[開催レポート 詳細版1]  特別講演・基調講演・企画セッション

基調講演 忘れていませんか?コミュニケーションに係わるヒューマンファクター
~自らエラーをしようと思っている人間はいない!~
塚原 利夫 氏
日本ヒューマンファクター研究所 取締役副所長 兼 教育開発研究室長
特別講演 セブン‐イレブンの総合情報システム
「近くて便利」を支えるシステム構築と品質

粟飯原あいはら 勝胤かつたね
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
取締役執行役員 事業システム企画部 シニアオフィサー 兼 システム管掌
企画セッション パネルディスカッション  IoTはどこまで進んでいるか?
【パネリスト】
伊藤 公祐 氏 一般社団法人 重要生活機器連携セキュリティ協議会
鹿妻 洋之 氏 一般社団法人 電子情報技術産業協会
柘植  晃 氏 YRP研究開発推進協会 WSN協議会
村上 隆史 氏 一般社団法人 エコーネットコンソーシアム
吉府 研治 氏 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会/日本電気株式会社
【モデレータ】
森崎 修司 氏 名古屋大学

基調講演

講演者・塚原氏 満員御礼!今年も多くの方にご参加いただきました

忘れていませんか?コミュニケーションに係わるヒューマンファクター
~自らエラーをしようと思っている人間はいない!~

塚原 利夫 氏 日本ヒューマンファクター研究所 取締役副所長 兼 教育開発研究室長
基調講演では、品質向上になくてはならないコミュニケーションエラー誘発の要因、エラー防止のポイントについて、ヒューマンファクターの視点から多くの事例に基づき、わかりやすくご説明いただきました。「ヒューマンエラーは本来人間が持っている多くの特性の何れかが現れただけである」と提起した上で、ではその特性とはの投げ掛けから紐解いていただきました。

1.ヒューマンファクターとは?

本来人間が持っている多くの特性がヒューマンファクターです。更にこれは、新しく注目されている学問であり実践的学問です。つまり、行動にできて初めて価値のあるものです。人のミスに起因する問題・事故は後を絶たないわけですが、ともすると人為的イコール人の責任にしがちです。しかし、それでは全く意味がありません。なぜならば、それは人間誰でもが持っているものだからです。ですから、一人が注意したところで全く意味がなく、また同じミスを誰かが当たり前に起こすのです。そしてヒューマンファクターの議論は、人為的問題を起因にして議論する事が多いため、負のイメージが強いのですが、本来は「人が持っている素晴らしさを活かす学問」と捉えるべきとの解説をいただきました。
これら人間の行動について理解を深める時、「人間脳⇒心」「動物脳⇒技」「原始脳⇒体」と見なすとわかり易いし、この3脳のバランスが重要であるとの解説がありました。そして負荷が掛かると、動物脳・原始脳が優先されるとの説明もありました。これは心当たりがあるところです。

2.ヒューマンエラーとは?

一言で言うと「目標に対し意図せずに逸脱することになった人間の行動」です。大切なのは「人間の能力にエラーという特性はない事」。つまり、人間の愛すべき一面との理解が必要です。よって、エラーは完全に無くす事はできないし、起こりうるという前提で仕組みを構築する必要があるとの説明がありました。
ここでエラーの2大要因の提起がありました。
  • コミュニケーションのエラー → 航空業界では41%
  • 確認不良 → 航空業界では26%
一般業界ではこの2要因で実に94%を占めるそうです。ソフト開発現場での真の原因分析を振り返ると、十分に納得させられる値ですね。そして、これらが起こる原因はその背景があるのです。例として「似たような名前、呼び方がある。」「共通の用語がない。」「尺度の定義が無い」「複雑で多くの手順の設定」が挙げられました。日常のバグの真因分析でもよく目にするキーワードです。
ここで、名言とも思われる言葉をいただきました。
  • 最良の人間でも最悪の過ちをすることがある。
  • エラーは本質的に善悪で評価されるものでは無い。
これらを前提とした「エラーを誘発しない設計」と、「事故が起こる事を前提としその防御を組み込んだ設計」が必要となるわけです。

