JUSE-エグゼクティブセミナー

「JUSE-エグゼクティブセミナー」 OB訪問インタビュー 

株式会社コロナ

●代表者:代表取締役社長 小林 一芳 ●創業:1937年(昭和12年)4月 ●会社設立:1950年(昭和25年)7月
●資本金:74億49百万円(2021年3月31日現在) ●連結売上高:821億69百万円(2021年3月期) ●従業員数:連結 2,283名 単体 1,714名 (2021年3月31日現在) ●事業内容:暖房機器、空調・家電機器、住宅設備機器の製造・販売
https://www.corona.co.jp/

株式会社コロナ 取締役 執行役員
総合企画室統括 内田 高志氏に聞く

第1期(2019年度)JUSE-エグゼクティブセミナー 参加

エグゼクティブセミナー参加により、
「モノを通したコト意識」と
「外部環境の変化を考える」視点が身につきました。
これから実践に移していきます!

聞き手

:内田様が修了された第1期エグゼクティブセミナーから1年が経過しました。今改めて、エグゼクティブセミナーを振り返っていかがでしょうか。

内田

:セミナー受講後すぐに結果がでるところまでには至っていませんが、思考の視点が変わり、そして自分自身の考え方の幅が広がり、かつ深くなったように感じています。

聞き手

:「考え方の幅」とは、もう少し具体的にお聞きしてもよろしいでしょうか?

内田

:これまでは、「モノの品質」というところに最重点を置いていましたが、徹底的に顧客視点で考えるセミナーを通して、顧客の行動や意識にも目を向けられるようになり、イメージの幅が広がった気がします。
私が受講した第1期の参加メンバーが、グローバルな視点を持った方が多かったこともあり、“外部環境の変化を考えること”へ目を向けるようにもなりました。

聞き手

:内田様は、昨年取締役に昇進されました。改めて、誠におめでとうございます。

内田

:ありがとうございます。当社は、加藤雄一郎先生(名古屋工業大学)が講義で仰っていた「外部適応」、「内部適応」でいうと、「内部適応」に重点を置く文化が強いかもしれません。もちろん、この部分はこれからも重要なのですが、「外部適応」にも目を向けないと厳しい競争環境で進んでいけないことがわかり、役員になった今も、肝に銘じております。

聞き手

:それは、もちろん「モノの品質」は重視して考えているが、それに加えて、外部環境の変化に合わせた、自社の立ち位置にまで、目を向けることが出来るようになったということでしょうか?

内田

:その通りです。セミナー内でもあった、「両利きの経営」や、「ビジネスモデルで先行して現場力の勝負に持ち込む」といった両面への配慮と頭の切替えの必要性に目を向けることができました。

聞き手

:現在のお立場は、総合企画室 統括というお立場ですが、具体的には、どのようなことをされているのでしょうか?

内田

:総合企画室は、商品企画と経営企画の2つの機能を持っています。
商品企画は、当社の保有している製品開発の企画を行なっています。経営企画は、主に、全社を巻き込んで推進力を発揮しなければならない事項についての議論や会議運営を通して、中長期的な視点で経営計画を立案する役割を担っております。

聞き手

:エグゼクティブセミナーは、主に経営企画の機能で役立っていますでしょうか。

内田

:はい。その通りです。経営企画はエグゼクティブセミナーで学んだ内容と密接につながっています。

聞き手

:エグゼクティブセミナーの内容の実践、というところではどうでしょうか?

内田

:先程お伝えしたように、考え方の視点は大きく変化しましたが、実践となると、なかなか難しい部分があります。特に、組織開発的な部分についてです。構想は社員それぞれがいろいろな想いを持っていると思いますが、それを組織としてどう汲み上げて、どう実現していくのかが難しいと感じています。

聞き手

:なるほど。確かにそういった部分はありますね。

内田

:現在は、試行錯誤しながら進めているので、すぐには結果に出ませんが、徐々に実践に結び付けていきたいと考えています。

聞き手

:内田様が、セミナー受講前に課題としてお話しされていた、“ハードの単品売りからの脱却”という視点では、どうでしょうか?

内田

:当社は、生活者のために製品を開発生産して販売する、というまさにモノづくりの企業であるため、それを急にコトづくりに、ということは考えていません。
ただ、講師である藤川先生の「モノを通したサービス提供」という話を聞いて、自社の方向性に適していると感じたので、現在は、モノを通したソリューションという考え方を重視するようにしています。

聞き手

:確かに、ソリューションビジネスの先進企業と言われているところでも、そもそもハードの“品質(QCD)が良い”ということが前提となりますよね。すぐに故障してしまうようなハードではソリューションビジネスが成り立たないですよね。

エグゼクティブセミナー報告会で
発表する内田取締役

内田

:そうだと思います。ソリューション提案には、まず品質が欠かすことのできない“土台”のような部分だと思います。

聞き手

:エグゼクティブセミナーの講義の中で、心に残っている内容や、キーワードはありますか?

