開催レポート・詳細版1
特別講演、基調講演、一般発表

特別講演 スマートコンストラクションで実現する
建設産業のデジタルトランスフォーメーション

四家 千佳史 氏
株式会社小松製作所 執行役員 スマートコンストラクション推進本部長
基調講演 新たなイノベーションをもたらすIoTの次なるステップとは
坂村 健 氏
東洋大学 INIAD(情報連携学部) 教授/学部長、工学博士
一般発表

特別講演
スマートコンストラクションで実現する
建設産業のデジタルトランスフォーメーション

四家 千佳史 氏
株式会社小松製作所 執行役員 スマートコンストラクション推進本部長
講演者・四家氏 満員御礼!今年も多くの方にご参加いただきました。

1.建設産業の課題

国内の建設産業では2025年までに技能労働者の4割が離職し、2026年には128万人以上の労働者不足に陥ると言われています。コマツは2013年から、建設産業が直面する課題解決として労働生産性を向上する必要があると考え、ICT建機を開発し市場に投入し、最新の建機とその機能によって、現場の最適化に取り組んで来られました。しかし、施工する土量が正確に解らない、正確な施工計画が作れないなどダンプトラックによる土砂運搬の前後の工程にボトルネックが生じ、ICT建機のみでは建設現場全体の生産性が上がらないという課題を抱えていました。

2.スマートコンストラクション

こうした状況を打開するため、コマツは顧客に提供する価値として、従来の「モノ(建機)」や「モノの機能」から、現況測量や施工図面作成、施工、検査、3次元設計データ化し、「人+ハード+ソフト」の建設生産プロセスという顧客の「コト最適化」へ、見える化することで課題解決を目指す「スマートコンストラクション」のサービスを2015年より開始しました。

3.「モノの価値」から「コトの価値」へ

モノ(建設機械の自動化・高度化)の横軸とコト(施工オペレーションの最適化)の縦軸の2軸で施工のデジタルフォーメーションを実現し、安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場を実現する。部分最適された施工の各プロセスが最新のデジタル技術により「つながる」ことで、安全で生産性が向上するように。高速でリアルタイムにPDCA化された結果、プロセスそのものが変革され施工プロセスの短縮とプロセス関与者の削減へと繋がる。コマツはIoTが目的なのではなくIoTを課題解決の一つの技術として活用されています。

4.LANDLOGプラットフォームとデジタルフォーメーション

建設現場のあらゆるモノからデータを取得・解析する情報基盤「LANDLOG」が立ち上がっており、スマートコンストラクションのオープン化を実現。高精度でリアルタイムにコストと売り上げデータを可視化、課題発見から施工の最適化、タスク作成まで実現する仕組みの提供を開始。すでに41社のパートナーがLANDLOGを利用しています。
日本の多くの製造業に共通する自前主義が強い風土の中、技術を抱え込むのではなく、潜在的な競合に先駆けプラットフォーマーとなり、オープンイノベーションによって業界全体を巻き込んでアイデアを共有、デジタルトランスフォーメーションを実現されています。
日本の労働力不足という問題に直面する中で、現場全体を視野にラストワンマイルに拘り現場に寄り添う課題解決の姿勢を貫くことから、モノからコト最適化へ繋がり全体価値を上げて、安全で生産性の高い未来が拡がっていくのだと思います。
(レポート:大島 弘充 氏)

基調講演
新たなイノベーションをもたらす
IoTの次なるステップとは

坂村 健 氏 東洋大学 INIAD(情報連携学部) 教授/学部長、工学博士  
講演者・坂村氏 満員御礼の会場
IoT(Internet of Things)の先駆けとなる「TRON」の生みの親でもある坂村 健 氏から、IoTを「オープン化」することの意義、またその実現までの課題、IoTで実現される未来について、大変わかりやすくお話しいただきました。聴衆を飽きさせないアップテンポな口調で、はっきりと意見を述べられる坂村氏の講演に、会場中が夢中になりました。

1.IoTの標準化

IoTはここ10年で実用的となり、さまざまな製品が生み出されています。しかしながら日本では事業化が出遅れている現状について、「日本は技術があるのに閉鎖的であった。クローズIoTからオープンIoTの考え方に変えていくべき。」と坂村氏は述べられました。各IoT機器がAPIの仕様を明文化してオープンにしていれば、内容を理解することで他のシステムから連携するためのプログラムを容易に構築でき、単に機器がネットワークにつながっているだけではない、すべてがオープンAPIで連携するIoS(Internet of Services)社会の実現が可能になると提言されました。

