究・事例発表

Session1

ヒューマンファクタモデリング

1-1

設備管理知識モデルの記述と活用

大上 雅哉 氏
JFEテクノリサーチ株式会社
本報告は、分解木と呼ばれる木構造によって、知識を体系的に記述してモデル化することにより、その共有、伝承を効率的に行う方法の提案である。具体的例として、「配管設備を健全に保つ」ためのPDCAに応じた対応、それを策定するために必要な「腐食発生メカニズムの知識」への適用を説明する。人と共に失われる情報を見える化し、新たな気付きを与えるなど、人と共に発展する情報としての有効性に注目してお聞きいただきたい。
1-2

主要価値類似性を考慮した太陽光発電に対する信頼感因果モデルの検討

桐山 大輝 氏
電気通信大学
現在、再生可能エネルギーの主力電源化が望まれている。その加速のため、身の回りで行う発電・蓄電への信頼感を醸成するための信頼性・安全性・保全性の確保が必要となる。本研究では、太陽光発電に対する信頼感に寄与する要因を明らかにする。製品や組織に対する信頼感と個人の認知の相関モデルに基づき、太陽光発電への信頼感因果モデルを提案する。また、信頼性・安全性・保全性との因果強度を、質問紙調査に基づいて検討する。
Session2

信頼性設計技術

2-1

組立手順書のレイアウト最適化

角屋 勇佑 氏
株式会社IHI
組立工程は手順書に基づき行われており、これを最適化することは生産性向上につながる。手順書の書き方は様々考えられるが、最適な手順書についての調査は行われていない。本研究では組立手順書の改善による組立時間(工数)の削減を目的として調査・研究を行った。組合せ実験を行い、組立時間と品質の両面から手順書を評価することで、品質を大きく損なうことなく工数を削減できる最適な手順書としての指針を得た。
2-2

画像測定自動化による解析工数低減

祢宜田 悠平 氏
株式会社アイシン
競合他社との競争に負けないためには、製品自体の性能向上や原価低減に加えて、開発スピードの向上が必要です。本テーマでは、開発スピードの向上に寄与するために、開発より依頼される業務のリードタイムを低減することを目的としました。開発より依頼される業務は、画像測定業務やX線CT撮影、巻線TRYなど様々ですが、全体の2割程度は画像測定業務が占めています。また、画像測定業務に目を向けると、測定工程は繰り返し作業が多く、後工程のデータ入力も含めて自動化との相性がいいです。そこで、本テーマでは、画像測定の自動化プログラムの作成による測定工数の低減に取り組みました。
2-3

Bayesian Active Learningを用いた
リジッドアクスルサスペンションのセットベース設計法

白石 英樹 氏
トヨタ自動車株式会社
車両開発の初期段階では、性能企画に対して、バーチャルで複数性能が成立する諸元の提示が求められる。一方で、従来の実験計画法や応答曲面法を用いた手法では、計算コストが大きいという課題や応答曲面モデル精度に依存して、やりなおしが発生するという問題があった。本研究では、機械学習技術の1つであるActive Learningを用いた複数性能同時検討をサスペンション開発に適用し,やり直しの無いリーンな開発が可能であることを確認したので報告する。
Session3

データ利活用による運用支援

3-1

ツース脱落/転石検知支援システムによる
お客さまの現場の生産性・安全性の向上

江本 遼平 氏
株式会社小松製作所
本発表では、ツース脱落/転石検知支援システムの開発について紹介する。
コマツの機械が使われる鉱山や砕石の積み込み現場においては、バケットツース脱落による設備停止/破損や、転石によるタイヤカットが発生するおそれがある。
そこで、ツース脱落や危険な転石をリアルタイムで自動検知するシステムにより、車両の異常やリスクを検知し、お客さまの現場の損害リスク低減をサポートする。
3-2

ひずみゲージを利用した簡易な列車検知手法による
地域鉄道の安全性・信頼性向上の取り組み

谷口 茂 氏
株式会社京三製作所
人口減少・少子高齢化による保守等の労働力不足から、安全性、信頼性の低下が懸念される地域鉄道において、ひずみゲージをレールに貼付するという簡易な手法で軌道状態を監視し、異常や故障が発生する前に保守を行うことで脱線を防止する、予防保全を実用化する研究。
Session4

