術研究に従事した後、経済産業省においてデジタルトランスフォーメーション(DX)政策の立案を担当。DXレポートの取りまとめに関与し、「2025年の崖」問題を経営・産業の競争力に関わる構造問題として指摘し、単なるIT刷新にとどまらない、産業構造・経営変革としてのDXの必要性を示した。
その後、データ連携基盤や産業DX、等の政策検討に携わり、製造業、スマートシティ、モビリティ分野におけるデータ・AI活用の実装支援を推進。
現在は、産業技術総合研究所発のAIST Solutions社にて、研究・政策・産業実装の各領域を横断し、生成AIおよびフィジカルAI時代における産業構造転換、データ基盤、AIインフラの在り方に関するデジタル化と産業構造の関係を探求。

研究論文や著書

【著書】
林浩一・和泉憲明・山根基・丸山大輔・岡田隆志『大規模オープンシステム開発入門』丸善出版、2012年

【解説論文】(代表的なものに絞って掲載)
和泉憲明・武田英明・山口高平「意味理解するWebを目指して――次世代Webの方向性を探る――」人工知能学会誌 Vol.17-4, pp.384-391, 2002

【論文】(代表的なものに絞って掲載)
N. Izumi, T. Yamaguchi, "Integration of Heterogeneous Repositories Based on Ontologies for EC Applications Development," Journal of Electronic Commerce Research and Application, Vol.1-1, pp.77-91, 2002

その他(学位、表彰、学会活動、その他特記事項)

  • 和泉憲明「利用者主導情報システム開発における成果物の管理と運用 -- AIST包括フレームワークに基づく自治体情報システム開発 --」ASDoQ(システム開発文書品質研究会)大会(招待講演、パネル)、2012年
  • 和泉憲明「オントロジーとモデル理論に基づくソフトウェア開発の品質向上の実践」ソフトウェア・シンポジウム2016(基調講演)、2016年
  • 和泉憲明「デジタルアーキテクチャ設計としてのビジョン駆動型の社会インフラ整備:DX推進を加速するための政策展開」GITA-JAPANコンファレンス2022(基調講演)
をはじめ、官民・産学の幅広いイベントで基調講演・パネルを多数担当。

一般発表

A3-1 経験論文

生成AIを用いた要求仕様改善における観点表粒度の違いとその影響

登壇者
中川 桂 氏
東京海上日動システムズ株式会社
共著
早乙女 暖 氏
キヤノン株式会社

田口 真義 氏
リコーITソリューションズ株式会社

概要


中川 桂 氏 ソフトウェア開発の現場では、熟練開発者の退職や新規人材の確保難により、要求仕様の検討やレビューを十分な体制で進めにくくなっている。加えて、製品・サービスの高度化に伴って要求仕様は複雑化・大規模化しており、確認すべき項目や観点も増えている。そのため、従来のように熟練者の知見や経験に大きく依存した進め方だけでは、品質を安定して確保し続けることが難しくなりつつある。
また、要求仕様の抜け漏れは後工程で手戻りにつながりやすく、影響範囲も大きい。こうした中、要求仕様段階での確認負荷を抑えながら、抜け漏れの少ない改善を継続的に進められる方法が求められている。そこで本研究では、生成AIを要求仕様改善の補助手段として用いるアプローチに着目し、レビュー時に参照させる観点表の有無と、観点をどの程度具体的に記述するかという粒度の違いが、生成AIによる要求仕様の改善出力にどのような差をもたらすかを明らかにする。
A3-2 経験論文