2.取り巻く世界の変化

「これからの時代の組み込みで最も重要な質問は『ユーザーはだれか?』ということだ。【使いやすく】とは、【だれ】が使うことなのか?」と問いかけた上で、その【だれか】とは変わっていくものだということ、そして新しい消費者像に対応できなければ衰退する、ということを、日本における若者のテレビ離れや、DX(デジタルトランスフォーメーション)先進都市であるエストニアがどのようにして電子化を実現することができたか、など実例を挙げて解説してくださり、非常に納得感がありました。

3.IoTで実現される未来&教育

講演の後半では、世界最先端のIoTビルであるINIAD(東洋大学情報連携学部)の校舎やINIADとUR都市機構が技術協力した「Open Smart UR」についての映像なども公開いただき、そこにはオープンAPIでコントロールされた世界が広がっていました。プログラミングができないと開けられない「取っ手のないロッカー」を始めとし、最先端の環境を使いこなす学生のみなさんの姿を見て、会場からどよめきが起きていました。
また、API教育などの社会人教育についてもご紹介いただきました。「若かろうと年寄りだろうと馬鹿は馬鹿。年齢は関係ない。ちゃんと勉強しないといけない。30代40代でも、学習する意欲があれば大丈夫。」という坂村氏の言葉は、本シンポジウムから学びやヒントを得ようと熱い思いを持って参加された多くの聴講者の胸に響いたのではないでしょうか。

4.おわりに

坂村氏の熱意が伝わる大変素晴らしい講演で、90分の講演時間があっという間に過ぎました。テクノロジーを学ぶだけでなく、世界の変化や流れを理解することが重要であること、またそれらを理解できるよう学びつつけることの重要性を認識できました。素晴らしいご講演をありがとうございました。
(レポート:平岡 百合子 氏)

一般発表

一般発表の会場の様子、いずれの会場も満席でした。
質疑応答では、会場から多くの質問が寄せられました。
一般発表は9セッションで計28件の発表がありました。
ご発表くださいましたみなさま、ありがとうございました。

セッションA1「レビュー」

プロダクト品質を上げるためにレビューを実施していますが、より良い品質のプロダクトを出荷していきたいと思っています。要求にはないが注意すべき条件、レビュー前にプロダクトの品質を上げる方法のヒントをつかみたくて、このセッションに出席しました。
2019年度 SQiP Best Paper Future Award 受賞

■ A1-1リスクシナリオに繋がるコンテキスト情報を抽出するレビューメタモデルの提案

梅田 浩貴 氏 宇宙航空研究開発機構  
宇宙機システム開発では、コンテキスト情報の抽出や伝達が難しいので、コンテキスト情報に着目した3つのビューを用いたリスクシナリオの作成方法、3つのビューを使ったレビュー技法を提案した発表でした。

■ A1-2「要求にはないが想定しておくべき条件」に着目した設計着手前レビューの提案
-要求仕様の抜け漏れを防ぎ開発の前提条件のちゃぶ台返しによる大幅な手戻りを防止-

村田 努 氏 オムロン ヘルスケア株式会社  
ソフトウェア開発の現場では、発注者から提示された要求のみを仕様に落とすことに注力し、要求を精査するための適切なレビューが実施できていないことが多く、要求にない項目が後工程で必要であることが判明し、大きな手戻りが発生しています。
独自に考案した設計着手前に実施するレビュー手法(NLP法)を使用することで、要求の抜け漏れが洗い出しやすくなりました。それに加え、5W1Hを意識して要求仕様書を読むことで、設計書の質も上がるので、試してみたい手法だと思います。

■ A1-3指摘を前向きに受け止めてもらうためのレビュー手法の提案
-RCS法(レビューコミュニケーションスタイル手法)の提案 -

弦間 健 氏 株式会社インテック  
レビューアの指摘の意図や期待が作成者に伝わらないことがあります。伝わらない根本に、レビューアと作成者が持つ価値観や考え方の違いがあるのではないかと仮定しました。RCS法でレビューア、設計者のタイプを4パターンに分けて、お互いに相手のスタイルを理解することで、レビューの指摘の取り込み漏れを防ぐことができると考えています。取り込み漏れを防げたかの指標として、指摘の納得度を測定すると、現行のやり方22%、RCS法64%でRCS法を使用した方が指摘の納得度が高いという結果となりました。

RCS法で分けた4つのスタイルが、相手に完璧にFITするわけではないので、スタイルを決めつけないで柔軟に対応していくことで、レビュー内容をストレスなく伝える目安として使えると思います。
2019年度 SQiP Best Report Effective Award 受賞