3.コミュニケーションとは

一般的には意思を伝達すると解釈しますが、「分かち合うこと」に由来するそうです。つまり、「伝達しあう」との解釈が語源に近いですね。更にその目的は、「相手に対して行動をさせる事」です。単に伝えるに留まらず、相手が想定通りに行動して初めてコミュニケーションと呼べるわけです。

4.コミュニケーションの技術

重要なのは、「カンバセイションは会話の融通性の概念だが、コミュニケーションは相手に正しく行動させる事が目的であり、学ばねば身につかない」との説明がありました。更にコミュニケーションの要素の紹介がありました。
「状況を簡潔に伝える」「背景を伝える」「評価し、問題点とその考えを伝える」「提案し依頼する」そしてこれを実施するときに大事なのは、相手が知りたいことを事前に準備しておいて伝える事。つまり、実際に伝える行為の前にコミュニケーションの成否は決まっていると理解しました。

5.まとめ

ソフトウェア開発におけるバグ混入原因の分析をすると、毎回同じ様な要因が見当たります。そして、人為的ミスとして片付ける事が多くあり、悲しい事にこれを毎回繰り返している事が散見されます。その要因として、会話、ドキュメンテーションを含むコミュニケーションエラーに起因する事を改めて認識すると共に、これらに対し精神論的な意識付けに留まらず、コミュニケーション技術として、教育による改善が必要である事を重く受け止めた内容でした。
レポート:田村 善嗣 氏(NTTコムウェア株式会社)

特別講演

講演者・粟飯原氏 質疑応答・会場から多くの質問が寄せられました

セブン‐イレブンの総合情報システム
「近くて便利」を支えるシステム構築と品質

粟飯原あいはら 勝胤かつたね
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
取締役執行役員 事業システム企画部 シニアオフィサー 兼 システム管掌

コンビニ業界トップのセブンイレブンの情報量

店舗数が19,638店舗、1店舗売上額が、66万円/1日、1日平均客数が1,057人、平均客単価が621円などです。1年間で世界人口に匹敵する75億人の来店があり、公共料金などの決済でも5億件/年以上のおおきな情報です。情報システムはあって当たり前でなければ仕事ができない。

情報処理スピード感

この2万もの店舗からの発注データは、発注締め切りから10分後には集計を完了し、各メーカーに発注データを提示している。毎日の発注なので遅れは許されない。メーカー側の作業が、物流が間に合わなくなる。このような事の実現も、セブンイレブンのスピード感と工夫が感じられました。

食材表示サービスを開発中

食品をスマホで写すと使用材料が表示されるものです。これで、アレルギー物質や、外国人で宗教上食べられないものなどが入っていない事が確認できます。当然多国語対応です。普通に写真をとり画像認識でもいけそうだが、実際には蛍光灯の光により認識ができずだめらしい。商品の前面のバーコードは却下。ロゴの中にバーコードを潜ませ、それを読み取る技術を採用します。

セブンイレブンにおけるシステムのつくり方

お客様提供サービスをビジネスにする為にシステムが存在し、そのシステム要件を書くのが部員のミッションです。ビジネスモデル、サービスモデルを理解し、その橋渡しとなるシステムモデルを考え、更にその全体を行き来しながら、レベルアップしていきます。システム要員は営業経験者が多く、部門トップも含め大勢いるそうです。ビジネスを知っている者がシステムをつくるべきという思想でしょうか。

モチベーション

モチベーション維持は難しい。これは人との関わりにおけるものでした。他部署から信頼され、相談される様になりなさい。自分達システム部員の役割を定義していました。

セブンイレブンの脅威は

アマゾンの小売りへの進出を将来的な脅威と捉えていました。異次元からの競合企業の進出であり、今後のデジタル社会への転換を捉えているところが、現実的な話として聞いたのは初めてでした。

バッテリー設置に驚き

セブンイレブンのシステムの話を聞き、情報規模の大きさにびっくりし、社会貢献も兼ねて災害時の被害状況把握を進めている事を知りました。特にコンビニ各店にて2時間分のバッテリーを持っていることはさらに驚きました。聞けば冷蔵庫言々として必要なのだそうです。
レポート:岩佐 賢 氏

企画セッション

パネルディスカッション・
左から 森崎氏 柘植氏 村上氏 鹿妻氏 伊藤氏 吉府氏
企画セッション E2  パネルディスカッション

IoTはどこまで進んでいるか?

