三島 豊 氏
三島食品株式会社
代表取締役会長
代表取締役会長
プロフィール
1954年広島県生まれ。1978年東京大学大学院金属材料専門課程修了。同年、京都セラミック株式会社(現 京セラ株式会社)に入社。81年に同社を退社し、三島食品株式会社に入社。84年、取締役部長に就任し、その後取締役関東工場長、専務取締役、取締役副社長を歴任し、92年、創業者から代表取締役社長を引き継いだ。2017年、代表取締役会長に就任。株式会社ミシマホールディングスの社長を兼務している。
会社プロフィール
1949年、三島商店として三島哲男が創業。ふりかけメーカーとしては後発の1951年にふりかけの製造を開始。1970年、当社を代表する製品となった「ゆかり®」を発売。発売当初は全く売れなかったが、学校給食をきっかけに子どもたちに人気がでて徐々に売上も伸びていった。2020年、北広島町農園事業「紫の里」にて赤しその水耕栽培を開始。また、同年に走島海洋資源開発センター新設、スジアオノリの陸上養殖を開始。「良い原料を使い、素材を活かす良い加工をする」ことを原点と考え、より良い原料調達を目指して自社栽培・養殖に取り組んでいる。
「ゆかり®」と「かおり®」、「あかり®」が『まるで3姉妹のようだ』とSNSで話題を集める。その後、「うめこ®」、「ひろし®」、「かつお」、「鮭 ひろし®」、「しげき®」を発売し人気を集めている。
――赤しそのふりかけ「ゆかり」を筆頭に「かおり」「あかり」など、統一性があり親しみが持てる商品展開で、消費者から支持されています。基本理念に「楠」、基本方針として「良い商品を良い売り方で」を掲げています。どういう思いが込められていますか。
三島:私の父で創業者の三島哲男が言っていた言葉です。私も入社したときになぜ二つの言葉があるか分からなかったので聞くと「わしもわからんが二ついる」と言われました。その後、経営において「方針管理」と「品質保証」という柱があると知ったときに、父は動物的な勘で二つの言葉の必要性を察知していたのだと思いました。楠は大地にどっしりと根を張り、葉を繁らせ大樹となります。企業を永続させることを楠になぞらえました。一方、「良い商品を良い売り方で」は品質保証に対する当社の考え方を示しています。良い原料を使い、商道徳を守って売っていく。粗悪な商品で大儲けをするという考えはとらないということです。社員にも「この二つの考えをたがえなければ何をやってもいい」と言っています。そして「もし外れるようなことがあればストップをかけるよ」と言っています。
――実際にストップをかけるようなことはあったのでしょうか。
三島:原料に使う黒のりがとれなくなり、問題となったことがありました。仕入れ価格はグレードによって異なります。例えば、現在は10円ののりを使っているという時に、社員が「8円ののりに変えたら利益がでます。こちらにしたらどうでしょう」と言ってきました。言ってきた本人も、この提案は私がダメと言うということはわかっていたと思うのですが、利益を出すにはそうするよりないという思いもあったのでしょう。私はその時に「10円ののりではなく、30円ののりをつかったらどうなると思う?」と問いかけました。すると、その社員は8円、10円、30円の原料による3つのサンプルを持ってきて「30円のノリを使うともっとおいしくなりました」と言いました。いい原料を使えばもっとおいしくできることを知ってくれてよかったと思いました。おいしい商品を作り続けるという当社の考えが理解されたと思いました。
――品質へのこだわりを強く持たれています。素材の選択、製造工程など具体的に品質の向上にどのように取り組んでいますか。

ですから、社員にも極力現地で実際に栽培しているところや、採取しているところを見て、栽培者と話をするように言っています。当社は原材料を提供してくださる農家や企業とは、商社を使わずに直接取引をしています。海藻や魚も海の中に入ってとまでは言いませんが、これなら安心と思えるところまでは直接見に行くようにしています。赤しそについては、これまでは日本以外では中国で大々的に栽培してもらっていましたが、地政学的リスクが浮上してきました。そのため、新たな調達先を見つけるためにさまざまな努力をして、新たにタイで見つけることができました。実際に私も現地に行きましたが、素晴らしい農園でした。
自社栽培にも取り組んでいます。北広島町農園という赤しそを研究・栽培する農園を開設しました。もちろん、ここで当社が必要とする量を賄うことはできませんが、「ゆかり」のより良い材料を求めて品種改良をする場として役立てています。また、「青のり」の原料となるすじ青のりについても自社養殖を行っています。室戸と走島の2か所の海洋資源開発センターで海ではなく、陸上で養殖することに挑戦しています。
――生産面で工夫されていることは。
三島:製造工程について、日々改善活動をしてもらっています。できるだけ素材の良さを残すにはどうすべきか。同時にコストを下げていく方法はないかを常に考えています。その中で省人化を進めています。できれば工場もリモートワークができるようにしていきたい。自宅や外部で稼働状況を確認し、異常がある時だけ現場に行って修正するといった方向です。そのためには、生産の担当者もメンテナンスができるようになってもらいたいと考えています。
――消費者との対話で気づいたことや、経営に影響を及ぼしたことはありますか。
三島:たくさんあります。昔、「ゆかり」を食べたお客様から「変なにおいがする」という問い合わせがありました。何のにおいだろうと調べてみると、原料の赤しその畑の近くにエゴマがあり、知らないうちに交雑していることが分かりました。原因はエゴマだったのです。それから、種の管理をしっかりやろうということになりました。自社で香りのよい赤しその品種づくりをし、その種を生産者に提供して栽培するスタイルに変えました。生産者には種の自家採取を禁止し、指定した品種の種を毎年購入してもらうことで、品質を維持しています。
また、ある時「鰹節が魚臭い」というクレームがありました。当社はインド洋や太平洋で漁獲したカツオを冷凍保存したものを、煙で燻して乾かした荒節を使っています。その後に湿度と温度条件を整えてカビ付けするとより風味が増すのですが、鰹節を供給してくれている会社から「食品メーカーにカビを持ち込んでもいいのでしょうか」と言われました。そこで、カビ付けしたものを洗って提供してもらうことにしました。コストはかかりましたが、よりおいしい鰹節にすることができるようになりました。
また、ある時「鰹節が魚臭い」というクレームがありました。当社はインド洋や太平洋で漁獲したカツオを冷凍保存したものを、煙で燻して乾かした荒節を使っています。その後に湿度と温度条件を整えてカビ付けするとより風味が増すのですが、鰹節を供給してくれている会社から「食品メーカーにカビを持ち込んでもいいのでしょうか」と言われました。そこで、カビ付けしたものを洗って提供してもらうことにしました。コストはかかりましたが、よりおいしい鰹節にすることができるようになりました。

