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開催レポート 詳細版1

特別講演、基調講演、一般発表

特別講演 スケールフリーネットワークで起こす
DX2.0とQX(Quantum Transformation)

島田 太郎 氏
株式会社 東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者
基調講演 脳科学から考えるやり抜ける人・逆境に強い人と
そうでない人の決定的な違いとは

細田 千尋 氏
帝京大学先端総合研究機構 講師/東京大学大学院 総合文化研究科 研究員
一般発表

特別講演
スケールフリーネットワークで起こす
DX2.0とQX(Quantum Transformation)

島田 太郎 氏
島田 太郎 氏
株式会社 東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者
本セッションでは、現在のDXの課題や問題、DXの一部であるAIシステムの品質、DXの先にあるQX(Quantum Transformation)について講演されました。現状の課題共有から現状でできていること、近い未来にわたる展望にかけて非常に参考になる講演でした。

1.DXの課題

「DXはいろいろなところで話題になったり注目されたりしているが、そもそも定義があいまいである」や、「DXにあたり課題は何か?」などが理解されていない、共有化できていないことが説明されました。また、「(DXは)だれかがやればいい」という他人事思考から「全員がデジタル化について意識して考える必要がある」ということが講演のなかで示されました。東芝は、難易度(必要投資規模)とスピード(利益が目標に達する年度)の2軸で事業を検討し、そのうちのいくつかの事例(OCRを利用したサービスやカメラ付LEDによる製造現場の見える化、レシートをスマートフォンに送るサービス等)が紹介されました。

2.AIシステムの品質

DXを推進する上で、AIを利用したシステムは必要だが、AIシステムの品質については、未成熟であることが説明されました。これに対しては、開発プロセスを整備した「AI品質保証プロセスガイド」、データやモデルの特徴や確認結果を記録する「データ/モデル品質チェックリスト」、ISO25010の品質特性を機械学習向けに整備した「システム品質チェックリスト」で対応されているというお話がありました。

3.DXからQXへ

このような背景から、今後、膨大なデータがネットワーク上に流通し、また膨大なデータを扱うようなアプロケーションや高速演算や処理が必要なコンピュータが求められます。このこうしたことから東芝では量子暗号通信システムを開発し事業化を発表しています。量子暗号通信技術に関連する特許数も世界一です。

4.質疑応答

Q1. ITリテラシが低いユーザには、どうアプローチすればよいでしょうか?
A1. 既存のインタフェースにできるだけ合わせて接するとよいと思います。
Q2. プラットフォームを作るためにスケールフリーネットワークを作るとはどういうことでしょうか?
A2. 人間の欲求によって、今までつながっていないデータをつなげて、人の欲求や気持ちを出力できるようなインタフェースを作ることかと思います。
Q3. DX人材になるためにはどうすればよいでしょうか?
A3. ソフトウェアエンジニアは閉じこもって作業することが多いと思うがこれは逆です。コンフォートゾーンから離れて新しい刺激受け続けることが重要だと考えます。

5.所感

DXについては聞くたびになんだかわからなくてモヤモヤしていたのですが、今回の講演の説明と具体例などをきいて一面が分かったように思います。またAIシステムの品質保証については多くの人が課題だと思っているところであり参考になる内容であったと思います。今後の参考になる内容が多い講演をありがとうございました。
レポート:鈴木 昭吾

基調講演
脳科学から考えるやり抜ける人・逆境に強い人と
そうでない人の決定的な違いとは

細田 千尋 氏
細田 千尋 氏
帝京大学先端総合研究機構 講師/東京大学大学院 総合文化研究科 研究員
本セッションでは、「最新の脳科学の見地から物事をやりきれる人はなにが違うのか?」「どうすればやり抜ける人にできるのか?」という、私自身、日頃の業務や資格取得のための学習などで身近に体験している内容に関する大変興味深い講演でした。

1.脳の個人差

人にも個性がありまた脳にも個体差があることから、例えば同じ講義を受けても理解できる人とそうでない人の差が出ることが説明されました。Dunning–Kruger(ダニング-クルーガー)効果(能力の低い人は客観的な評価と自己表の差を認識できず自分を過大評価すること)をベースに、能力の低い人たちはメタ認知能力が低い傾向にあり、挫折する人の特徴として作業量などを過小評価してしまうことで挫折につながるというお話がありました。