データ利活用による不具合予測

4-1

研削砥石寿命予測技術の確立にむけて

ー機械学習を用いた砥石切れ味変化の定量化検討ー

佐藤 正秋 氏
トヨタ自動車株式会社
世界的な環境問題意識の高まりから、製造業でも製品ニーズ、ものづくりニーズ共にカーボンニュートラルの実現が重要となっており、ユニット部品における機械加工分野でも、部品の複雑形状化や難削材化など難加工技術への素早い対応が求められている。
本報では、既存工法の高度化の一環として、研削工法の性能に大きく関係する砥石寿命予測技術の確立に向けたモデル構築の概念実証に取り組んだ。
4-2

振動解析を用いた装備品の不具合予測

曽原 義博 氏
全日本空輸株式会社
本講演では産業機械のメンテナンスにおいて広く使用されているものの、航空機整備の分野では導入が進んでいない振動解析について紹介します。
他分野における成功事例を航空機整備の分野に適用する過程において、分析対象部品の選定や航空機メーカーとの調整など様々な対応が必要になりますが、「振動解析による不具合予測手法をいかにして航空機整備の分野に導入するのか」という点が本講演におけるききどころです。
4-3

稼働データを利活用したプラント稼働効率改善手法の検討結果報告

松田 一真 氏
株式会社IHI
プラント稼働効率の改善を目的として、IHI-MT 法(MT 法を発展させた IHI 独自の異常診断手法)の「動作環境の変化に追従する」という概念を応用し、「より理想的な状態に近い正常データ」から適正な制御値を推定する手法を開発した。この手法は稼働実績のある制御値を適正な制御値として提案するため、物理モデル構築と比較して低コストであり、運用者の意思決定支援として有用である。
Session5

加速試験手法

5-1

HALT試験事例紹介

福田 貴之 氏
エスペック株式会社
HALT (Highly Accelerated Limit Test)は、厳しいストレスを与えて短時間で製品の潜在的な弱点を検出する定性的な加速試験であり、主に開発サイクルの短縮を目的として実施されることが多く、短時間での不具合検出の実績も多く認められる。しかしながらHALTのガイドラインは具体例が乏しく、新しくHALT試験装置を使用するユーザーが試験条件や試験環境、解析方針などを決定していくことは容易ではない。本発表ではエスペック社内製品で行ったHALT試験条件検討、試験環境構築、試験結果の解析内容までを事例紹介する。
5-2

有限要素法解析を用いた電子機器の耐振性評価手法

中道 徳馬 氏
株式会社安川電機
サーボアンプなどの電子機器は、それを搭載する装置側から常に小型化が求められている。小型化された電子機器は、装置内で従来よりも稼働部の近くに設置され、アプリケーションによって異なるさまざまな振動負荷を受けることが想定される。そのため、このような振動負荷入力に対する基板上の電子部品の耐振性を簡便に評価できる手法が求められている。本研究では、第1段階として、正弦波振動入力に対する有限要素法解析を用いた故障危険部品を抽出できる耐振性評価手法を開発した。
5-3

マグネット接着強度評価のための信頼性評価方法の提案

品部 慎治 氏
株式会社安川電機
ACサーボモータ設計の信頼性と機能性を向上させるために、ロータのマグネット接着における接着構造の強度設計基準の見直しを進めている。従来の接着強度の判定は、ロータを高速で回転させマグネット接着が破断する破断回転数より求めた強度を用いていたが、評価時の温度管理や振動の影響などに課題があった。そこで実ワークを用いた信頼性評価方法を提案し、改善ポイントや強度ばらつき抑制のための取組み内容について報告する。
Session6

