開催レポート 詳細版2
企画セッション、SQiP特別セッション

企画セッション

E1 講演「機械学習工学とソフトウェア品質」

丸山 宏 氏
株式会社Preferred Networks PFNフェロー

E2 パネルディスカッション
「機械学習システムにおけるソフトウェア品質保証の課題」

● パネリスト
丸山 宏 氏
株式会社Preferred Networks PFNフェロー
小川 秀人 氏
株式会社日立製作所 研究開発グループ システムイノベーションセンタ 主管研究員
兼 ソフトウェアモダナイゼーションラボ長
藪 記行 氏
富士通株式会社 共通ソフトウェア開発技術本部
ソフトウェア検証統括部 第二ソフトウェア品質検証部
● モデレータ
野中 誠 氏 東洋大学 経営学部経営学科 教授

E3 パネルディスカッション
「デジタルトランスフォーメーション(DX)にむけ
 組織とマインドはどうあるべきか?」

● パネリスト
成迫 剛志 氏
株式会社デンソー MaaS開発部 部長 兼 デジタルイノベーション室 室長
平鍋 健児 氏
株式会社永和システムマネジメント 代表取締役
藤井 彰人 氏
KDDI株式会社 理事 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部長
横塚 裕志 氏
デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC) 代表
● モデレータ
森崎 修司 氏 名古屋大学 大学院情報科学研究科 准教授
SQiP特別セッション
 ~SQiPからの情報発信~

F3 「ソフトウェア品質知識体系ガイド SQuBOK V3に向けた取り組み、最新情報」

F3-1 「超スマート社会時代のシステム&ソフトウェア品質知識体系- SQuBOK 2020 における AI、IoT、クラウド、オープンソース、アジャイル、DevOps と品質 -」

鷲崎 弘宜 氏
早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長 教授、
enPiT-Pro スマートエスイー代表、国立情報学研究所 客員教授

F3-2-1 「AIシステムの品質保証の動向」

大場 みち子 氏
公立はこだて未来大学 システム情報科学部 情報アーキテクチャ学科 教授
誉田 直美 氏
日本電気株式会社 ソフトウェアエンジニアリング本部 主席品質保証主幹

F3-2-2 「IoTシステムの品質保証の動向」

沖汐 大志 氏
日本ユニシス株式会社 品質マネジメント部 チーフ・スペシャリスト

企画セッション

セッションE1
【講演】「機械学習工学とソフトウェア品質」

丸山 宏 氏(株式会社Preferred Networks PFNフェロー)

講演者・丸山氏
当セッションでは、機械学習工学研究の第一人者である丸山氏から「機械学習では何ができるのか、何ができないのか」「それに対して品質はどうするべきか」をわかりやすくご説明いただきました。

1.人口知能(AI)とは?

まず研究分野としての“人工知能”という言葉があり、またそれらのフォーカスは時代とともに変化し、成熟すると当たり前の技術になってきたという歴史についてご説明していただきました。
一方、“人工知能”という言葉は、研究者、メーカー、一般人、マスコミなど立場によって異なる文脈で使われている現実についても触れられ、「SFの話と現在の技術は分けて考えるべき」「擬人化されたAIのイメージには要注意」とおっしゃっていました。

2.深層学習(Deep Learning)とは?

普通の関数の作り方、深層学習のやり方の基本を解説いただいたのち、「何ができるのか」の実例として自動運転の訓練の様子や、ロボットを音声でコントロールして物を動かす様子を収めた動画などをご紹介いただき、実際に動くものを目にすることができて深層学習に対する興味がさらに高まりました。
また、「何ができないか」の説明として、訓練データセットは有限であること、本質的に確率的であるため「100%の正しさ」はありえないことを述べておられました。加えて、深層学習はひらめかない、臨機応変な対応をしない、新たな価値観を作りださない、という点を挙げられています。これらをふまえると、汎用人工知能への道は遠い道のりであるという言葉は非常に納得感があります。

3.品質の課題

深層学習に関する3つの誤解を紐解いていくと、そもそも我々が理解出来ていないのは深層学習の問題ではなく「安全とは何か」「説明可能とは何か」「最適とは何か」などのもっと根本的なことではないのか、と提起していただきました。いま我々がすべきことは深層学習を利用するための工学を成熟させることであり、成熟することによって、橋やビルが安全に作られることが当たり前であるように、深層学習も当たり前のように社会に受容されていく、とも述べられていました。
また、近い未来予想図として「2020年には、新しく作られるソフトウェアの50%以上が統計的機械学習応用システムとなる」と語られ、50%という数字には会場内が驚いていたように感じました。

