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日刊工業新聞連載記事

顧客価値創造と現場力(1)これからの品質経営

この記事は日刊工業新聞社の転載許諾を受けています。

「これからの日本はビジネスモデルで先行し、現場の戦いに持ち込めば負けることはない」。これは経団連元副会長でコマツ相談役の坂根正弘氏の提言だ。

和製英語にもなった“KAIZEN”は、わが国製造業の製品品質を飛躍的に高めたことは周知の事実だ。しかし、この成功体験が「良いモノを作れば売れる」という暗黙的な価値観を強固にしてしまい、製造業のサービス化という潮流についていけない企業が少なくない。そこへ、新興国企業の製品品質向上が重なり、多くの企業が価格圧力に瀕している。

品質は「モノの出来栄え」のことではない。品質とは「社会や顧客のニーズを満たす度合い」だ。IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)、ビッグデータなどITの発展によって、社会の環境は大きく変わろうとしている。「単体の製品ハードが満たすべきニーズは何か」という従来型の狭い発想ではなく、大きな視野から「未来のニーズを満たすために、その実現手段としてどのようなハードとソフトを組み合わせるべきか」という発想がこれからの時代に求められよう。そして、そのような未来のニーズを満たすにふさわしい組織オペレーションの仕組みづくりが欠かせない。

ダーウィンの進化論、つまり、「強い者が生き残るのではない。生き残ることが出来るのは、変化に対応できる者である」という環境適応の重要性は、企業経営にも当てはまる。環境適応には二つある。自社を取り巻く外部環境の要求に応えるべく自らの事業を位置づける「外部適応」と、それにふさわしい組織内部の諸機能の最適な組み合わせを構築する「内部適応」だ。

企業が持続的な競争優位を確立するためには、外部適応と内部適応の両立が欠かせない。冒頭の提言は、この重要性を説くものだ。12回にわたって、進化する品質経営の姿について、事例を交えて解説する。

職業能力開発総合大学校 客員教授 加藤雄一郎