AI駆動開発における人とAIの責務境界モデルの提案

― 境界仕様に基づくBSDDの実践 ―

登壇者
松井 高宏 氏
合同会社DMM.com

概要


松井 高宏 氏 2025年以降、生成AIはソフトウェア開発の要件定義、設計、実装を支援しつつある。この流れで、仕様を先に定義してAIにコードを生成させる仕様駆動開発(SDD)が広まりつつある。一方で、SDDの実運用では、人の仕様責務が曖昧だと、AIの出力安定化のため、設計判断、テスト観点、実装方針まで記述・確認の対象となり、仕様が案件規模に対して過大になりやすい。本稿は、この課題に対し、人とAIの責務分離モデルBSDD(Boundary Spec Driven Development)を提案する。BSDDでは、人とAIの責務境界に基づいて開発プロセスを再設計する。具体的には、「サービス間合意を要するか」を判断軸として、合意事項を人が境界仕様として定め、それ以外をAIエージェントへ委譲する。筆者が実運用したSDD相当テンプレートに基づく従来運用との比較では、20案件において人が記述・確認する仕様量は中央値で84.5%削減された。また、P2相当の実案件8件では、仕様策定工数は約75%、実装完了までの所要時間は約25%の短縮傾向が観測され、重大な品質劣化は確認されなかった。本研究の新規性は、AIを開発支援ツールとしてではなく、開発プロセス上の責務主体として位置づけ、境界仕様を基点に、人とAIの責務境界を再設計した点にある。
A3-3 経験論文

ソフトウェア設計におけるリスク検出手法(HRDM)の提案

登壇者
平井 宣 氏
株式会社IHI

概要


平井 宣 氏 大規模開発プロジェクトにおいて、リスク予兆を早期に発見し、早期対策を実現するためには何が最も有効か。この課題について長年取り組んできた研究成果を、経験論文としてまとめた。図表中心の設計ドキュメントは品質の可視化が難しく、リスク対策が最も重要となる基本設計終盤での判断を困難にしてきた。また、設計ドキュメントは数千ページに及び、構成もプロジェクトごとに異なる。本研究では、これらの課題を解決する2つの手法を提案する。1つ目は、ドキュメントフォーマットに着目し、複雑性に関わる情報のページだけを抽出する「設計書仕分け手法」である。ドキュメントフォーマットの特徴量を教師データとした深層学習により仕分ける本手法と、他の方法と精度を比較評価した。2つ目は、抽出した情報をLLMのセルフアテンションで特徴量ベクトル化し、複雑性を判定する「セルフアテンション評価法」である。従来の物理シミュレーションによる評価法と比較し、同等の推論性能が得られるかを評価した。本研究は、計算に時間を要したり高度な専門知識を求めることなく、設計書ドキュメントの複雑性を判定できるかに取組んだ。この手法は手軽に試すことができ、適用範囲も広い。設計品質の定量評価を現場で実用的に実現する新たなアプローチとして提案する。ぜひ、ご意見・アドバイスをいただいて、皆様といっしょにさらに役に立つ技術に発展させていきたい。
A4-1 経験論文

品質データが出る前に診断する

──マスタスケジュールから品質管理欠陥を読み解く5つの診断軸

登壇者
上田 昌平 氏

概要


大規模SI案件の品質問題の本質は、個別バグの数や密度ではなく、品質管理プロセスの構造的不在にある。従来の「品質データが出てからどう対応するか」という議論は対症療法にとどまり、欠陥は計画段階から潜んでいる。本講演では、この構造的不在を品質データが出る前の計画段階で診断するフレームを提示する。20年超の大規模SI実務から、マスタスケジュールに現れる構造的欠陥を5つの診断軸A:管理タスクの欠落、B:工程境界の不在、C:上流の品質設計時間の不足、D:工程中の可視化タスクの不在、E:収束プロセスの段階性欠如として体系化した。5軸は独立ではなく、上流の意思決定の質が下流の構造として必然的に露呈する連鎖関係を持つ。本フレームを約1,000人月・3年規模の金融系基幹システムリプレースに外部コンサルタントとして適用し、システムテスト停滞直後に介入。5軸すべてで欠陥を検出し、リリース期限から制約を逆算するバックスケジューリング分析で組織横断の合意形成を加速、リリース遅延を1年以内に圧縮した。診断→翻訳→処方の3段プロセスと、実績のない組織における品質指標運用の実践知を、PMBOKを補完する再現可能なアセスメント手法として報告する。
A4-2 経験発表

