クオリティフォーラム 2020

一般事例発表

A会場

工程の品質改善・効率化/マネジメント実践/人材育成・SQCの活用

シリンダーヘッドカバーのカラー圧入バリ不良撲滅

本間 啓太 氏
トヨタ紡織株式会社
弊社の刈谷工場は、主に自動車用エンジン部品を設計・製造・販売しています。その主力である 樹脂製シリンダーヘッドカバーの生産工程では、金属製部品(以下、カラーという)を圧入しているが、圧入時にバリが発生し、除去して不具合品の流出防止をしています。しかし、圧入時のバリの取り残しや除去時に製品を傷つける等の不具合発生の懸念があり、圧入バリ不良撲滅をテーマに活動しました。
本活動では、車両メーカーの要求事項のカラー抜け荷重に対して、カラー圧入時にバリが発生しない最適条件を、応答曲面解析を用いて導出し、設計、製造部門と共に、対策および織り込み完了まで活動した事例を報告します。

セラスマート製造工程における接着強度検査不合格の撲滅

日比野 隆代 氏
株式会社ジーシーデンタルプロダクツ
弊社は、歯科医療メーカーである㈱ジーシーのグループ会社として1958年に設立されました。1981年に“GQM”(GC's Quality Management )と命名してTQMを導入し、デミング賞(2003年受賞)、日本品質管理賞(2006年受賞)への挑戦を通して企業品質の向上と現場力の強化を図りました。ジーシーデンタルプロダクツは、21世紀を「健康世紀」と位置付け世界の人々に「口腔を通しての健康」を提供するため“みんなで築こう健康世紀”をスローガンとして弊社のビジョンである「健康長寿社会に貢献する世界一の人工歯・高分子歯科工場への挑戦」に向けた活動を続けております。
今回発表させていただきますブロック製造係は、現在歯科の治療で行われる金属の代替材料として保険収載されている「CAD/CAM用高靭性ハイブリッドブロック」を製造しております。弊社では、セラスマート・セラスマート270・セラスマートプライム・セラスマート300の4製品を製造しており、臨床現場では小臼歯・大臼歯の治療によって使い分けられております。特徴としては、高強度「優れた物性」・審美性「持続する光沢感」&「着色しにくい歯面」・再製率「低い再製率」となります。国内・海外で需要も高まり生産量も毎年増加しています。
弊社では生産性向上と製造体質強化を目的とし、工場革新活動(DPPI活動)を推進しており本テーマでは、工程内で発生する接着強度不足の真因を特定し撲滅した改善事例を報告させていただきます。

バランサー切削工程における軸受内径位置度ばらつきの低減

榊原 健斗 氏
株式会社オティックス
当社は、トヨタ自動車をはじめSUBARU、いすゞ自動車などを主要顧客として、バランサーアッセンブリやカムハウジングをはじめとするエンジン機能部品を主とした各種自動車部品を製造・販売している。
その中でもバランサーの品種は多岐にわたるが、新たに量産化するバランサーでは切削時の製品固定方法に前例がなく、加工精度は工程能力を満足していない状況であった。
この問題に対し、ボルトの締付け方法に着目し、SQC手法を用いて量産までの限られた時間の中で加工ばらつきを低減した事例である。

一人ひとりが働きがいを持てる職場づくり

松井 明子 氏
アイシン精機株式会社
上位方針「真の競争力を身につけ新たな価値を提案できる元気な会社」などを受け、 当部は、デザイン機能強化、先行デザイン開発強化などを重点に取り組んでおり、これに向けては、部員一人ひとりが働きがいを持って取り組むことが、非常に重要と考えている。当社は自動車部品、L&E製品などの製造メーカであり、従来では、プロダクトデザイン開発がメインであった。しかしながら、デザイン機能の変化と拡大に伴い、新たなスキル取得が急務であり、これを全員の働きがい向上に繋げる、といった課題があった。このため、マネジメントの下支えによる様々な取り組みにより、働きがいや達成感が得られる職場づくりをめざし、デザイン開発の原動力を得るといったことを考えた。
本事例は、この活動の結果、毎年実施する全社員の意識調査アンケートで、働きがいのスコアを大きく向上させ、全社トップクラスの職場風土を実現させた取組みを紹介するものである。