内田

:多くあります。まず楠木建先生(一橋大学大学院)は、「ストーリーとしての競争戦略」についての講義だったのですが、ある意味衝撃的な内容でもありながら、とてもわかりやすく興味深かったです。
藤川佳則先生(一橋大学)の「サービス・マネジメント‟価値づくり”の‟レンズ”」は企業のビジネス事例の紹介しながらの説明でしたので、参考になりました。「グッズ・ドミナント・ロジック」から「マルチ・サイド・プラットフォーム」への移行の必要性が分かりやすく理解できました。遠藤功先生(シナ・コーポレーション)の、「両利きの経営」のお話も、考え方の視点が変わる大きなきっかけとなる講演でした。

聞き手

:今挙げられた3人の先生は、ビジネスモデルの転換に向けて、刺激的かつ参考になるお話でした。

内田

:今後必要になり、もっと知識や経験を身につけなくてはならないと感じたのは、籠屋邦夫先生(ディシジョンマインド 代表)の「不確実性を価値創造に変える‟衆知錬成の意思決定”」です。当社における意思決定のプロセスや判断材料が本当に正しいのか、適切なステップを踏んでいるのか、今後どう進めていけばいいのか、ということは切実な悩みであります。

聞き手

:講義の中で「経営者の仕事は、決めることだ」とあった通り、とても重要な部分ですよね。

内田

:それに加えて、その意思決定のプロセスの後、必要になってくる“組織開発”も重要だと感じています。加藤先生も、「新しい部門を作ったり、人を異動させたり、部門名を変えるだけでは意味がない」ということを強調されていましたが、まさに重要なのは実装の部分なのだと思います。

聞き手

:内田様が最終月の「実践研究:品質経営推進フレームワーク報告会」で発表された内容は、貴社の中期経営計画の策定や、今後の貴社の方向性を示すことに役立っていますでしょうか?

内田

:実際に動いている内容もあります。しかし、最終月に発表した内容はどちらかというと商品寄りのテーマだったので、それだけではなくまず対象として内部や関係者を捉えることから考えていきたいと思っています。対象者を広げることも考えなくてはいけないと感じています。

聞き手

:対象者を広げるというのは、どういうことでしょうか?

内田

:発表した内容は、セミナーで言うところの、「外部適応」的な内容だと思っています。
現在の自分の立場(経営企画)では、その外部の環境変化に柔軟に対応するにも、まずは内部の状況(社内の工程間のつながり等)をもっと適切に捉え、内部の適応状態についても深掘りする必要があると感じており、その両輪を回し続けるという意味です。

聞き手

:エグゼクティブセミナーを終えてみて、難しいと感じた部分はありますでしょうか?ざっくばらんにお話しいただければと思います。

内田

:先程も少しお話ししましたが、社員の誰もが「こうありたい」という構想は描いているとは思うのですが、それを組織で吸い上げ、策定し、現場に落とし込み、実際の行動を変える、ということの難しさを感じています。やはり、戦略や事業構想の話は聞いていて刺激的でワクワクしますし、想像が膨らむのですが、その実践となると、どのように進めていけばいいのか、というところが私の中では、まだイメージしきれていないように思っています。

聞き手

:外部適応から、内部適応への落とし込みという部分ですね?

内田

:そうですね。外部適応、内部適応の2つのサイクルを回す、ということについて、繋がりの部分をもう少し詳しく学びたかったと思いました。
当社でも、それぞれの部門の業務が、矛盾なく繋がっているか、繋がるためにはどうしたらよいか、というところが実際に課題となっています。

聞き手

:セミナー終了後に、参加者同士の交流というのはありますでしょうか?

内田

:同じ新潟県から参加した企業の方とはプライベートでも交流があります。
ただ、最近は新型コロナウイルスの影響で、直接お会いできていないいのですが…。

聞き手

:そういったセミナーをきっかけとしたつながりは、セミナー主催者としてとても嬉しく思います。今後、OB会も開催しますので、是非参加ください。

内田

:是非、参加したいと思います。楽しみです。

聞き手

:受講後に、受講内容について社内でのご報告等があったかと思いますが、役員の方々のご反応はいかがでしたでしょうか?

内田

:報告したときは、正直、当社とは離れた「雲のような話」といった感触だったと思います。
ただ私としては、今後、当社の他の社員に受けてもらいたい、と思っています。
やはり、実際に受講してもらうことで、互いに理解できる共通言語を用いて議論しやすくなりますし、一緒に議論することで一人ではなく組織として戦略を練ることが出来ると思います。

聞き手

:その場合、どういったお立場の方を推薦されますか?

内田

:そうですね、受けてほしいのは、20~30代のデジタル世代で“会社に変革が必要だと感じる”人です。そういった方に、エグゼクティブセミナーの考え方を学んでもらえるとよいと思います。ただ一方で、役員やトップ層が受講し、今までの価値次元をシフトする、ということも重要だと思っています。

聞き手

:エグゼクティブセミナーを受講しようか迷われている方がいるとすれば、どうアドバイスを送りますか?

内田

:まず一番のおすすめは、著名な方の講演を、少人数で、しかも間近で聴けるということです。次に現在、代表取締役になられた方や、一流企業の役員の方と、少人数のグループワークを通じて、深い内容まで直接お話しできるというのは、なかなかない機会で、貴重な経験だと思います。

最後に、これから自社の事業の価値次元を変えて新しい変革をしなくてはならない、したいけどどうしたらよいか分からない、という企業の方はこのセミナーを受ける価値があると思います。
逆に、自社の製品のスペックを上げる、ということを第一に考えている企業はむしろ、エグゼクティブセミナーよりも、ベーシックコースなどのセミナーの方が向いていると思います。

聞き手

:なるほど、自社の問題意識や、将来課題によるということですね。
とても分かりやすくお答えいただきありがとうございました。
内田様の今後のご活躍をお祈りしています。
(聞き手:日本科学技術連盟 品質経営創造センター 部長 安隨 正巳
 原稿まとめ:品質経営創造センター 菅田 未優)