質問数を用いた回帰分析によるテスト工数見積り精度向上手法の提案

登壇者
片山 渡 氏
リコーITソリューションズ株式会社

概要


片山 渡 氏 総合テスト工程では、テスト項目数や機能ごとの難易度に基づき工数を見積もっていたが、実プロジェクトでは、項目数が少ないにもかかわらず障害や手戻りが増え、計画工数と実績工数が乖離するケースがあった。特に、仕様に対する質問が多い機能では、曖昧さや認識齟齬が残ったまま後工程へ進み、対策確認や再テストの工数が増加する傾向が見られた。そこで本発表では、テスト設計時に得られる「質問数」を仕様品質の兆候として捉え、回帰分析によりテスト工数見積りへ活用する手法を紹介する。同一プロジェクトの9バージョン×11機能を対象に、質問数、テスト項目数、評価工数を収集して分析した結果、質問数は評価工数と強い相関を示し、テスト項目数と組み合わせることで見積りモデルの説明力が向上した。本手法は、従来の見積りを置き換えるのではなく、質問数モデルと比較するチェック方式として導入できるため、現場の運用を大きく変えずに工数上振れリスクの早期把握に活用できる。本発表は、第41年度(2025年度)SQiP研究会 演習コースII「ソフトウェアメトリクス」で学んだ知見を実務データに適用し、改善提案として発表に至った事例である。
A4-3 経験論文

FPを用いたLCP/NCPとプロコードの損益分岐分析および改修案件生産性テーラリング手法の提案

登壇者
長坂 昭彦 氏
フューチャーアーキテクト株式会社

概要


長坂 昭彦 氏 ローコード/ノーコード開発(LCP/NCP)の普及により、プロコード開発との使い分けは、初期開発費だけでは判断できなくなっている。
ライセンス費用、保守費用、利用期間を含めたTCOで評価する必要がある一方、改修案件では生産性基準が未整備であり、見積りや開発方式選択が個別判断に依存しやすい。
本発表では、ファンクションポイントを基盤に、LCP/NCPとプロコードの損益分岐を分析し、システム規模、ユーザ数、利用期間により有利な開発方式が変化することを示す。
さらに、改修案件について、工程構造と変更影響に基づき生産性を補正するテーラリング手法を提案する。
これにより、開発方式選択と改修見積りを、経験や印象ではなく、定量指標に基づく再現可能な実務判断として行うための枠組みを提示する。
B3-1 経験発表

生成AIエージェントを用いた、
手動テスト手順書から自動テストへの変換手法の検討

登壇者
伊藤 由貴 氏
株式会社MagicPod

概要


伊藤 由貴 氏 テスト自動化を行う際に、既存の手動テスト向けの手順書を自動テストに変換したいというニーズがある。生成AIの普及により、自然言語による指示をもとに自動テストスクリプトを作成できるテスト自動化ツールやライブラリも出てきている。しかし、こうしたツールに手動テスト向けの手順をそのまま与えても、担当者のドメイン知識を前提とした曖昧な記述があること、1行1ケースという細かい粒度で構成されていることなどから、動作が安定しづらい。
本発表では、手動実行を前提としたテスト手順と自動テストに向いたテスト手順との違いを整理したうえで、生成AIエージェントを用いて手動テスト向けの手順書の内容を自動化に適した構造へと変換する手法を紹介する。具体的には、①画面遷移情報などをナレッジとして与えることで曖昧な手順を具体化させ、②各操作をCRUD分類してデータ準備の要否を明文化し、③テストケース間の依存関係を独立・順序依存・データ依存の3種類に分類する、という分析・再構成ステップをAIへの指示として体系化した。
本手法をサンプルのテスト手順書に適用した結果、実際のテスト自動化ツールを用いた自然言語→自動テストへの変換成功率の向上が確認できた。本手法は特定の自動テストツールに依存しない汎用的な知見であり、手動テスト資産を自動化に活かしたいと考えている現場への実践的な観点を提供する。
B3-2 経験論文