2.GRIT(やり抜く力)をつけるために

「メタ認知能力が高い人は元から高いのかどうか?」という説明が、ロンドンのタクシードライバーの実験例、ジャグリングのトレーニング実験などいくつかの実験から、トレーニングによってある程度発達させることが可能であるといったお話がありました。メタ認知能力の低い人に対しては、画一的なコンテンツを学習させるのではなく、日々の学習サポートと小さいことでも達成感を持てることを継続し続けることがやりきることにつながるという説明がありました。

3.質疑応答

Q1. AREA10 を発展させる方法はありますか?
A1. メタ認知の修正と達成感を持つことの繰返しで発達可能です。
Q2. ドロップアウトさせないためには、目標を細分化して作業を行うといったアプローチもあるかと思いますがいかがでしょうか?
A2. メタ認知が高くドロップアウトしにくい人には、目標の細分化は逆効果になることもあります。細分化の逆作用にも注意が必要です。
Q3. ダイエットによく挫折します。アドバイスをいただきたく思います。
A3. メタ認知と成果の細かいチャックがポイントになります。

4.所感

性格やふるまいにここまで脳が影響していたということに驚きました。また、不得意なこと(=脳が発達していない部分)があっても、サポートとトレーニング次第である程度学習できるということが分かりました。今回得られた知見をことに、自身の行動・ふるまいからトレーニングすることを検討するとともに、他者へは、行動してもらいたい内容やふるまいを考えながら、相手にとって達成感を持ってもらうようなフィードバックを行うことで接していきたいと思います。
レポート:鈴木 昭吾

一般発表

セッションA1「品質マネジメント」

品質マネジメントというと、その後にシステムという言葉が続き、品質システム関連の発表に偏りがちと思っていましたが、品質マネジメントシステムの発表もありましたが、品質をどのようにマネジメントするかという観点の発表もあり、幅広いセッションでした。
4つの発表があり、「品質マネジメントシステムに関するもの」と「品質のマネジメントに関するもの」に分けて、述べます。

1.品質マネジメントシステムに関するもの

次の発表が該当します。
  • A1-1:事業活動と統合した品質マネジメントシステム確立に向けて
    原田 かおり 氏 ㈱インテック PDF 発表資料
  • A1-3:品質認証PSQの適応とソフト品質確保への活用
    中村 淳 氏 ㈱フォーラムエイト PDF 発表資料
中村 淳 氏
A1-3 中村 淳 氏
A1-1は、コロナ禍の中という難しい状況にあり、リモートでプロジェクトを進めるという困難にもかかわらず、2つの課題を見事に解決した発表者をはじめ、プロジェクトメンバーは苦労があったと想像します。質問で成功基準について問われ、指標値でモニタリングしているとのことで定量的に把握していることもうかがえました。成功要因として、“i-Trinity”という自社オリジナルの品質システムを構築していることにあると感じました。QMSやISO9001というと堅苦しい型にはめられる窮屈さから反発する社員もいますが、オリジナルものであれば、社員に自社にフィットしたものにしようというモチベーションが働いたと想像します。

A1-3は、プロダクト品質として品質システムにPSQを取り入れたものでした。この規格を導入したことにより、不具合や問合せが目立って減っているわけではないが、顧客が参照するWeb上のヘルプは、参照しやすくなっており、顧客満足度は確実に向上していることがうかがえました。PSQを取得されたのが日本最初(記憶が確かならばそう言っていたように思います)のため、参加者からの関心も高かったようです。

2.品質のマネジメントに関するもの

次の発表が該当します。
  • A1-2:重回帰分析を用いたウォーターフォール開発の漸進的プロジェクト管理モデルの構築
    田中 啓介 氏 キヤノン㈱ PDF 発表資料
  • A1-4:プロジェクト立て直しと網羅的な検証を通し実感した基本の重要性
    ~日本地図と3割チェックによる品質の作りこみ
    宇佐美 博志 氏 オリックス生命保険㈱ PDF 発表資料
  • 田中 啓介 氏 宇佐美 博志 氏
    A1-2 田中 啓介 氏 A1-4 宇佐美 博志 氏
A1-2は重回帰分析で障害件数の予測値の因子として、”コード行数”よりも”チーム数”を取り上げたことに意外性があり、チーム数ならば誤差はなく、値も取得しやすく簡便に利用できるのは優れていると感じました。ただ、数百人規模の大規模プロジェクトを対象としているとのことで、今後は小規模プロジェクトにも適用可能なように、チーム数ではなく、メンバ数にするとよいと感じました。