品質保全の変革と予兆管理への取組み

西雪 信太朗 氏
アイシン精機株式会社
当社は、自動車部品メーカーとして、経営理念の品質至上を掲げ、その一環として職場体質の強化に取組んでいる。その中で、私は、現場品質保全教育とその実践活動の推進をしている。しかし、生産現場では、なぜなぜによる原因追究を活用して設備改善をしているにもかかわらず、工程内不具合が再発することがあり、従来のやり方を変えることが求められていた。
そのため、発生メカニズムの徹底追究による良品状態づくりの標準化および、機械学習を活用した予兆管理によるアプローチを開発することにより、革新的な品質保全を確立、人財育成への折り込みができたので、その取組みを紹介する。
B-1会場

QCサークル活動(小集団改善活動)の推進/その他

顧客への「提供価値の向上」に根ざした「小さな改善」活動(JHS)

野上 真裕 氏
株式会社TMJ
当社は、セコムグループの一員としてコンタクトセンター業務やバックオフィス業務全般のBPO(Business Process Outsourcing)サービスを金融、情報通信、製造、流通、官公庁などの幅広い業種・業態に提供しています。2006年、コールセンター業界としては初!QCサークル活動を全社展開、「小さな改善」活動という名称で展開・推進しております。活動の基本理念として独自に顧客への「提供価値の向上」を掲げ、クライアント、社内顧客である後工程に喜ばれる活動テーマに積極的に取り組んでいます。停滞期など紆余曲折もありましたが大事にしているのは、「楽しくなる工夫とみんなで共有・活用」、その事例をご紹介します。

私のQCサークル活動支援

~女性サークルのあるべき姿を追いかけて~

田中 裕幸 氏
愛知製鋼株式会社
2015年誕生の業務職女性6名からなる「夢mon.サークル」は、本年11月開催予定のJHS全日本選抜大会で発表します。そのサークル世話人としての活動の歩みを紹介したいと思います。
QCサークル誌(2018.07号)に、「楽しさと大きな目標を主軸に世話人として素人サークルのメンバー達を本音で鼓舞」の見出しで、私のことが掲載されました。
事・販・サ部門の女性サークルは、誕生はするも継続は難しいとよく耳にします。自身のQCサークル全国大会(支援者事例)での発表を交えながら、なぜここまで皆がついてきてくれ、成長してくれたのかをこの機会に自分なりに探ってみたいと思います。QCサークル支援・推進側の方にとって、参考になれば幸いです。

~新型コロナ禍に対応するQCサークル活動~

変化をチャンスに!変化に対応したオンライン発表大会

石田 義仁 氏
コマツ
当社は、主に建設・鉱山機械を製造、販売しているメーカーです。私の所属する車体工場の一つである大阪工場は、当社の主力工場であり、従業員 約2800名が、油圧ショベル、ブルドーザなど製品の 開発 及び生産に携わっています。
今回、新型コロナウィルスの影響を受ける中、これまで当社内で一堂に会することを前提としていた安全発表大会やQC発表大会等についても、三密を避けるためにも情報機器を活用し、新たな「発表大会」に挑戦することが求められるようになりました。
本発表テーマは今年7月に行われた工場のQC発表大会において、変化をチャンスと捉え無観客開催に初挑戦し、大盛況を得たオンラインQC発表大会の改善事例について発表させて頂きます。

日本品質奨励賞 受賞企業講演

TQM奨励賞
アクシアル リテイリング㈱

お客様へ提供する価値検証への挑戦

小宮山 大祐 氏
コニカミノルタ株式会社
コニカミノルタは、課題提起型デジタルカンパニーを目指し、社会的価値につながる事業創出に取り組んでいます。この実現に向け、世界中の4万人を超える従業員が、お客様を中心に据え、お客様の真の課題を洞察し、お客様さえ気づいていない課題を掘り起こし、お客様へ価値提供すべく取り組んでいます。
品質組織においては、新たに提案する価値がお客様に本当に刺さるのか、提供した価値が本当にお客様に刺さったのかの検証が重要と捉え、この価値を検証する新しい仕組みを創り、定着させていく活動に挑戦しています。
この挑戦について、事例を通してご紹介させていただきます。
B-2会場

SQCの活用

レーザー溶接における、応答曲面法を活用した良品条件の確立

佐藤 佑司 氏
澤藤電機株式会社
澤藤電機(株)は商用車向け電装品、汎用発電機、ポータブル冷蔵庫を開発か ら製造、販売まで行っているメーカーです。
新製品における生産準備のなかで、アルミ素材の接続工法として、レーザー 溶接を新規に採用しました。試作段階では、アルミ素材で顕著となる微小割れ 現象に苦しめられておりましたが、割れ長さを品質特性に含めて応答曲面法を 活用することで、多岐にわたる品質特性の中から、効率よく良品条件を見つけ 出すことが出来ました。その概要を本稿にて紹介致します。

