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Excel管理資料の生成AI可読性に関する二段階モデル ~抽出到達性と意味推論性に基づく構造的整理~

ソフトウェア品質管理研究会 研究コース5(2025年)

本研究は,企業実務において広く利用されている Excel文書を生成AI で分析・活用する際に生じる解釈結果の差異について,その要因を体系的に整理することを目的とする.近年,大規模言語モデル(LLM)を用いた業務文書理解の試みが進んでいるが,Excel 文書を対象とした場合,生成AI の出力が文書作成者の意図と乖離する事例が少なくない.これらの乖離はしばしば生成AI の性能として一括りに議論されるが,入力前処理に起因する情報欠落と,生成AI 自身の意味推論挙動とが十分に区別されていない点が課題である.
そこで本研究では,Excel 文書が生成AI によって解釈される過程を,「情報が生成AI に到達するまでの抽出到達段階」と,「到達した情報に対して意味的な解釈・補完が行われる意味推論段階」という二つの段階に分けて捉える二段階モデルを仮説的枠組みとして導入した.この枠組みに基づき,抽出方式の違いが生成AI の認識結果に与える影響と,意味推論段階における構造理解の特性を切り分けて検証した.
具体的には,Excelファイル解析ライブラリ(openpyxl)による一般的な抽出方式と,Excel ファイルの内部構造(OOXML)を直接解析する拡張抽出方式を用いて Excel 文書から情報を抽出し,JSON形式で生成AI に入力する実験環境を構築した.同一の生成AI モデルに対して抽出方式のみを変更して入力することで,画像・図形・グラフなどの非セル要素が抽出到達段階で推論対象となるか否かを比較するとともに,抽出されたテキスト情報に対する意味推論挙動を観測した.
その結果,非セル要素は抽出段階で JSONに含めなければ生成AI の推論対象とならない一方,JSONに含めたテキストについては,罫線や結合セルといった明示的な表構造情報が与えられていなくても,見出し語と値語の意味的一貫性が高い場合には,生成AI が表構造を補完的に推論する挙動が確認された.また,配置や座標が同一であっても,これらのテキストの意味的一貫性を失わせると構造認識が成立しないことから,意味推論段階における理解は視覚的装飾よりもテキスト内容に強く依存していることが示唆された.
これらの知見から,本研究は,Excel文書の生成AI 可読性を「抽出到達性」と「意味推論性」という二つの観点に分けて整理する必要性を示すとともに,抽出方式の前提に応じた Excel 文書設計の簡易ガイドラインを提示した.本研究の枠組みは,生成AI の性能評価に留まらず,実務における Excel 文書設計と生成AI 活用を接続するための基礎的視点を提供するものである.
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