■ A1-4レビュー支援システムを用いた改修起因事故の低減

武井 良太 氏 株式会社日立製作所  
現地でのトラブルの8割が過去に発生した事例に類似しています。過去にはシステム改修のリスクを熟練者が助言してくれていましたが、熟練者の減少と共にノウハウも減少しています。そのため、熟練者のノウハウをレビュー支援システムで代替しようと考えました。レビュー指摘件数が導入前後で3.3倍になったので、現地でのトラブルの削減効果が期待できます。

過去に類似したシステム構築をした経験があるなら、プロダクト品質を上げるために、熟練者のノウハウをシステム化し、レビューに活用していくことは非常に有効だと思います。
(レポート:鈴木 祐司 氏)

セッションA2「自動化」

同じテストを複数回実行することが多くなったので、テストが自動化できれば、テスト工数を大幅に削減できると思い、このセッションを受講しました。

■ A2-1低頻度不具合の再現テストにGUIテスト自動化ツールの導入効果

森 一郎 氏 NECパーソナルコンピュータ株式会社  
不具合検出後に原因調査目的で実施する再現テストにおいて、電源操作などを自動実行できる社内で開発した「Aginger」というツールを使用していますが、テスターによるGUI操作やキーボード入力を受け付けないため、再現テストに多大な工数がかかっていました。キャプチャ&リプレイツールの1つである「eggPlant」を使用して、GUIテストを自動化し、人手で553人Hかかる再現テストを32人Hで完了でき、再現テスト工数を1/17に効率化できました。

GUIテストツールを使い、テストを自動化することで工数を大幅に削減できるところは、非常に参考になると思いました。

■ A2-2動画によるモバイルゲームのE2E 自動テストの結果の可視化

平岡 忠志 氏 株式会社バンダイナムコスタジオ  
モバイル端末ゲームの開発においてEnd to Endテスト(以下、E2Eテスト)の自動化に取り組んでいますが、1回のテストに10分以上もかかる長編テストになるため、テストケースの記述にコストがかかってしまい、テスト結果は外乱の影響を受けやすく不安定で失敗の原因分析が必要になります。端末の実行画面を動画として保存し、そこにログ情報を字幕として重ねることで、テスト実行時に端末の処理内容とテストスクリプトの処理内容が見えることになり、自動テストを改善できました。

ログ情報を字幕として重ねることで端末の処理内容とテストスクリプトの処理内容の両方を見えるようにしたことは、テスト結果が明確になり、効率的なテストができるため、良いアイデアだと思います。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:自動化に成功したテストは全体で何割ぐらいですか?
A1:自動化したのは、E2Eテストだけです。テスト時間が短いテストは自動化を行っていません。
Q2:キーワードは自分で考えてつけていると思いますが、工夫は何かありますか?
A2:キーワードの命名に関しては特に規則は用意していません。
Q3:テストの構成管理はどうしていますか?
A3:新しく処理が追加されるときには、キーワードを追加することで対応しています。バージョン管理システムは使用しています。

■ A2-3RPA開発における工数見積もりと非機能設計の勘所について

長坂 昭彦 氏 フューチャーアーキテクト株式会社  
RPA(Robotic Process Automation)の開発需要は年々増加していますが、開発工数の見積もりにばらつきがある、ロボ品質にばらつきがあるという課題も顕在化してきました。ファンクションポイント法基づいた見積もりを行うことで、見積もり精度が上がり、スケジュール遅延が解消されました。非機能設計ガイドによる設計標準化により、不具合対応に伴う再リリース回数が1ロボあたり0.25回から0.09回に低減しました。

非機能ガイドに沿った設計・実装を行うことにより、リリース前に制約事項をユーザーと共有できるようになるので、RPA開発に非常に有効な施策だと思います。
(レポート:鈴木 祐司 氏)

セッションA3「テスト技法・マネジメント」

2019年度 SQiP Best Paper Effective Award 受賞

■ A3-1派生開発におけるテスト漏れを防止する Difference Statement Coverage 分析法の提案

柏原 一雄 氏 株式会社デンソークリエイト  
ソフトウェアの派生開発にて「仕様と経験をもとにテスト設計レビューを行ったが、変更仕様に対するテスト漏れを見逃してしまった」という経験がある方は少なくないのではないでしょうか。

本発表は、テスト設計レビューでの検出が困難な「変更箇所に対するテスト漏れ」を検出するために考案した手法について、実際のDifference Statement Coverage計測結果やテストケース追加要否の判断の例などを交えた大変実践的な内容となっており、手法の有効性が高いことがよく理解できました。

質疑応答ではツールの市販予定についての質問がありましたが、現時点では市販の予定はないとのことで、「カバレッジ分析ツールの中に機能追加してもらえると、世の中に広まる気がする」と述べられておりました。他にも実践的な質問が多数挙がっており、聴講者の関心の高さを感じました。
2019年度 SQiP Best Paper Effective Award 受賞