A1-4はプロジェクト立て直しの実例紹介で、表題の「日本地図」と「3割チェック」に秘策が込められていると期待して聞きましたが、正直申し上げると拍子抜けでした。ただ、実際はセオリー通りに結合テストを途中で止めて、単体テストからやり直し、社内の規定にしたがって、地道に立て直したとのことです。プロジェクトの立て直しに王道はなく社内のマネジメントシステムにきちんと従うことが、近道であることがよくわかりました。
レポート:後藤 慶太(三菱スペース・ソフトウエア株式会社)

セッションA2「設計品質/レビュー」

  • A2-1 メタモデルによる設計情報定義とマルチビューを活用したトレーサビリティ記録方式の提案
    西村 隆 氏 ㈱デンソークリエイト PDF 発表資料
  • A2-2 リモートワークでの開発を前提とした効果的なレビュー改善手法の提案
    ~オンラインの弱点克服・利点活用の工夫とレビュー成功要因の関連整理~
    西川 隆 氏 ソーバル㈱ *2020年度 SQiP研究会 研究コース2「ソフトウェアレビュー PDF 発表資料
  • A2-3 DRBFMにおける一人HAZOPの活用方法の提案
    柏原 一雄 氏 ㈱デンソークリエイト PDF 発表資料
西川 隆 氏
A2-1 西村 隆 氏

1.セッション概要

本セッションでは、設計品質とレビューに関する2本の経験論文と1件の経験発表がありました。

2.発表の特徴

3件の発表で共通していたのは、開発現場における課題を、いかに余計な工数をかけずに効果的に解決するかという実践的な視点での研究であったという点です。各発表について、私なりにポイントと感じたことを挙げさせていただきます。

(1) トレーサビリティ管理コストの低減による品質の向上
A2-1では、要求仕様から基本設計、詳細設計へと段階的に進められるソフトウェア開発において、全ての要求が正しく実現されていることを確認するためのトレーサビリティ管理手法について、メタモデルによる設計情報構造体の定義とこれに対するマルチビューを定義することにより、設計情報を一元化することが提案されました。
私が経験してきた開発の現場においては、論文内でも紹介されたトレーサビリティマトリクス方式などで管理しようという声は上がるものの、そのメンテナンスコストから、ドキュメントの最新化が遅れ、トレーサビリティ欠如に起因する手戻りもしばしば見受けられる状態でした。
今回の提案のような設計と同時進行でのトレース情報の記録は、このような現場でのソフトウェア品質向上に大きく寄与するものと期待します。

(2) オンラインレビュー改善のためのTips集によるレビュー品質の向上
A2-2では、新型コロナウィルス感染症が広がる中で普及したリモートワークにおいても、効率的なレビューを実施するための手法についての提案が行われました。この発表は、2020年度SQiP研究会研究コースにて実施された研究に基づくもので、複数社からの参加者がそれぞれに持ち寄った改善策を集合知化したという点で意義があるものだと感じました。
提案手法の概要は、レビューの成功要因に影響するTipsをリスト化し、改善すべき成功要因に対応するTipsを試行して、改善を繰り返していくというもので、リモートワークを実施している開発現場において、明日からすぐに適用し、効果が期待できるものであるという点で価値のある研究であったと考えます。

(3) 一人HAZOPによる効率的なDRBFMの実施(影響箇所・変更箇所抽出漏れの防止)
A2-3では、DRBFMにおいて、「心配点の抽出漏れ」、「心配点の要因の見逃し」を防ぐために、欠陥混入メカニズム知識を蓄積したDIM辞書の作成に加え、HAZOPによる気づきを入力とすることで、誰でも実開発で導入しやすい手法が提案されました。HAZOPの適用においては、「一人HAZOP」という手法を導入することにより、視点・視野・視座が異なる複数人の問題点発見能力を最大限引き出すことで、短時間で効率的なHAZOPの実施を目指しています。
発表内では、具体的な事例に基づいて参加者によるワークの時間も取られ、一人HAZOPの効果を体験することができました。