DevOpsからCQ by AIへ

──生成AIによるQA判断の自動化と、失敗から学び続けるループ構築への第一歩

登壇者
助川 隆俊 氏
株式会社カカクコム
共著
黎 園園 氏
株式会社カカクコム

荻野 恒太郎 氏
株式会社カカクコム

概要


助川 隆俊 氏 DevOps/CDは開発速度と品質の両立を支えてきた一方、テスト設計や自動テストコーディング、リリース可否判断など「確率論的な判断」を伴うQA工程は依然として人手に依存している。本発表では、これらの判断を生成AIで自動化し、手動QAを経ずにリリース判断へ到達する長期ビジョン「CQ by AI(Continuous Quality by AI)」に向けた実践を報告する。
2024~2025年、テスト設計・実装工程を対象に、テスト観点・ドメイン知識・過去テストケースを構造化した「QAナレッジ」を整備し、生成AIでテストケース・Cucumber+Selenium自動テストスクリプトを生成した。生成物の品質は、自動テスト設計ガイド・12検証項目・サンプリングレビューからなる3層品質保証で担保した結果、ある実案件で430件を生成し、生成精度はPageObject層97.26%・Step Definition層92.63%、テスト実行工数52%削減を達成した。
本発表の核心は数値ではなく、生成したテストスクリプトの誤りパターンを品質基準へ反映し続けることでAIの判断基準が育つ「局所ループ」の発見にある。固定ルールではなく運用を通じて進化するこの仕組みを2026年にはソフトウェア開発ライフサイクル全体へ拡張すべく稼働を進めており、CQ by AIの完成形にどこまで近づけるか──その現在地を示す。
B4-1 経験発表

金融アプリ開発における大規模アジャイル変革

登壇者
岡本 あかり 氏
株式会社 日本総合研究所
共著
木全 将介 氏
株式会社 日本総合研究所

概要


岡本 あかり 氏 本発表では、国内大手金融機関のモバイルバンキングアプリ開発の現場おける、約5年間にわたるアジャイル転換の軌跡を報告する。当初スクラムから開始した本プロジェクトは、開発規模拡大に伴い大規模アジャイル(SAFe)を導入して価値提供と品質の両立を目指したが、運用が進むにつれ枠組みの導入だけでは解決できない課題が表面化した。
(1) アジャイルマインドセットの浸透と相互理解の欠如
(2) 使い捨てチームによるチームの習熟とナレッジ蓄積の阻害
(3) 契約形態による機動力の阻害
その結果、アジャイルの柔軟性が形骸化し、目指すべき品質やスピードとの乖離を招いていた。
これらの問題を解決し、持続可能な品質担保モデルを確立するには、組織構造と商習慣に根ざした根本的な改革が不可欠である。そこで我々は、人・プロセス・契約の3観点から具体的施策を講じた。
「人」は教育の標準化と混成チームによる品質の共同所有を推進し、「プロセス」はSAFeの厳密な運用とチームの長期固定化でチーム間の同期と透明性を確保した。さらに「契約」は、スコープ固定の請負から価値最大化を目指す準委任契約へと抜本的に移行した。
本実践により、高い人材流動下でも重大障害を極低水準に抑える組織的レジリエンスを獲得し、生産性と保守品質の安定化を実現した。また、全案件の準委任化により受発注者の利害が一致し、対等な真のワンチーム化を達成した。
B4-2 経験発表

品質重視な製造業に適応する実践的なアジャイル開発プロセスの共有

登壇者
高松 佳広 氏
三菱電機株式会社

概要


高松 佳広 氏 本稿は、「高信頼・品質重視」を前提とする製造業でソフトウェア新規開発(オンプレアプリ)にアジャイル開発を導入し、納期/コスト/品質面で高い成果を得ることが出来た実践例の共有である。
当社では、近年、市場ニーズの変化の加速およびソフトウェアの大規模・複雑化に伴い、従来のウォーターフォール型開発では迅速な顧客価値の提供が困難となり、アジャイル開発への転換が求められている。一方で、製造業においては「高信頼・高品質」を前提とした品質保証体制が確立されており、アジャイル開発との両立が課題となっている。(アジャイル導入の課題)
また、従来の開発では前工程での品質作り込み(フロントローディング)を志向していたものの、実際には後工程で不具合が頻発し、開発終盤に品質問題が顕在化する状況が見られており、システムテストまでには品質安定するものの、納期/コストに大きな影響を与えており課題となっている。(従来開発の課題)
本稿では、「従来開発の課題を解消しつつ、制約が多い製造業でアジャイル開発を導入する」ことにより、不具合の発生数/納期遅延を抑制することが出来た事例を紹介する。
B4-3 経験発表

カスタマージャーニーマップ(CJM)を用いたWACU検証方法の実践

―SaaS商品普及のために、ユーザの導入/継続利用意欲をどのように評価するか?