■ A3-2SONAR Testing 効率と客観性を両立した新たなテスト手法

熊川 一平 氏 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ  
探索的テストの効率とスクリプトテストの持つ客観性を両立した新たなテスト手法「SONAR Testing」について発表いただきました。私自身も現場で探索的テストを行う際、テストの網羅性の説明やテストした内容のログの残し方については改善の余地を感じていたので、大変興味深い発表でした。

発表ではツールを使用したデモを実施していただき、画面部品の操作カバレッジや実行時のキャプチャをどのように確認できるか、操作内容から画面遷移図などを作成してどのように可視化されるか、などを見せていただきました。「探索的テストのように実行しながら、どのように客観性を確保するのか」というポイントが、とても理解しやすい発表でした。
今後について、発表者からはテスト中に取得できる情報の利活用をしていきたいなどのコメントがあり、SONAR Testingの様々な発展が期待されます。

■ A3-3Web/モバイル・アプリケーション開発における定量的なテストマネージメントに向けた取り組み

芹沢 憲二 氏 株式会社ディー・エヌ・エー  
複数の事業・サービスに対応するチームを抱える比較的大規模な組織において、組織全体の見通しを向上させた取り組みについてご紹介いただきました。

「テストプロセスの共通化を試みたが、実際の現場で定着させられなかった」というような経験のある方もいるのではないかと思いますが、発表者の組織では各チームの現状のプロセスに対してPFDを用いて可視化し、それらをベースに標準テストプロセスを整えるボトムアップのやり方をしたことで、現場にスムーズに導入ができたとのことでした。また、各チームで収集の目的が曖昧になっていたメトリクスについても、目的を整理後、GQMを用いて必要なメトリクスを特定し、現在は再定義したメトリクスでの実績値の収集・参照までができるようになったという流れを、実例を交えながらご説明いただき、改善を進めていく様子が大変わかりやすかったです。

同様の悩みを抱える聴講者にとって、この取り組みのノウハウは良い参考となったのではないでしょうか。メトリクスの実績値の活用についても検討しているとのことでしたので、どのように発展していくのか気になるところです。
(レポート:平岡 百合子 氏)

セッションB1「品質評価・分析」

■ B1-1新技術を伴う開発における設計情報観点の蓄積および設計品質を含む進捗管理手法

松井 崇 氏 株式会社日立製作所  
この発表は、新技術を活用したシステムを設計する場合に、確立された設計様式を利用するプロジェクトと比べて設計情報が漏れる可能性が高くなるという課題の解として、Quality Design Balloon(QDB)を考案され、設計情報の十分性をスコア化することで設計品質を含む進捗をシンプルな仕組みと運用手順で評価できるというものでした。

QDBは設計書に記載されている設計情報の充足度に加え、設計時のレビュー指摘や未解決懸案を監視・分析することで、設計情報の計画時からの抜け漏れを検知し、全体の設計情報量に対してフィードバックすることで設計品質を加味した設計進捗を導出するというものです。設計書をバルーンと見立てると、空気(設計情報)を補充(補完)しながらバルーンを膨らませ(設計品質を高め)、かつバルーンの大きさとポンプからの空気流入(進捗)を可視化することができるイメージを重ねて名づけられています。

会場からは、「充足率を進捗管理する場合に、レビューア側のレベルやスキルによるブレが生じないか、有識者やベテランが居ない場合の施策はあるのか」との質問がありました。そうした場合は他プロジェクトから一時的に有識者を呼び技術レベルの担保をとるようにしている、とのことでした。
2019年度 SQiP Best Presentation Award 受賞

■ B1-2基盤構築プロジェクトにおける定量的品質評価方法の提案

藤井 俊久 氏 株式会社日立ソリューションズ  
この発表は、IT設備を準備する基盤構築プロジェクトの規模を効果的に導出する方法についての提案です。確かに、ソフトウェア開発プロジェクトの規模はLOC法やFP法によって導出され、その品質指標の精度が高くなる一方で、基盤構築プロジェクトはメトリクスが確立されておらず、定量的に品質を評価するための指標が無いという課題があります。

その課題に対して、基盤構築プロジェクトのメトリクス収集から始まり、統計解析による「構築スケール」算出式を考案、その品質指標の有意性を確認したというものです。基盤構築プロジェクトに限らず、社内開発の品質指標を定義する上で悩まれている聴講者には興味深いセッションだったと思います。

会場からは、相関性を導き出す上で対象とするメトリクスの絞り込み方法や、工数見積もりへの発展の考察、定性的品質の判断基準など、指標値の妥当性や応用にまで話題が及び議論となりました。今後の研究の拡がりが期待されます。