信頼性技術の応用展開

6-1

フリップチップ実装における
プラズマ表面改質効果の動的水滴接触角法による評価

有田 潔 氏
西日本工業大学
近年、モバイル機器等の半導体パッケージではフリップチップ実装が採用されている。フリップチップ実装は、半導体ICを回路基板上に接合後、それらのギャップ間にアンダーフィル樹脂を充填する必要がある。しかしながら濡れ性の低下等により、樹脂の充填時間が増加したり、密着性の低下が課題となっている。本研究では、アンダーフィル充填前にプラズマで表面改質した際のぬれ性の改善効果を動的水滴接触角法により評価したので報告する。
6-2

静電式インクジェットの描画サイズの安定化と微小化の検討

石田 雄二 氏
西日本工業大学
今まで、基本機能を、入力を印加電圧の波形数、出力を描画ドットのサイズとして、パラメータ設計していた。今回は、エネルギーの入出力を考慮して、入力を印加電圧時間、出力を描画ドットのサイズとした。また、制御因子は、印加電圧、針の先端曲率半径、キャピラリーのオリフィス径、および針の長さとした。さらに、誤差因子は、インクジェット吐出描画の時に制御が困難である針先端と被描画体との距離(ギャップ)とインクに印加する負圧とした。これらの因子を、直交配列表L18に割り付けるパラメータ設計を行い、描画サイズの安定化と微小化を試みた。
Session7

信頼性安全性試験の検証

7-1

リチウムイオンバッテリーの安全性検証について

中西 俊介 氏
ユーロフィンFQL株式会社
安全性規格を取得したリチウムイオンバッテリーでも発煙発火事故が起きている。すなわち、安全性規格に準拠した試験は最低限の安全性を保証するものではあるが、リスクを完全に排除できるものではないと言える。リチウムイオンバッテリーには過充電や過放電を防ぐための保護回路が取り付けられているが、保護の内容は安全性規格では規定されていないものが多いため、今回は、安全性リスクを低減するための弊社の取り組みについて報告する。
7-2

市場環境下の車載電子部品のはんだ熱疲労予測法の適正化

西森 久雄 氏
トヨタ自動車株式会社
はんだ接合の熱疲労度について、EBSD解析のGROD指標を活用しベンチ試験品のサイクル数と市場回収品の走行距離での相関を明確にできた。はんだ接合試験サイクル数予測に使用する日射による部品周辺の雰囲気上昇温度は、天候の影響を受ける。車両への日射入射角度を観測地点の季節や緯度、車両形状を考慮して補正を行うと日射量と温度上昇値の相関を確認。各地の平均日射量での温度上昇値を活用した試験サイクル数の適正化ができた。
7-3

パワーサイクル試験と過渡熱解析による Si パワー半導体の寿命予測

岡村 耕平 氏
ヤンマーホールディングス株式会社
代表的な半導体であるシリコンダイオードを用い、パワーサイクル試験と過渡熱測定を用いて劣化推定を行った。
加えて、耐久試験後のシリコンダイオードに対する過渡熱測定を行い、パワーサイクル試験結果と比較することで余寿命推定を行った。
今後、この技術の適用範囲を拡大し、最適な信頼性を有するパワー半導体選定を実現する予定である。
Session8

データ利活用と保全

8-1

DHC-8-400型機のEngine Driven Pumpの予知保全

重冨 貞成 氏
全日本空輸株式会社
航空機のデジタル化に伴って運航中に多数のセンサーデータが取得できるようになり、その活用方法の一つとして予知保全が注目を集めている。弊社では安全性やダイヤ定時性の向上を目的に、運航者のドメイン知識を最大活用した予知保全に取り組んでいる。本研究ではプロペラ機の油圧ポンプの故障に対する機械学習を活用した異常検知や劣化予測への取り組みと、得られた結果に基づいて予知保全を実施した効果について発表する。
8-2

電力網のパフォーマンス評価とレジリエンス解析

藤倉 光太郎 氏
防衛大学校
現代社会では、生活インフラが必要不可欠なものとなっており、信頼性工学を用いて生活インフラの信頼度向上に努めてきました。しかしながら気候変動の影響により、災害は激甚化することが予想されており、実際に災害により生活インフラの機能が停止することがあります。そこで本発表では電力網を前提としたネットワークのパフォーマンス評価アルゴリズムを提案し、具体的な電力網に適用することでレジリエンス性能を解析し、信頼性向上に寄与します。
8-3