登壇者
新實 太雅 氏
オムロン株式会社
共著
田中 桂三 氏
オムロン株式会社

概要


新實 太雅 氏 本発表は、FA分野における新規SaaS型Webアプリケーションを対象に、導入意欲および継続利用意欲を含めたプロダクトライフサイクル全体を評価する品質評価手法を提案し、その有効性を検証したものである。従来の制御機器では機能品質の充足が重視されてきたが、SaaS型商品では利用者自身が導入や継続利用を判断するため、「導入したくなる魅力」や「使い続けたいと思う価値」を含めた品質評価が求められる。
方策として、カスタマージャーニーマップ(CJM)を基軸に、利用者の体験を時系列で整理し、狩野モデルを用いて「当たり前品質」と「魅力的品質」に分類することで、両者を定量的に評価する手法を構築した。さらに、評価結果を開発優先度や販促訴求へ反映することで、品質評価を意思決定へつなげる仕組みも検討した。
評価の結果、社内評価と実利用フィードバックとの乖離は小さく、利用者視点での評価が有効に実現可能であることを確認した。また、魅力的品質としての商品価値向上、および当たり前品質としての品質改善の優先付けに活用できることを確認した。
特に、筆者と同じく商品開発に携わるテスト技術者が、限られた開発・テストリソースの中で当たり前品質と魅力的品質を定量的かつ効率的に評価し、利用者(顧客)に選ばれる商品づくりを目指す際の一助となれば幸いである。

招待講演

A5-1 招待講演

“わかる”から“使える”へ、その先に見えたもの

~シフトレフト実践の継続的な取り組み~

登壇者
加茂 悠 氏
リコーITソリューションズ株式会社
デジタルサービス&プロダクツ事業本部 B2Bプロダクト事業センター Q&S推進部

概要


加茂 悠 氏 製品・サービス開発の現場では、顧客価値を迅速かつ低コストで提供することが求められる一方、工程後半での仕様変更や認識齟齬による手戻りが課題となっています。これらを未然に防ぐには、開発初期段階で要求を分析・検証するシフトレフト活動が重要です。我々はこれまで、評価担当者が利用者視点から要求を分析・検証する「品質要求分析」という手法を提案し、現場適用を進めてきました。本発表では、これまでの取り組みを振り返るとともに、継続的な実践を通じて得られた知見や、適用時に見えてきた課題・工夫について紹介します。また、現場への定着や運用を見据えた取り組みについても共有します。

業務上の経験や研究を主とした経歴

ソフトウェアテスト・品質保証業務に従事。主に要求分析、テスト設計、品質向上活動に取り組み、利用者視点を取り入れたシフトレフト活動を推進している。近年は、評価担当者が開発初期段階で要求を分析・検証する「品質要求分析」の実践・展開に注力し、現場適用を通じた改善活動を進めている。 社外活動として、テスト設計コンテストへの参加や、ソフトウェアイノベーションシンポジウムでの登壇など、実践知の共有にも取り組んでいる。SQiP2025にて品質要求分析の実践事例を発表。
B5-1 招待講演

生成AI活用による品質評価手法の改善に向けた実践的アプローチ

登壇者
中山 茜 氏
株式会社日立システムズ
品質保証本部/産業第一品質保証部第一グループ・担当

概要


中山 茜 氏 本発表では、ソフトウェア開発における品質評価の精度向上を目的に、生成AIを活用した評価手法を提案する。品質保証部の立場から、従来はノウハウ活用不足による分析精度のばらつきや工数過多が課題であった。これに対し、本施策では、過去プロジェクトの資料から懸念事項や品質向上の観点を抽出し、これを"品質ナレッジ"として生成AIに組み込んだ。さらに、バグ票のフォーマット成型や集計をツール化し、生成AIに入力することで、品質評価の精度向上と工数削減を実現した。

業務上の経験や研究を主とした経歴

2018年4月 入社。
2019年~現在 基幹業務システム開発案件の品質保証業務に従事。
C4-1 招待講演

システムズエンジニアリングを用いた顧客ニーズの抽出

登壇者
西川 俊吾 氏
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
研究開発部門第三研究ユニット・研究開発員