4.まとめ

「“2020年には50%となる”」という予想を我々に伝えたのはどのような意図であるのか、という会場からの問いに対し、丸山氏は「みなさんにとってチャンスだとういうことを伝えたかった」とお答えくださいました。ソフトウェア工学のこれまでの知見と、機械学習における新たな知見を融合した“機械学習工学”に多くの方が興味を持たれたのではないでしょうか。実のところ、私自身はこの講演を聞くまで機械学習についてかなり疎い状態だったのですが、1日にして「もっと知りたい!」と惹きつけられました。
尚、本シンポジウムに参加された方はご存知かと思いますが、ソフトウェア品質知識体系ガイド(SQuBOK)の第3版でも新コンテンツとして「AIシステムの品質保証の動向」を取り上げるとのことです。こちらの発行も今からとても楽しみです。
レポート:平岡 百合子 氏

セッションE2
【パネルディスカッション】
「機械学習システムにおけるソフトウェア品質保証の課題」


左からモデレータの野中氏、パネリスト藪氏、小川氏、丸山氏
● パネリスト
 丸山  宏 氏(株式会社Preferred Networks PFNフェロー)
 小川 秀人 氏(株式会社日立製作所
        研究開発グループ システムイノベーションセンタ 主管研究員
        兼 ソフトウェアモダナイゼーションラボ長)
 藪  記行 氏(富士通株式会社 共通ソフトウェア開発技術本部
        ソフトウェア検証統括部 第二ソフトウェア品質検証部)
● モデレータ
 野中 誠 氏(東洋大学 経営学部経営学科 教授)
「2020年には、新しく作られるソフトウェアの50%以上が統計的機械学習応用システムとなる」と機会学習工学研究の第一人者丸山宏氏は予想されています。このような未来を見据え、「機械学習を取り入れた場合の品質保証を考える」ことをテーマとしたこのパネルディスカッション。

パネリストには、現場で実際に品質保証を担当されている藪記行氏(富士通株式会社)、企業内研究として機械学習に携わっていらっしゃる小川秀人氏(株式会社日立製作所)、そして直前のセッションでご講演をいただいた丸山宏氏(株式会社Preferred Networks)の3名が迎えられました。モデレータには、SQiP運営委員会委員長の野中誠氏が参加され、はじめにパネリストのみなさんがどのような機械学習システムの品質保証に携わってきたのか自己紹介を含めて説明いただいたうえで議論が進められました。

討議の一部を以下にご紹介します。

「機械学習を使わないシステムと使ったシステムを比べたときに、システムの品質保証においてどのようなことが異なりましたか?」

藪氏)
基本的には従来の成果物・プロセスの監査で進めているのが実態。
開発側では精度評価をしているが品証では実施していない。

小川氏)
従来どおりの品質保証を見直すいい機会であるととらえている。最終的にはお客さんのKPIでどう握れるかが重要と考える。中間でのプロセスQAで何をするのかはきちんと考えたほうがいいと思う。

野中氏)
小川さんの見解について、藪さんはどのように思いますか?

藪氏)
本当のことを言うと、これが正解でこのまま進めてよいかは自分でも疑問があり、考えているところ。プロセスよりもお客さんにもたらす価値が大事。今までよりも優れているということを示さなければいけない。

丸山氏)
今現場で起きている小さなサイクルはエキスパートに任せたほうがよい。ただ、データを集めるところのプロセスQAは認証に関わるのでやったほうがいいと思う。

小川氏)
データに関して、社内の第三者検証としては何をするべきでしょうか?

丸山氏)
提案したいのは、お客様からデータを1万件もらったら、品証で1000件もらうこと。開発が1万件すべてをもらったら過学習になってしまい、知らないデータがなくなってしまう。

藪氏)
過学習への問題意識はある。実態としてQAが入っていけていない。

野中氏)
現状は無理でも、それが実現できるようになれば品証の価値向上につながりそうですね。

「適切なデータ量の見積もりの手法などはあるのでしょうか?」(会場からの質問)