3.本セッションに参加して

品質管理手法については、これまでに多数の手法が提案されています。これらを踏まえた上で、近年のソフトウェア開発の特徴、また新型コロナウィルス感染症のような外部環境に対応するために、従来の品質管理手法を改善し、また新たな取り組みを進めていくことが常に求められていることを強く感じました。
レポート:大場 克哉(株式会社ベネッセコーポレーション)

セッションA3「品質評価」

  • A3-1 品質マインドの可視化による品質管理のデジタルソリューションへのアプローチ
    吉井 怜奈 氏 ㈱日立製作所 PDF 発表資料
  • A3-2 プラットフォーム構築プロジェクトを対象とした品質管理指標の分析
    谷口 修 氏 日本電気㈱ PDF 発表資料
  • A3-3 若手が2年間でソフトウェア品質評価技術者になるために実践したこと
    有森 勇一 氏 ㈱両備システムズ PDF 発表資料
  • A3-4 製造工程に対する工程完了判定の導入「何をつくるか」から「どうつくるか」へ品質保証の拡大
    藤井 和弘 氏 オリックス生命保険㈱ PDF 発表資料
谷口 修 氏
A3-2 谷口 修 氏
品質評価には、次のような様々な観点があります。
プロダクト品質、プロセス品質、定性評価、定量評価、指標、評価段階など
これらを全て、きっちり全て考慮して網羅するように品質評価を行うと資源が足りません。どこに重点を置いて効率的に行うかが、ポイントになります。その勘所を知る手がかりを得るために本セッションを聴講しました。
A3-2の発表においては、SI工事の規模感を定量的に把握する方法は自社でも課題であったので興味深く拝聴しました。
規模感を把握するメトリクスとしてはOS数を挙げ、客観的に評価するために重回帰分析結果は40%とのことで、前例と比べても遜色がないことがわかり、自社でも規模感の概算を掴むために利用できる可能性を感じました。
質問としては、要因(メトリクス)としては、作業者への熟練度やほかの要因も含めて検討の余地があるなどのコメントも寄せられました。
A3-4の発表においては、工程後の移行判定がテーマで、自社でも工程完了後の移行判定を取り入れようとしており、参考になりました。
実施することは①コーディングルールの整備、②ソースコードレビュー、③コード解析でこれらのプロセス品質とプロダクト品質をチェックリストにより判定するという主旨でした。
ポイントとなるのが、チェックリストであり、この維持管理とブラッシュアップが今後の取り組むべき課題であることが質問のやり取りなどでうかがえました。自社で工程移行判定のチェックリストの参考にしたいと思います。
A3-3は品質評価スキルを持つ若手人材の育成というテーマで興味深く聴講しました。
品質評価部門に最初に配属され、おそらく頼りとなる先輩がいない状態だったことがうかがえました。そのような中で、発表者なりに必要なスキルを取得するための目標を掲げ、その計画を自らに課し、見事に技術部門の信頼を得たことは素晴らしいと感じました。SNSを利用して多くの気づきを得たことも、いまどきの方法としては有効と感じました。
品質保証部門の方からの質問が相次ぎ、モチベーションを挙げることに苦慮していることがうかがえました。発表者は、SNSなどを利用して楽しみながら、視野を広げていくことをお勧めしていました。
総じて、効率的に品質評価を行うためのポイントやそのヒントなどが得られ、有意義なセッションでした。発表者の皆様、ありがとうございました。
レポート:後藤 慶太(三菱スペース・ソフトウエア株式会社)

セッションB1「アジャイル/DevOps」

  • B1-2 アジャイル開発における欠陥検出のフロントローディングのための品質チェック方法の提案
    谷﨑 浩一 氏 ㈱ベリサーブ PDF 発表資料
  • B1-3 PMとQAが歩んだ越境体験によるアジャイルなチーム作りとその後のチャレンジ
    坂東 塁 氏 ㈱リクルート PDF 発表資料
  • B1-4 サービス開発初心者チームのDevOpsを用いた新サービス開発の進め方について
    木村 慎吾 氏 ㈱インテック

1.セッション概要

本セッションでは、アジャイルとDevOpsに関連する経験発表セッションとして、ソフトウェア開発の現場での品質取り組みに関しての3件の発表がありました。
アジャイル/DevOpsによるソフトウェア開発は一般的なものになってきているものの、そのプラクティスが品質という観点でまとまった形で発表されることは多くなく、各社での実践についての発表は非常に有意義なものであると感じました。