CAE技術とSQC手法を融合した開発効率化の促進

山口 寛司 氏
シロキ工業株式会社
当社はウインドウレギュレータ、シート機構部品、ドアサッシなどを主要事業とした自動車部品メーカーです。
2016年度からのTQM活動を通じ、製品競争力を一層高めるためにCAE技術を活用した開発の効率化(設計・実験のモデルリダクションなど)と、CAEを使える技術者の育成を重点課題として取り組んできました。
特にウインドウレギュレータ開発では、様々なデザインのドアへ適合設計するために、製品の企画段階から強度の成立性を見極めるプロセスを、CAE技術とSQC手法を融合させて構築しました。その結果、従来に比べ大幅に開発期間を短縮することができました。これらの活動についてご報告します。

QC手法を活用した不具合分析の改善事例

小島 義也 氏
エプソンアヴァシス株式会社
当社はソフトウェア開発に特化した会社ですが、SQC手法による改善も進めています。ソフトウェアの不具合は目に見えないため、設計段階で品質を作りこむために、QCによる改善の方法を広めています。
たとえば、分析が的確に行うことを目的として、特性要因図で不具合を起こした背景のコンテキスト(背景知識)を整理したり、また不具合情報に記載された原因の記述をテキストマイニングにかけた結果や、マトリックス・データ解析を通して、仕様の実現に際して起きた問題の領域を特定する等、といった改善活動を行っています。
こうしたソフトウェア開発でのSQC手法の拡張性を探る取り組みの一端を紹介いたします。

日本品質奨励賞 受賞企業講演

TQM奨励賞
河野光学レンズ㈱

レーザー溶接における
エアーブローを用いた気化金属除去条件の確立

森田 武 氏
トヨタ紡織株式会社
弊社は、主力製品として自動車用シートを生産しております。その骨組みとなるシートフレーム部品の接合には、「レーザー溶接」を採用しております。
当該工法では、溶接部の品質に影響を与える気化金属が生じる為、エアを吹き当てて除去しながら溶接しています。従来、その除去状態は目に見えないため、除去条件の設定は経験則にて行い、品質結果から判断していた為、生産準備トライに多くの回数を要してきました。
今回は、SQC手法を活用して除去に影響する条件因子を洗い出し、応答曲面法を用いた除去方法の最適化とシミュレーションを利用した検証により、生産準備トライ回数を減少させる取り組み事例を報告します。
C会場

働き方/新商品開発・技術開発

新しいワークスタイル実現のための、
健康に配慮した、これからのオフィスビルの提案

―WELL認証 ゴールドの獲得(国内最大規模の建物)―

伊藤 宏樹 氏
株式会社竹中工務店
2004年竣工の竹中工務店東京本店は、変化する社会状況により、常に時代を先取りする改革を行ってきた。昨今、政府の働き方改革が推進され、企業の健康経営が求められる中、従来のオフィスにおける働き方と環境の見直しを行い、生産性向上と付加価値向上を目指して今回の改修を行った。
改修の前に以下の3点の課題を掲げた。

① ワークライフバランスの取れた「いきいきと働く環境」の実現
② 「健康に働く仕掛け」を実現し、お客様にも提供していくこと
③ 総合建設業ならではの「オープンイノベーション」の推進

これらの課題解決のため、社員参加型のワークショップ、及び弊社で推進してきた「健築®」をベースにしたハードソフト両面の整備等の方策を立案し実施した。
その成果として、社員すべての世代でのオフィス満足度の向上、多様な働き方を実現するとともに、WELL認証ゴールドを国内最大級規模として獲得した。これらのプロセスで得た社員参加型の手法を展開し、実際のプロジェクトにおけるイノベーション活動を実現している。今回の経験と実績を踏まえ、働く場を提供している建設会社として、今後こうしたソリューションをお客様と広く社会に提供していきたいと考えている。