■ B1-3ODC属性を軸とした欠陥分析パターンの案出と分析作業の標準化

小島 義也 氏 エプソンアヴァシス株式会社  
この発表は、ソフトウェア開発における欠陥分析作業について、具体的な作業手順やその内容が標準化されておらず、人依存でレベルがまちまちになっている現状の課題に対して、ODC属性(Orthogonal Defect Classification,直行欠陥分類)を用いた欠陥分析パターンを案出し、欠陥分析作業を標準化することで、分析レベルの一定化や作業の効率化を図ることと目的とした改善作業を提案するというものです。

ODC分析では、定量的分析と定性的分析の両方の性質を併せ持つ欠陥分析手法で、8つの属性を欠陥に当てはめタグ付けし分析します。欠陥分析作業を標準化することでの定量的効果として分析・レポート作成作業工数の20%削減や対策検討会議時間1/6削減、定性的効果として比較的経験の浅い開発者でも一定レベルのレポートが作成できる様になるなど、標準化による恩恵は大変大きいものがあります。欠陥分析のばらつきにより効率的に有効な施策が打てない、欠陥分析できる人材育成に悩まれている聴講者には興味深いセッションだったと思います。

会場からは、タグの具体的な割り付け方法や現場教育に向けてのツール有無の相談など、導入に向けての障壁を下げるべく現場視点での具体的な施策の質問が多く出ていたのが特徴で、欠陥分析をシステマティックに運用できない現場の悩みから、ODC分析を適用し現場改善に役立ててみたい との生産性向上に向けた期待の高まりを感じました。

■ B1-4セーフティ&セキュリティ開発におけるSTAMP/STPAの有効性検証

西澤 賢一 氏 GEヘルスケア・ジャパン株式会社  
この発表は、昨年度がセーフティ&セキュリティ開発のバランスの取れた開発方法論としてSTAMP/STPAにSTRIDEのヒントワードを拡張する手法の提案だったのに加え、同手法を用いた場合と用いない場合でリスク分析に差異があるかを検証し、改めて同手法の有効性が再確認できたとの提案でした。

IoTによってモノとモノがつながる時代の信頼性と安全性を確保することは、モノを売るだけでなく、時代が求めるコトづくり力を向上・強化する上で企業生命を左右する喫緊の課題だと考えます。取返しのつかない事故を未然防止するためにSTAMP/STPAを用いることで得られるリスク抽出と分析手法に悩まれている聴講者には興味深いセッションだったと思います。

会場からは、セーフティとセキュリティの線引き方法や、リスク分析の実務経験、リスクの階層化など、現状の課題から今後の展望に向けて具体的な意見が多く出され、時代の変化に敏感に対応し施策を提案する本研究に対し、その関心と期待の高さが伺えました。
(レポート:大島 弘充 氏)

セッションB2「利用時の品質と製品品質」

顧客満足度の向上を実現するためにソフトウェアの利用時品質をどのように作りこんでいくのかという点について、そのアプローチの仕方に関する知見を得たいと思い聴講させていただきました。

■ B2-1顧客のビジネスリソースを考慮した仕様の決定方法の提案

小笠原 勝 氏 GEヘルスケア・ジャパン株式会社  
多くの開発現場が頭を悩ます顧客要求を十分満たすことと自社コストの両立がテーマの経験発表でした。医療機器へのサイバーセキュリティ対応において、医療現場のビジネス環境に配慮しなければユーザーの使用性に影響を及ぼす場合があるということから、開発者が顧客目線に立った仕様決定ができるアプローチの提案をされました。

開発現場だけで仕様決定をすると、ユーザー置き去りの仕様になり、リリース後に問題になることが多くあります。顧客満足を求めつつ効率的な開発を目指すというアプローチは顧客満足を求めすぎるあまり盲目的になっている部分への気づきを得られるものでした。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q:医療機器の導入において意思決定は事務方がするため、エンドユーザーの声は反映されにくい可能性があると思いますが、どのような配慮をされて提案されていますか? A:医療現場からの提案で機器導入に至ることが多いので、エンドユーザーの声も反映されて導入が決定していると考えます。提案の際は競合他社製品との差別化を意識した提案を行います。
2019年度 SQiP Best Report Future Award 受賞

■ B2-2視線検知技術を活用したUX評価の取り組み
~可視化された視線データに基づく問題分析・改善提案により製品開発を促進~

杉木 幸洋 氏 富士通株式会社  
視線検知技術を活用した先進的なUX評価手法のご紹介でした。私自身、ユーザビリティテストの経験があり、ユーザーの体験を観察し、ヒアリングすることで改善点を見つけられるという有効性を理解しておりましたが、その一歩先を行く手法に目からウロコでした。