概要


西川 俊吾 氏 宇宙開発のコモディティ化が進み、宇宙から地上を観測する衛星が増えているが、その衛星を使って、どのような価値を提供するサービスが展開できるのかが課題になっている。サービスを設計する際に、衛星システムは、軌道などの制約が大きいため、衛星固有の特性を踏まえたニーズを分析する必要がある。そこで、システムズエンジニアリングのフレームを用いて、顧客がサービスを利用するシナリオやサービスと顧客事業の因果関係の分析を支援するモデリングルールと分析ガイドからなる分析手法を構築した。本発表では、構築した分析手法と適用結果を紹介する。

業務上の経験や研究を主とした経歴

2023年より宇宙分野を専門とするコンサルティング事業に従事。
2025年から現職。宇宙産業を中心にシステムズエンジニアリングを用いた事業分析手法の研究に取り組む。
C4-2 招待講演

生成AIを活用したソフトウェア開発プロセスの
セルフアセスメントアシスタント(AI-ProSaA)の提案

登壇者
池永 直樹 氏
株式会社デンソークリエイト 生産革新部
粒来 尚紀 氏
株式会社デンソークリエイト 生産革新部 AI活用推進室

概要


開発現場のプロセスの状態や改善点を把握するために技術者自らが実施者となり、チェックリストを用いて自己診断の形式でプロセスアセスメント(セルフアセスメント)を行う方法がある。セルフアセスメントの課題として、結果が実施者のプロセスの知識に大きく依存する点がある。高度な自然言語処理能力を持つ生成AIは、プロセスの側面でも効果を発揮できる可能性がある。本研究では、プロセスの知識が十分でない実施者を支援するために、生成AIを活用したセルフアセスメントアシスタント(AI-ProSaA)を考案した。 本講演では、SQiPシンポジウム2025での内容に加え、その後の研究の進展について報告するとともに、生成AIを活用したセルフアセスメント支援の実用化に向けた今後の発展可能性について考察する。

池永 直樹 氏

池永 直樹 氏

業務上の経験や研究を主とした経歴

2003年、株式会社デンソークリエイトに入社。
カーナビゲーションシステムやETCなどのITS製品において、ソフトウェアエンジニアおよびプロジェクトマネージャーとして開発に従事。
2012年から品質保証業務を担当し、2014年以降はプロセス改善およびプロセスアセスメント業務を中心に、ソフトウェア品質向上の取り組みを推進している。

研究論文や著書

  • 池永直樹,大森悠平,尾上隆一,鈴木恵美,吉田良尚、開発現場の課題分析なしで改善施策の期待効果を広範囲で抽出する「改善効果探索マップ」の提案、SQiPシンポジウム2024
  • 池永直樹、生成AIを活用したソフトウェア開発プロセスのセルフアセスメントアシスタント(AI-ProSaA)の提案、SQiPシンポジウム2025

その他(学位、表彰、学会活動、その他特記事項)

主な資格:
INTACS®認定 Automotive SPICE Principal Assessor
SOMRIE® メソドロジスペシャリスト(プロセス) シニア
主な表彰:
JISA Digital Masters Forum 2015 Best Practice Award
NSPICEカンファレンス Best Presentation Award(2018, 2021, 2023)
SQiP研究会 優秀論文賞(2023, 2024)、最優秀論文賞(2025)
SQiPシンポジウム SQiP Best Paper Future Award(2025)

粒来 尚紀 氏

粒来 尚紀 氏

業務上の経験や研究を主とした経歴

2019年、株式会社デンソークリエイトに入社。
車両向けセキュリティ監視サービス(車両SOCサービス)などにおいて、ソフトウェアエンジニアおよび技術リーダとして開発に従事。
2023年以降は、セキュリティプロセスを含む各種プロセス関連業務にも従事。
C4-3 招待講演