保証期間内の状態監視を考慮したシステムに対する小修理を伴うブロック取り替え方策について

田村 信幸 氏
法政大学
通常、保証を伴った製品の保全方策を数理的に扱った研究では寿命分布を用いて解析することが一般的である。本報告では、ユーザーの手元に渡った製品でもこれを提供したメーカー側が状態を監視することが可能なケースが増えつつある現状を踏まえた新たな確率モデルを提案する。この分野の研究は近年注目され研究も進みつつあるため、従来研究との違いと共に数学的な取り扱いの難しさなどに関する情報を提供できると考える。
Session9

データ利活用と評価

9-1

サンプルサイズと母集団を網羅する割合、および信頼水準の関係式の検討

河嶋 隆則 氏
宇宙航空研究開発機構
研究開発において、母集団を十分に網羅するサンプルサイズの定量的な設定方法に悩んでいたのが、この研究を行った理由です。
本報告では、サンプルサイズとそれらが網羅する母集団の割合の関係を数式化した研究成果を報告します。
この数式を用いると、予め定めた信頼水準の下で、サンプルサイズから母集団の網羅割合を算出することが出来ます。また、逆に、決められた母集団の網羅割合を満足するための必要サンプルサイズを算出することもできます。
この数式は母集団の分布形状に拠らず成り立つため、汎用的に使えることも利点です。
9-2

協調知識情報を用いたベイズ信頼性解析における事前分布の設定方法

貝瀬 徹 氏
兵庫県立大学大学院
本発表では、信頼性設計における協調知識情報の形成過程を明確にした上で、ベイズ解析における事前分布の設定との関係を明らかにし、故障モードおよび故障メカニズムさらに故障の影響を協調知識情報の形成として捉え、この中で事前分布の決定方法を提示する。
Session10

安全な組織文化の形成

10-1

JR福知山線脱線事故のシステム論からの再検討

―組織事故予防に対する共有メンタルモデルの効果―

山口 修司 氏
筑波大学大学院
福知山線脱線事故の原因は、「日勤教育」のプレッシャーによる速度超過であるという説が広く受け入れられている。鉄道事故調査委員会が指摘した直接原因や、JR西日本安全フォローアップ会議が指摘した背景要因は、この観点に基づく。しかし、著者は、「日勤教育」の問題と本事故との関連性には疑問を抱いている。本発表では、公開資料の分析に加え、システム論の立場によるモデル分析を通じて事故原因を再検討する。
10-2

安全文化(Positive Safety Culture)の醸成に向けた取り組み

日比 啓太郎 氏
全日本空輸株式会社
航空業界は特に安全を重要視する業界の一つである。近年のコロナ禍における人的リソースの毀損など環境が大きく変化している中でも、経営の基盤である安全を堅持し続ける必要がある。かかる環境変化の中、体系化された航空業界の安全管理システムの機能を維持するために注目されているのが安全文化(Positive Safety Culture)である。先進的な安全管理活動を行っている航空業界の動向や個社の取り組みに関する情報は、業界に依らず有益な情報として活用できると考える。
10-3

組織文化の3レベルに着目した安全確保とトラブル未然防止

鈴木 和幸 氏
電気通信大学
A 問題のない組織は存在しない。一般に、 見える問題としてオープンにされているものはほんの一部であり、水面化にはその10数倍の発見すべき問題が埋もれている。問題をオープンにでき、これを共有し【未然防止】に結びつけるには
B 激動する経済・社会ヘ向けて、従業員が失敗を恐れず従来の慣習を打ち破り【問題をオープンにし】挑戦行動を起こすには
C【人は誰でもミスをする】 ミスを前提に組織としての必須事項は
D【品質不正】の多くは大企業・親会社の子会社やグループ企業にて生じている。如何に再発防止と未然防止を図るか
以上の4つの「問い」に共通する対策案の提案