ユーザーの体験をデータ化することにより開発者に納得感のある改修ができることは開発者にとっても有効な評価手法であると思いました。今後、操作中の満足度を可視化・分析する取組を進められるということでしたので、更に進化した手法の提案が今から待ち遠しい発表でした。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q:敢えてアイトラッキングに着目した理由はなぜですか?
A:様々な評価手法はありますが、画面上でどこに問題があるのかを示すことで開発者に修正箇所を理解させることを目的としたためです。

■ B2-3System & Softwareに対する品質確保におけるシステム検証技術の提案

原田 知拡 氏 富士通株式会社  
AI/IoT活用で必ず発生する外部から調達したシステムと組み合わせる開発の品質をどのように容易に確保するかということをテーマとした発表でした。調達開発においては、調達品の品質がブラックボックスであることからシステム分析表という品質特性別に要件を満たしているかを確認できるツールを使用しテストを行うことで利用時の品質及び製品品質を担保するというアプローチでした。

聴講者からの質問にもありましたが、調達開発だけでなく、自社開発に応用して使用できるアプローチになるのではないかという希望を持てる発表でした。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q:完成度があがってきたら自社開発にも適用することで洗練されたものになるのではないでしょうか?
A:要件として気づいていない観点に気づけるという点で有効かもしれません。
(レポート:岡本 泰尚 氏(株式会社モリサワ))

セッションB3「AI、IoT」

昨今、猫も杓子もAI、IoTという時流を感じます。しかし、AI、IoTには厳密な定義がなく、組織内で解釈を統一しないまま、AI、IoTに関する取り組みを行っているケースも少なくないのでは、とも思います。今回の発表者の方々が、AI、IoTをどのように解釈され、どのような取組みを行われたのか、大変興味深く拝聴いたしました。

■ B3-1AI搭載ソフトウェアの開発プロジェクトにおける品質確保

今谷 恵理 氏 株式会社日立製作所  
今回の発表内容は、開発プロセスの確認による間接的な品質確保に関するご紹介でした。確認観点として、ウォーターフォール式のWBSをベースに、機械学習での注意点を整理したチェックリストを利用されていました。
機械学習の品質確保と聞くと、「従来の手法を一切捨て去り、まったく新しい何かに取り組まなければならない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の発表を拝聴し、長年蓄積された知識・ノウハウを基に、社内外の情報源を用いて、新たな知識・ノウハウを創造する、いわゆる組織学習であることに変わりはないと感じました。一方、機械学習特有の注意点については、目新しさを感じました。
また、今回の取組みにおける品質は「テストデータの精度」、スコープは「広義のAI」であることを明確にされていました。これらの曖昧となりがちな概念に対し、ステークホルダー間で共通認識を図ったことも成功要因だったように思いました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:「メタモルフィック検査」とは何か?また、必要に応じて実施するとのことだが、実施基準は?
A1:画像処理系のAIに使うことが多く、反転やノイズ加工等を行った画像を用いた検査である。実施基準は、顧客がソフトウェアをどのように使うかによる。例えば、AIの出力結果を参考程度に使うのであれば不要、AIの出力結果を直に使った処理を行うのであれば必要、といった判断をする。
Q2:「教師あり学習」を前提としているが、「教師なし学習」を前提とした取組みはされているのか?
A2:現時点では未着手だが、今後取り組みたい。
Q3:「AIをテストするAI」についてどう思うか?
A3:発想は耳にするが、現実に即しているか何とも言えない。また、ビジネス上のニーズがあるかも不明である。
Q4:QA4AI(AIプロダクト品質保証)コンソーシアムが策定した「AIプロダクト品質保証ガイドライン」は参照されたか?
A4:当該ガイドライン発行前であったため、今回の取組みでは参照していない。但し、現時点で内容の重複や祖語があることは認識している。

■ B3-2為替レート予測における機械学習システムのモニタリング手法の検討

北野 健太 氏 株式会社日本総合研究所  
今回の発表内容は、為替レートを予測する機械学習システムのモニタリング手法に関するご紹介でした。まず、機械学習モデルが得意とする(正解率の期待値が高い)入力データを特定し、監視基準を作成していました。次に、監視基準を用いて、本番データから得意な入力データを選別していました。そして、選別された得意な入力データのみ後続処理を行っていました。
近年の人材マネジメントにおいて、「強みを活かす」ことが重視されていると思います。人材と機械学習モデルは全くの別物ですが、人材の強味を活かすことと、今回の事例における「得意な入力データに注目する」アプローチに相通じるものを感じました。もし、従来のような問題解決・原因分析を重視する方針であったなら、不得意な入力データの正解率を上げるアプローチになっていたのかもしれないと思いました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:収益性ではケース3・4が高い一方、正解率ではケース1~3で大差ない。今後の狙いは、収益性と正解率のどちらか?
A1:収益性の向上を狙いたい。
執筆者補足:この質疑応答を聞き、改めて、研究開発活動と企業の目的との整合が重要であると感じました。
Q2:正解率と収益性との間には相関がないように見えるが、なぜか?
A2:為替の上下変動を予測しているが、変動幅をモニタリングしていないためである。