生成AIを利用するシステムの安全性評価を支援するテスト観点表の提案

登壇者
田口 真義 氏
リコーITソリューションズ株式会社
B2Bプロダクト事業センター Q&S推進部
共著
伊藤 弘毅 氏
三菱電機株式会社

概要


田口 真義 氏 生成AIを組み込んだシステムやサービスの利用は広がり続けています。これはUXや企業収益の向上が期待される一方で、誤情報や不適切な情報の出力により、個人・企業・社会へ悪影響を及ぼす恐れもあります。そのため、安全性評価の重要性は高まり、評価指針やベンチマークの整備も国内外で進んでいます。ただし、これらは対象や粒度が異なり、開発者がテストケースを作成する際に確認すべき観点としては一覧しにくい状況です。そこで我々は、既存の評価指針やベンチマークを横断的に整理し、安全性評価に活用できるテスト観点表を作成しました。本講演では、観点表の概要、有効性の評価結果、テストプロンプト作成方法を紹介します。

業務上の経験や研究を主とした経歴

  • 2022年3月入社 入社後はクラウドアプリーケーションの品質評価業務に従事
  • SQiP研究会 研究員として活動(2023年度~2026年度)

研究論文や著書

2025年度 SQiP研究会
生成AIを用いた要求仕様改善における観点表粒度の違いとその影響(技術奨励賞獲得)

企画セッション

D3-1 講演

生成AIの最新動向と必要なスキルやマインドセット

登壇者
西脇 資哲 氏
日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 エバンジェリスト

概要


西脇 資哲 氏 生成AIは、文章生成から画像・音声・動画生成、さらには業務を自律的に実行するAIエージェントへと急速に進化しています。本講演では、最新の生成AI動向や今後の技術トレンドを紹介するとともに、ソフトウェア開発や品質保証の現場に与える影響を解説します。あわせて、AI時代に求められるスキルやマインドセット、AIを「使う」から「使いこなす」ための考え方を、実例を交えながら分かりやすくお伝えします。

業務上の経験や研究を主とした経歴

日本経済新聞でも紹介されたIT「伝道師」。IT業界の著名カリスマエバンジェリスト。
エバンジェリストとはわかりやすく製品やサービス、技術を紹介する職種。
1990年代から企業システム、データベース、Java、インターネットのビジネスに関与。
1996年から日本オラクル社にてエバンジェリスト。
2009年から日本マイクロソフト社にてエバンジェリスト。
コミュニケーションやデモンストレーションといった分野での講演や執筆活動も行い、製造業、金融業、官公庁、教育機関などでのプレゼンテーション講座を幅広く手がける。

研究論文や著書

  • 「エバンジェリストの仕事術」(日本実業出版社)
  • 「プレゼンは “目線” で決まる」(ダイヤモンド社)
  • 「新エバンジェリスト養成講座」(翔泳社)
  • 「エバンジェリストの教科書」(シーアンドアール研究所)
D4-1 パネルディスカッション

製造業におけるアジャイル品質保証への向き合い方

登壇者
三菱電機株式会社
DXイノベーションセンター 開発・品質管理部 部長
富士通株式会社
Global Delivery Business Group Applications Development Division
パナソニックコネクト株式会社
SaaSビジネスユニット
株式会社東芝
総合研究所 デジタルイノベーション技術センター
ソフトウェアプロセスイノベーション部
スペシャリスト
日本電気株式会社
SIサービスCoE部門/SI事業基盤統括部
ディレクター
小川 修司 氏
三菱重工業株式会社
小野 正貴 氏
コニカミノルタ株式会社
株式会社イデソン 代表取締役
公立はこだて未来大学 客員教授

概要


製造業において従来のモノ売りではないビジネスに取り組む際に、従来の品質保証の仕組みやマインドセットが障壁となるケースがある。
本セッションでは、同様の課題を持つ製造業各社が集まりアジャイル開発で継続的にSaaSを提供していく場合の品質保証に必要なマインドセット、具体的な仕組みを構築して品質保証活動を実施した事例を紹介する。これらを踏まえて各社の課題やAI活用などのこれからの課題について議論する。

細谷 泰夫 氏

細谷 泰夫 氏

業務上の経験や研究を主とした経歴

主に通信システムに関連するソフトウェア開発に従事。2016年からは全社の事業におけるソフトウェア開発現場の改善を支援し、2023年からはDXイノベーションセンターにてSerendie関連事業のためのアジャイル開発プロセス、品質マネジメントシステムを構築している。社外活動として、アジャイル開発、派生開発、テスト、レビュー等のコミュニティ活動に取り組んでいる。