藪氏)
大体このぐらいの量がないとだめという目安はあった。アルゴリズムが複数出たので、どれがお客さんに合っているか試行錯誤した。

小川氏)
経験則的にこのぐらいの量があれば大丈夫、という量を積み上げている。

丸山氏)
この質問はよく受ける。
データの中には意味のあるものもあれば、ノイズもある。きれいなデータであれば小さくてもいいが、ノイズが多いと大きくする必要がある。オーバーフィットしている場合には大きくするのがよい。

まとめ

「プロセスQAでは何をすべきか」についてのリアルな議論からもわかるように、機械学習システムがどんどん増加していく未来が予想されている一方で、その品質保証の在り方はさらなる検討が必要な状況であると認識しました。会場からも具体的な場面を想定した質問が多く挙がり、聴講者からの注目度が非常に高く、そして有意義なセッションであったと思います。
レポート:平岡 百合子 氏

セッションE3
【パネルディスカッション】
デジタルトランスフォーメーション(DX)にむけ組織とマインドはどうあるべきか?


左からモデレータの森崎氏、パネリスト成迫氏、藤井氏、平鍋氏、横塚氏
● パネリスト
 成迫 剛志 氏(株式会社デンソー MaaS開発部 部長 兼 デジタルイノベーション室 室長)
 平鍋 健児 氏(株式会社永和システムマネジメント 代表取締役)
 藤井 彰人 氏(KDDI株式会社 理事 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部長)
 横塚 裕志 氏(デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC) 代表)
● モデレータ
 森崎 修司 氏(名古屋大学 大学院情報科学研究科 准教授)
デジタルトランスフォーメーション(DX)、言葉としては聞いたことがあっても、いったい何のことを言っているのか私は良く分かりませんでした。品質という固いイメージの世界とデジタルトランスフォーメーションという一見相性の悪そうなこのテーマ、新たな視点から品質について議論をするこの場でどんな意見が聞けるのか、興味深いセッションでした。パネリストには、DXの普及推進側として成迫氏と藤井氏、推進の支援と経営者側として平鍋氏と横塚氏が迎えられました。

以下に発言の一部をご紹介しましょう。

議題1:デジタルトランスフォーメーション(DX)をどういう風にとらえていますか?

成迫氏)
リアルの世界がデジタルになる。こうなっていくとビジネスは変わっていき、今まで通りのビジネスをやっていると勝てない。

藤井氏)
Google 、AmazonなどIT の技術をフル活用し、既存ビジネスを変えてくるデジタルディスラプターに対抗するために、既存のビジネスをやっている人たちがトランスフォームして行く、これがDX。

平鍋氏)
Software is Eating The World( ソフトウェアが世界を食い尽くそうとしている)。
デジタルの勝者、ソフトウェアの勝者が他の垂直産業を食いに行っている。ソフトウェアを中心に世界が置き換わっている。これが私が感じているDXです。

横塚氏)
経営面からとらえるとDXは生き残りのビジネス戦略をどう考えるか?ということ。
自分たちの仕事の一部をデジタル化することがDXではない。エンジニアが技術視点でビジネスを発想していくことが期待されている。

議題2:DXを推進するする上で、組織とか体制面での工夫があれば教えてください、またビジネスとしての見込みが立ちにくいがどういう考え方をすればいいかを教えてください。

成迫氏)
スクラムを導入してやっている、1チーム5,6人の少数でいろんなものを作っている。
DXには高度な技術は必要ない、考えるよりやっちゃったほうがいい。

藤井氏)
ビジネス環境が複雑ななかで、ビジネスを成功させるには、内製でアジャイル開発で進める。最初に変わらないといけないのは企画側でここに技術を分かっている企画者をいれなければビジネスにおけるITの活用は進まない。

平鍋氏)
ソフトウェアが本業ではない会社がCTOを置き始めている。
技術とエンジニアリングとビジネスが同じループで回っているようななかにアジャイル開発が増えている、DXではそこが増えている。

横塚氏)
経営そのものがアジャイルにならないといけない。いまの意思決定のスペックでは判断ができない。組織のマインドを180°変えないとこのDX時代を乗り越えられない。

Q :今みたいな話を経営者じゃないひとが近づけていくためにはどんなことができますか。

全員:提案して、自分でやってくれる人が必要、アイデアだけではだめ。
レポート:宮澤 匡 氏(横河ソリューションサービス株式会社)