2.発表の特徴

3件の発表で共通していたのは、ウォーターフォール型開発とアジャイル開発の違いに着目した取り組みであり、また開発現場ですぐに使える具体的な発表であったことでした。個々の発表の詳細には触れませんが、私なりにポイントと感じたことを挙げさせていただきます。

(1) ウォーターフォール開発における欠陥の早期発見をアジャイルでいかに実践するか
B1-2では、バックログ作成・バックログリファインメントに関する品質チェック項目10項目について、仕様が開発を進める中で変化し、また要求仕様書に相当するものがチャットや付箋メモなどに散らばっているというアジャイルの特性に着目し、具体的なチェック方法をリスト化した実践的な内容でした。

(2) プロジェクトへのQAメンバーの関与を(ウォーターフォールとは)変えることによるパフォーマンスと品質の向上
B1-3では、QAの関与がプロジェクト後半からになることによる「負」について、QAの参画時期をプロジェクト開始時からとし、さらにプロダクトマネジャー(PM)と開発との関わり方を継続的に見直した実践例でした。ウォーターフォール開発におけるQAのプロジェクト参画の参考にもなる事例だと思われます。

(3) アジャイル開発では見通しづらい点についてシステムテスト工程を導入し対応
B1-4では、アジャイル型開発において、運用設計やアーキテクチャの全体像をイテレーションの中で確認することは初心者チームでは難しいという点に着目し、リリース前にイテレーションとは別にシステムテスト工程を導入しこれらの最終確認を行なったと言う発表でした。プロダクト(サービス)への品質要求とチームの特性を踏まえた事例として、参考になる取り組みであると考えます。

オンラインでの開催となった今回のシンポジウムでの質疑は、チャットで質問し、発表者が口頭で回答するという形式でした。いずれの発表に対しても、実プロジェクトへの適用を念頭においた質問が多く、参加者においても、アジャイル開発における品質の取り組みへの関心の高さが伺われるものでした。

3.本セッションに参加して

アジャイル開発のプラクティスは、変化に対応し、スピードを求められる近年のソフトウェア開発に有効なものであるし、またプラクティスの多くは、同時に品質を確保するために重要なものであると私は理解しています。一方で、アジャイル開発の現場では、プラクティスの適用が形ばかりとなり、QCDの確保に苦労をしている例も後をたたないように思えます。アジャイル開発において盲目的にプラクティスを実践するのではなく、自らのプロジェクトで実践しているプラクティスを常にふりかえり、ウォーターフォールとアジャイルを対立関係と捉えることなく、有効なものは取り入れることでプロセスを改善し続けていくことが、アジャイル開発の姿と言えるののではないかと感じます。
レポート:大場 克哉(株式会社ベネッセコーポレーション)

セッションB2「AI/機械学習の活用」

本セッションでは、以下に示した3報告がありました。レビューやシステムにどのようにAIを適用するか、AIシステムのテスト技法に対してどのように改善したらよいかが報告されました。
  • B2-1 AIによる設計レビュー自動化への取り組み事例紹介
    上山 弘人 氏 ㈱日立ソリューションズ PDF 発表資料
  • B2-2 閉ループ制御システムに対する異常シナリオ分析のための情報検索
    小口 一浩 氏 (国研)宇宙航空研究開発機構 PDF 発表資料
  • B2-3 ニューロンカバレッジ技法を用いたAIモデル特性分析によるテスト十分性向上施策
    中川 純貴 氏 ㈱日立製作所 PDF 発表資料
中川 純貴 氏
B2-3 中川 純貴 氏
セッションB2の3つの報告の中では、B2-1に多くの質問があり、参加者の興味の高さ伺えました。これは、参加者の多くが設計レビューになんらかの問題意識を持っていることや、設計レビューという属人的要素がかかわるプロセスにおいてAIを適用した報告に多くの参加者の興味があったからだと考えます。
この報告は、従来、レビューチェックリストやベテランエンジニアのレビュー観点からドキュメント中にあるあいまいな語などの「キーワード」を設定し、「キーワード」に合致した部分を指摘事項として出力していました。しかし、表層的な指摘が多く出力され、また誤検知も多いという問題がありました。そこで、ドキュメントの文章を、文脈を理解できる自然言語モデルBERT(*) を適用してレビュー対象ドキュメントをチェックしたところ、工数比にして約30%の削減効果があった、いう報告でした。