【パネリスト】
伊藤 公祐 氏 一般社団法人 重要生活機器連携セキュリティ協議会
鹿妻 洋之 氏 一般社団法人 電子情報技術産業協会
柘植  晃 氏 YRP研究開発推進協会 WSN協議会
村上 隆史 氏 一般社団法人 エコーネットコンソーシアム
吉府 研治 氏 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会/日本電気株式会社
【モデレータ】
森崎 修司 氏名古屋大学
巷に広がりを見せるIoT。IoTの最新動向がどうなっているのか、業界人ならずとも気にかかるテーマです。IoTとして新たに発展していく分野は何なのか。そのヒントを期待した人も多かったのではないでしょうか。会場には多くの聴講者が集まり、このテーマへの関心の高さがうかがえました。
パネリストには、IPA ソフトウェア高信頼化推進委員会のIoT 高信頼化機能検討ワーキンググループのメンバーが迎えられました。まずは、パネリストのみなさんが得意とするレイヤについて自己紹介を含めて説明され、IoTを構成する知識分野毎の現状などを聴講者と共有したうえで、ディスカッションが始まりました。議題には、会場で募集したものも2つ取り上げられました。以下に発言の一部をご紹介しましょう。

議題1:IoT時代の品質と品質において標準が担う役割は?

柘植氏 品質の定義が難しい。(適用範囲が広いため)ひとつの標準に収まらない。
村上氏 「人に迷惑をかけないこと」も品質標準の要素になる。
鹿妻氏 製品の耐用年数によっては、ライフサイクルの初期と終盤で標準とされるものが変化している可能性がある。そのような事を含め教育が必要と考えている。
伊藤氏 セキュリティを品質標準に組み込んでおく必要がある。

議題2:IoTは社会の変革につながるか?(会場からの質問)

柘植氏 センサー情報を欲しい人がもらう形で変革がすすむ。例えば、CROWD情報(人々の行いにまつわる情報)もセンサー情報になり、様々なサービスに発展しうる。
伊藤氏 様々なセンサー情報を活用し易くなっている。ビジネスセンスを持っている人が、変革を担っていく。
鹿妻氏 サービスを提供する側がイニシアチブをとる。サービスに必要なセンサー情報を得ようとする形になる。
吉府氏 IoTは環境を提供し、活用は人が知恵を絞っていく。

議題3:IoTにおいてはテストで検証する項目が増大すると思われる。パネリストの方の見解は?(会場からの質問)

柘植氏 サービスの仕様情報などをOPENにして、そのサービスに係るたくさんの人が、テストに参加する形が考えられる。そのためのテスト項目のレベル分けがすすんでいく。
村上氏 検証項目が多くなると、いろんな人が協力し合える態勢造りが必要となる。
鹿妻氏 センサー情報となるデータについて、信頼性を損なう要素の除去も考慮に入れる必要がある。

当セッションを通じ、IoTはアイディア(サービス)次第でどんどん広がっていくものと改めて認識しました。レイヤ毎の説明の中で、センサー情報の信頼性に関する課題やセキュリティ上の課題などの紹介がありました。それらの課題は、サービス毎に特性が異なることを考慮して解決する必要があり、特性が多様であるがゆえ、ソフトウェア品質の観点で標準化を難しくしていることが分かりました。聴講者に、このような気付きを与えてくれた良いセッションだったと思います。SQuBOK V3にも、これらの観点が反映されることを期待したいと思います。
レポート:上田 俊昭 氏