■ B3-3IoTクラウド向けのセキュリティ品質向上のための品質要件の体系化の取り組み

奥村 聡司 氏 株式会社富士通ゼネラル  
今回の発表は、IoT製品(本事例では、ルームエアコン)向けセキュリティ対策の具体化に関するご紹介でした。対策は「セキュリティ要件リスト」としてまとめられ、調達時の要件提示、設計時の仕様確認、テスト時の検証に利用されていました。
要件リスト作成にあたり、セキュリティ項目をツリー構造で分類・細分化されていることから、ロジカルシンキングを根底とされているように見えました。ここで、その他の思考法を補完的に使った場合、新たなセキュリティ対策が得られる可能性もあると思いました(対策を増やすことが、必ずしも良いとは限らないでしょうが…)。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:IPA以外の組織が提供するコンテンツも参考にしたか?
A1:特にない。今回の取組み以降に公開されたコンテンツについては、今後追記したい。
Q2:「セキュリティ要件リスト」の全項目(156項目)確認に要する時間はどのくらいか?また、確認の効果はどうだったか?
A2:現時点では運用前であるため、確認時間・効果は今後測定する。
Q3:エアコン(今回の対象システム)に特化した留意点はあるか?
A3:特にないが、逆に、類似した製品にも応用できると思う。
Q4:エアコンに特化した法規制の確認は、どのようにしているか?
A4:今回の取組み開始前に、他のグループにて確認している。
(レポート:楠森 賢佑 氏)

セッションC1「アジャイル開発」

現在、アジャイル開発導入に向け準備中であり品質や進捗をどのように管理しているのか、事例を通じて具体的な説明が伺えると思い参加させていただきました。会場には立ち見の方も出るほど多くの方が参加され、発表者の方の説明を視聴されていました。

■ C1-1QC七つ道具を利用したDevOpsプラクティスの導入による開発とテストの生産性改善

荻野 恒太郎 氏 楽天株式会社  
アジャイル開発でQC七つ道具をどのように活用して生産性を向上させたのか興味深く視聴させていただきました。
QC七つ道具を活用して特定した根本原因を解決するために「DevOpsのプラクティス」を導入し、一連のプロセスを「自動化」することで、品質と生産性が大きく向上した発表でした。
発表のなかでアジャイル開発は、プロセス品質メトリクスが時系列で手に入るため、グラフや散布図などのQC七つ道具を使うとバグ摘出率や不具合修正日数などの時系列のメトリクスを効果的に分析ができるのでアジャイル開発の現場では活用度が高いことが解りました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q:バグや対応期間が減少しましたがプロセスは変更しなかったのでしょうか。
A:バグが減少したのは環境が必要なときにタイムリーに利用ができた結果であり、プロセスは変更していません。

■ C1-2ウォーターフォール開発からアジャイル開発へシフトしたときに陥りやすい点と得られた知見

下村 哲司 氏 日本電気株式会社  
アジャイル開発の場合、曖昧な部分を残しながら開発に着手するため、進捗を正確に把握することは難しいと感じています。
本発表では、プロジェクトの進捗状況が把握できないこと、プロジェクトの見通しが見えないなどの進捗管理上の問題に対して、見積りに猶予期間を設け、リリースバーンダウンチャートは変化に応じて再描画することで進捗の精度を向上させる取組みを紹介していただきました。全体SPが変化しても再描画することで予定の残SPと比較できるため進捗が把握できることが解りました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:変更した際には、前のグラフは残したままなのでしょうか。
A1:ツールを利用したので最新のグラフだけになります。出来れば1つ前のグラフがあれば良いと思います。
Q2:仕様追加が発生した場合、全体のSPやスケジュールにはどのように影響するのでしょうか。
A2:入れるのであれば工期を延伸するか、期間厳守であれば機能を削減しました。

■ C1-3品証部門はアジャイル型開発に何ができるか?
~ウォーターフォールからアジャイルへ、既存ルールの異議と意義と~

藤江 祐二 氏 横河電機株式会社  
ウォーターフォール開発の場合、プロセスや基準を規定することで品質の妥当性を判断することができますが、アジャイル開発の場合にはリリースする製品の品質をどのように判断するか悩まれている方も多いのではないでしょうか。