研究論文や著書

『わかりやすいアジャイル開発の教科書』(共著)

その他(学位、表彰、学会活動、その他特記事項)

SQiPシンポジウム実行委員会 副委員長

森谷 孝志 氏

森谷 孝志 氏

業務上の経験や研究を主とした経歴

ビジネスの変化に適応するため、アジャイル・スクラムの原則を組織全体に適用するアジャイルコーチ。製造業、電気通信事業、機器・ソフトウェア事業のサービス開発において、スクラム導入、品質プロセス構築、DevOps推進、アジャイルCoEの立ち上げを支援している。

その他(学位、表彰、学会活動、その他特記事項)

主な資格:
ITストラテジスト、プロジェクトマネージャ、PMP®、認定スクラムマスター(CSM)、Certified LeSS Practitioner、SAFe Practice Consultant
講演:
日本TOC推進協議会 TOCシンポジウム2019 基調講演

服部 真也 氏

服部 真也 氏
パナソニックコネクト株式会社
SaaSビジネスユニット

石井 裕志 氏

石井 裕志 氏

業務上の経験や研究を主とした経歴

東芝グループ内のソフトウェアプロセス改善活動の推進、アジャイル開発プロセス整備・プロジェクト支援に従事。

その他(学位、表彰、学会活動、その他特記事項)

日本SPIコンソーシアム(JASPIC)アジャイル分科会リーダー

森本 憲悟 氏

森本 憲悟 氏

業務上の経験や研究を主とした経歴

これまで15年以上にわたり、金融機関向け大規模基幹システムの開発・運用に携わり、ミッションクリティカルなシステム開発プロジェクトの推進、組織横断のマネジメント、および品質・生産性向上施策を主導してきた。現在はCoE部門としてソフトウェア・システム開発における品質向上、プロセス改善、人材育成および標準化推進に従事。生成AI活用を含む次世代ソフトウェア開発における品質保証・プロジェクトマネジメントの高度化にも取り組んでいる。また、ISO/IEC JTC 1/SC 7/WG 6の国際幹事として、ソフトウェア品質(SQuaRE)をはじめとする国際標準の策定・維持活動に参画している。

誉田 直美 氏

誉田 直美 氏

業務上の経験や研究を主とした経歴

ソフトウェア品質の専門家として、30年以上に渡って大手電機会社で活躍。ウォーターフォールモデル開発およびアジャイル開発の両方に精通し、現場での豊富な経験を保有している。近年では、AIシステムの品質保証にも関わる。単なる知識にとどまらず、現場の事情を考慮した実践的な品質保証が特徴である。
2020年、㈱イデソン設立。ソフトウェア品質に関するコンサルティングを中心に活動している。執筆や講演による啓蒙活動にも力を注いでいる。

研究論文や著書

  • 品質重視のアジャイル開発 ~成功率を高めるプラクティス・Doneの定義・開発チーム編成~(日科技連出版)2020年9月発行
  • ソフトウェア品質判定メソッド ~計画・各工程・出荷時の審査と分析評価技法~(日科技連出版、編著)2019年8月発行
  • ソフトウェア品質会計(日科技連出版)2010年発行 <2010年度 日経品質管理文献賞受賞>
  • ソフトウェア品質知識体系ガイド 第3版–SQuBOK Guide V3- (オーム社、監修) 2020年11月発行。なおV2( 2014年11月発行)は執筆リーダー、V1(2007年11月発行<2008年度 日経品質管理文献賞受賞>)は著者として執筆に継続的に関与
  • ソフトウェア開発 オフショアリング完全ガイド(日経BP社 共著)2004年10月発行
  • 見積りの方法(日科技連出版、共著)1993年

その他(学位、表彰、学会活動、その他特記事項)

  • 品質管理学会 品質管理推進貢献賞(2020/11)
  • プロジェクトマネジメント学会 文献賞(2016/9)
  • 第5回世界ソフトウェア品質国際会議(5WCSQ)最優秀論文賞および最優秀発表賞(2011/11)
  • 第4回世界ソフトウェア品質国際会議(4WCSQ)最優秀論文賞(2008/9)
  • 日科技連SQiPソフトウェア品質委員会 副委員長
  • 博士(工学)