SQiP特別セッション~SQiPからの情報発信~

セッションF3
「ソフトウェア品質知識体系ガイド SQuBOK V3に向けた取り組み、最新技術」


講演者・鷲崎氏

講演者・誉田氏

講演者・沖汐氏
昨今、ビジネスにおいてIoTやビッグデータ、機械学習など話を頻繁に聞くようになりました。一方で自動運転自動車の死亡事故やIoTを踏み台にしたサイバー攻撃も同様に耳にすることが多くなりました。複雑化するソフトウェアと、細分化していくハードにおいて、どのように品質を確立するのかと、現時点でどこまで到達出来ているのかに興味を持ち参加させていただきました。また、会場の参加者は、学生から企業の品質担当、研究者と実に多様でした。

F3-1 超スマート社会時代のシステム&ソフトウェア品質知識体系
- SQuBOK 2020 における AI、IoT、クラウド、オープンソース、アジャイル、DevOps と品質 -

鷲崎 弘宜 氏
(早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長 教授、
 enPiT-Pro スマートエスイー代表、国立情報学研究所 客員教授)
最初にSQuBOK V3の編纂で、追加される予定であるAI、IoT、クラウド、オープソース、アジャイル、DevOpsなどの応用領域について説明いただきました。
もともとシステムは、ビジネス世界とサイバー世界を繋げることにより、ビジネスの効率化などの付加価値を提供するものでした。ただ最近ではIoT・ビッグデータ・AI(機械学習)などの技術革新により、物理的な世界とも繋がり我々に新たな価値を提供するようになりました。また、それら新たな技術の影響によりシステムは複雑化が進みました。一方で、システムのライフサイクルを圧縮し、早期に付加価値を提供することも追求されるようになってきました。
そのため品質知識体系として求められる応用領域は、AI・クラウド・IoTといった技術的レイヤーのみならず、アジャイル開発・DevOpsなどの短期開発手法や、複雑で巨大なシステムを効率的に構築するためのオープンソースの活用が不可欠となっています。

F3-2-1 AIシステムの品質保証の動向-

大場 みち子 氏(公立はこだて未来大学 システム情報科学部 情報アーキテクチャ学科 教授)
森田 純恵 氏 (株式会社富士通ゼネラル 空調機商品開発本部 主席部長)
飯泉 紀子 氏 (株式会社日立ハイテクノロジーズ 経営戦略本部 専門部長)
誉田 直美 氏 (日本電気株式会社 ソフトウェアエンジニアリング本部 主席品質保証主幹)
次にAIシステムの詳細についてですが、アプローチには次の2つがあり、それぞれ品質観点で課題もあります。
・統計確率的アプローチ:100%でない。要因数が多く人が解釈するのは困難。
・脳科学的アプローチ :処理の根拠がブラックボックス。

また、継続的に学習をするシステムを想定した場合には、処理アルゴリズムが変化していくこととなります。これらは、人命が関わる病院や自動運転などのシステムにおいては、大きなリスクとなります。一方、それらの課題を解消するための研究(メタモルフィックテスティング、DNNカバレッジテスト、フェールセーフ設計)についてもご紹介いただきました。

F3-2-2 IoTシステムの品質保証の動向

沖汐 大志 氏 (日本ユニシス株式会社 品質マネジメント部 チーフ・スペシャリスト)
小島 嘉津江 氏(富士通株式会社 ネットワークソリューション事業本部
        フィールドエバリュエーション統括部 統括部長)
藤原 良一 氏 (三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社 生産技術本部 品質保証部 部長
近年、サーバー攻撃が増加していますが、全サイバー攻撃の54%がIoTに対する攻撃となっており、IoTシステムにおいてはセキュリティが重要な課題となっています。攻撃は次の3つに分類されます。
1)情報改竄・漏洩  例:コピー機からのデータ抜取り
2)制御奪取     例:スパム攻撃の踏み台となる
3)セキュリティに起因する制御奪取 例:自動運転車の外部操作

それらの課題に対し、次のような対策が進められています。
・1)~3)が発生しないためのセキュリティの強化
・規格やガイドを活用したリスク分析と、対策の計画への織り込みと実施。
・IoTの性質(機能が限定、寿命が長いなど)に対する品質保証の観点の追加。

当セッションを通し、私自身、漠然とした概念理解で留まっていた各技術について、今後の方向性や発展についてイメージを明確にすることが出来ました。また、目まぐるしい技術革新と並行し進められている品質保証アプローチや課題解消のための研究について知る事ができ大変有意義なものでした。SQuBOK V3が実に楽しみです。
櫻井 淳人 氏(株式会社インテック)