震度7クラスの巨大地震でも建物の機能を維持できる
免震構造の開発と適用

-THE免震(ワイドレンジシステム)-

赤澤 資貴 氏
株式会社竹中工務店
近年、巨大地震が頻発し、南海トラフ地震の発生も危惧されている。従来の免震構造では、設計基準(震度6弱)に対しては安全かつ建物機能を維持できるが、震度6強以上に対しては建物の一部損傷により、その機能を維持できない恐れがあった。そのため、病院や原子力施設等の重要用途の建物においては、巨大地震時にも建物機能を維持できる免震性能が求められる。
巨大地震時の免震構造の課題として、擁壁の衝突、上部建物の損傷、免震部材の損傷の3つがある。既往技術では、これらの同時解決は困難であり、新しい免震構造システムの開発が必要となった。
そこで、当社保有技術を活用し、設計基準を上回る震度7クラスの地震動に対しても、建物機能を維持できる免震構造システム実現を目標として開発に着手した。
方策案として最も効果の高い当社保有技術の「すべり機構付き鉛プラグ入り積層ゴム支承(QTB)」とすべり支承及びダンパーを組合せる方法を選定し、実現に向けて、地震力低減、揺れ幅抑制、コスト低減等の課題解決により目標性能を達成し、地震の規模に関わらず免震効果を発揮する「THE免震(ワイドレンジシステム)」を構築し、弊社社員寮に採用した。
今後は極めて高い耐震性を要する建物に展開する。
※震度7には上限がないため震度7に達する程度を想定した。

HVモーター ローターコアのレーザー溶接不良低減

谷口 慎一 氏
トヨタ紡織株式会社
弊社の刈谷工場ではHVモーターで使用されるローターコアおよびステーターコアを生産しています。
このローターコアは、電磁鋼板を積層して作られ、その両端にステンレス板をレーザーで溶接する必要が ありました。しかし、設備の導入後に電磁鋼板とステンレス板を溶接すると溶接部が隆起する溶接不良が発生しました。この不良は、お客様の組付工程においてHVモーターのステーターコアと干渉してモーター回転時の作動不良の原因となってしまいます。この活動では応答曲面法を用いて溶接部が隆起しない最適条件を導出し、不良低減を実施した事例を報告します。

日本品質奨励賞 受賞企業講演

TQM奨励賞
㈱明電舎 プラント建設本部

品質経営懇話会が示したこれからの品質経営のかたち

~ビジネスモデルで先行して、現場力勝負に持ち込むための理論と実践(第一次報告書より)~

糸柳 寿人
(一財)日本科学技術連盟
D会場

品質管理における機械学習の活用~JSQC研究会報告
/サービスの質向上

品質管理における機械学習の活用~JSQC研究会報告

1. 不適合データの識別分析(仮)

(発表者調整中)

品質管理における機械学習の活用~JSQC研究会報告

2. 品質管理における機械学習活用の実際と課題 (JSQC研究会総括) (仮)

犬伏 秀生 氏
株式会社日本科学技術研修所

品質管理における機械学習の活用~JSQC研究会報告

3. 機械学習手法を用いた画像の解析(仮)

山田 芳幸 氏
株式会社日本科学技術研修所

日本品質奨励賞 受賞企業講演

品質革新奨励賞
㈱IHIエスキューブ

タイヤの交換時期を予測する機械学習モデルと
データの品質保証の取組み

田口 悠介 氏
株式会社ブリヂストン
IoT(Internet of Things)時代を迎え、製品の提供に加えてソリューション提供による付加価値を高めることが求められている。当社でも、「モビリティ社会を支えるBridgestone T&D PaaS(Tire & Diversified Products as a Solution)」のコンセプトのもと、現物現場をデジタル技術でつなぎ、大量のデータを分析・活用することで新たな価値を社会・お客様・パートナーとともに共創し、ソリューションを提供している。ソリューションにおいても当社のミッションである「最高の品質で社会に貢献」の達成を目指す。その品質保証の取り組みは、開発時に仕様を吟味し、出荷前に精緻に検査、評価をするだけでなく、提供先の環境や利用状況の影響を考慮する必要がある。本発表では、こうした取り組みの一例として、タイヤの交換時期予測ソリューションにおける品質保証の取組みを紹介する。
さて、タイヤの交換時期予測ソリューションは、車両からの利用状況を表すデータを収集し、タイヤの摩耗を予測し、交換に必要な工数や交換用タイヤの保管数を最適化する。たとえば、まだ交換時期となっていないタイヤであっても早めに交換することによって、交換工数の集中を回避したり交換用タイヤの保管数を小さくしたりするメリットがある場合には、早めに交換する。当社のこれまでの研究開発、評価の実績から、適切な入力を与えることにより、タイヤの交換時期の予測に機械学習モデルを活用できそうであると判断できた。そこで、その予測に、タイヤや車両に設置したセンサー類からの収集データを機械学習モデルへの入力として与え、タイヤの摩耗の度合いを予測する。機械学習モデルには、過去に収集したデータと実際のタイヤの摩耗を与え、学習させておく。
交換時期予測ソリューションの品質保証として、機械学習モデルで予測した摩耗と実際の摩耗を比較し、適正な予測ができているかどうかを調べることとした。あわせて、その予測によって交換工数の集中を回避できるか、工数や交換用タイヤの保管数が小さくなるかどうかも確かめた。