今回の発表では、設計品質の要求を設定し、品質の審査はスプリントレビューに置き換えたり、出荷判定は従来通り品証部門が責任を持つなど、アジャイル開発の部署開発プロセスに「品証担当者」として参加された結果を紹介していただきました。
また、目下構想中とのことですがアジャイル開発のQA標準を検討されているご様子なので、完成後に説明をいただけると開発部門の方や品質保証部門の方には参考になるのではないかと思いました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:実際に経験されてW/Fとアジャイル双方使えるものは何かありましたか。
A1:自動化は双方必要、またテストの観点は同じと思います。
Q2:スプリントレビューの中で品質を見るとありましたが具体的に何をされたのでしょうか。
A2:今回の場合は、テスト計画と結果を確認しました。具体的には、テストケースをどのようにして作ったかの観点で確認しました。

■ C1-4アジャイル開発における段階的品質の積み上げによる品質保証

伊藤 潤平 氏 ウイングアーク1st株式会社  
アジャイル開発ではスプリント毎に品質を確認しリリースの判断を行うのが一般的ですが、本発表では、戦略的テスト計画の作成とフェーズに対するクオリティゲートの設置により、段階的に品質を積み上げていく方法を実際のプロジェクトに適用した結果を紹介していただきました。

本発表で紹介していただいた「戦略的テスト計画」と「フェーズ」の考えには大変興味が湧きました。戦略的なテスト計画のイメージに記載されている「品質目標」と「テストタイプ」そして「フェーズ」の関係からテスト範囲が明確になり品質が向上すると感じました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:フェーズの定義を教えてください。
A1:基本はリリースの単位ですが、ここまでに入れたいとの要望も含めてフェーズを決めていました。
Q2:要求が曖昧なままだと計画を立てづらいが、マスタープランを作成するときにはどのように対応されたのでしょうか。
A2:プロダクトオーナーと話しをしてリリースのイメージを聞き、ここまでに入れたい要求があればそれを考慮しました。
(レポート:石川 亘 氏)

セッションC2「プロセス改善」

開発現場では「標準プロセス」を遵守することが基本であり、また過去から慣れ親しんだ「標準プロセス」を変更することは難しいと感じています。今回の発表では、どのようにしてプロセス改善されたのか興味があり参加させていただきました。

■ C2-1短期での自動車向けECU開発におけるプロセス改善
~ウォーターフォール型とアジャイル型のハイブリッド型開発~

橋本 淳邦 氏 株式会社デンソー  
開発工期が短いプロジェクトを成功に導くために、苦労された経験をお持ちの方も多いと思います。開発工期が短い場合には、リスクを軽減するために従来の慣れた開発プロセスを利用する方が多いのではないでしょうか。しかし、本発表ではウォーターフォール型開発とアジャイル型開発の双方の良さをもとに、ウォーターフォール型開発をベースにしながらアジャイル開発のメリットを活かす「ハイブリッド型開発」といった新たな開発プロセスへ取組んだ結果の発表でした。

具体的には、V字のプロセスをベースにDR(デザインレビュー)実施時には全プロセスを実施し、DR以外のときはV字のいくつかのプロセスを省略することで開発期間の短縮化を図ったことを紹介していただきました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q:顧客へ価値を提供するリリースは何回くらいされたのでしょうか。
A:6月以降の半年間に2週間に1回のペースでリリースしました。

■ C2-2保守作業におけるプロセス点検の改善とその効果
~本格的な事故の撲滅に向けて~

大日方 優子 氏 株式会社日立製作所  
本発表は、システム保守作業における事故を撲滅することを目的に、保守作業のプロセスを点検するための「チェックリスト」の改善に取組まれた発表でした。

チェックリストを作成したときは、チェックリストの目的とチェック項目の内容を理解しているため効果がありますが、障害が発生するとチェック項目が追加され、さらに時間の経過とともに形骸化が始まり効果を継続させることは難しいと感じています。

今回の発表では、チェック項目の記載内容の見直しや判断基準を明確化することで改善前のチェックリストの問題を解決し、さらにチェック項目を取捨選択したことでチェック項目数を大幅に削減する取組みを紹介していただきました。

開発の現場では、チェックリストを利用するケースは多いと思います。チェックリストを形骸化させず、開発現場で継続して効果的に利用するための対応として参考になる取組みと感じました。

会場からは次のような質問が挙がりました。
Q1:発表の中に重要な項目を減らしたとあるが、人が交代したときに問題は起こらないのでしょうか。
A1:重要な項目は教育やルールを徹底することでカバーできると判断しました。
Q2:チェックリストの内容の見直し期間はどれくらいでしょうか。
A2:基本は年に1回ですが、事故があった場合にも見直すことがあります。
(レポート:石川 亘 氏)