質疑応答では、主に以下のような内容でした。
Q1. 本施策での苦労点はどのような点でしょうか?
A1. 学習データの作成に苦労しました。
Q2. ドキュメントで記載が足りていない点などのチェックは可能でしょうか?
A2. 可能です。
Q3. 単語登録や品詞判定では、オープンデータを利用したとありますが、オープンデータと設計ドキュメントの間に書き方表現など違いはないのでしょうか?
A3. 設計ドキュメントでは、用語が統一されてないことや、一般とは意味が異なる用語などがあるため、変換したり用語を合わせる必要がありました。

開発プロセスにAIを導入する、というソリューションは、プロセスにうまく適用できれば高い効果が見込める一方で、自社や自組織に適用する場合は、学習データをどうするのか、機械学習の結果をどのようにシステムやプログラムの設計に入れるのか?といった人が検討する必要する部分も多くあり、そうした人材の育成が、AIシステム開発に必要だと思いました。
(*)BERT :
2008年にGoogleが発表した自然言語処理モデル
Bidirectional Encoder Representations from Transformers
レポート:鈴木 昭吾

セッションB3「テスト」

本セッションでは、テストにフォーカスをあてた3つの発表が行われました。テストの品質を作りこむために組織体制から根本的に見直す話に、情熱とパワーを感じました。テストの自動化は私の職場周辺でも数年前から取り組んでいるが、なかなか成果が聞こえてこない。発表者は一体どう進めたのか気になっていました。また、テキストマイニングとアセスメントモデルを利用して改善施策案を素早く出す話は自身もテキストマイニングを活用していることもあり、どんな話なのか最も聞きたいと思っていました。
  • B3-1 品質の作りこみを実現するためのあるべきテストの追求~開発とテスティングの分離~
    中島 輝 氏 オリックス生命保険㈱ PDF 発表資料
  • B3-2 TPI NEXTを促進するためのテキストマイニングを活用したIDA-Methodの提案
    西田 尚弘 氏 ㈱日新システムズ PDF 発表資料
  • B3-3 二つの特徴的な取組みによるテスト自動化の導入
    松井 康浩 氏 オリックス生命保険㈱ PDF 発表資料
中島 輝 氏
B3-1 中島 輝 氏
B3-2が受講者からの活発な書き込み発言(質問やアイデア的な意見)で一盛り上がったと思います。入力データにこんなのは使えないかとか、こんな切り口で結果の検証はしてないかとか。ツールは導入も操作もとてもお手軽にできそうなので、すぐに試してみたいと思いました。そう思った方々が多いのではという空気をパソコンのモニター越しにも感じました。

【各テーマでの概要と感想】

B3-1 テストにおける品質の作りこみをするために、体制や役割分担等々さまざまな工夫をした発表でした。無駄なテスト、根拠のないテストを仕様書のトレーサビリティをとることによって減らしていくために早い段階でテスト仕様に取り組んでいく。それを可能にするためにテストチームを開発から独立させる。簡単に言うとW字モデルの開発を推進。推進のためにはシステム横断的にテストを支援する組織が必要で、チーム(TCoE)を立ち上げた。という内容。W字モデル的なプロセスを組織標準プロセスとして定義している組織はよく見かけます。しかし、プロセスの定着が進んでいるかというと、多くは疑問符がつきます。プロセスの定着に向けて真摯にやっていくためには、このような進め方になるのかなと、とても参考になる事例でした。

B3-2 テストプロセスを改善するアセスメントのモデルTPI NEXTに近い結果を振り返り議事録やKPTデータをツール(IDA-Method)に与えてにお手軽に改善施策案を出す手法の紹介でした。質問やアイデアなど意見が飛び交いつつ、まだ研究途中でもあるということなので、今後の研究成果が楽しみです。

B3-3  テスト自動化を妨げる要因をしっかり分析し、対策を実施することで確実に前に進められる。とても納得できる進め方の説明でした。自動化導入の企画が立ち上がってもいつの間にか立ち消えてしまうのを見かけます。立ち消えにならない事例として参考になります。自動化できるところ、自動化しないところを見極め、なんでも自動化するわけでないところがミソであると認識しました。
レポート:髙橋 秀治(SCSK株式会社)