2018Award受賞記念講演会 講演テーマ・講演者紹介

受賞講演1: SQiP Best Report Future Award 受賞

UIテストの所要時間を10分の1に短縮する取り組み
~ラズベリーパイのクラスターで並列実行~

折田 武己 氏
折田 武己 氏
レバテック株式会社 ITソリューション事業部 専属ビジネスパートナー

概要

Selenium等のミドルウェアが整備されたこともあり、WebアプリケーションのUIテストを自動化する事例も増えてきた。しかし、自動テストの開発資産が拡充されるのに比例し、その実行に要する 時間は増大する一方である。主要なWebブラウザーはヘッドレスモードを搭載しているが、膨大なテストケースの前では「焼け石に水」。UIテストの所要時間を大幅に短縮するには、複数のPCにテストケースを分散するのが最 も効果的である。
そこで注目されるのがラズベリーパイである。インテルのプロセッサを搭載したPCに比べると、スペック的にはだいぶ見劣りするものの、テストクライアントとしての性能は十分である。足りていないのは、(CPUパワーではなく)クライアントの数だからである。
ラズベリーパイは、Ubuntuなどのディストリビューションが利用できるLinux PCである。Linuxのソフトウェア資産をそのまま継承できるため、Dockerコンテナを稼働させることも可能である。ラ ズベリーパイを8台、16台、32台とクラスタリングすることで、数世代前のスパコンに匹敵する計算能力を手にすることができる。
ラズベリーパイのクラスターでUIテストを並列実行するには、自動テストの開発資産についても根本的な見直しが必要になる。本発表では、クラスター構築のノウハウやUIテストを並列実行するための実践的なテクニックを紹介する。

経歴

これまで様々な開発プロジェクトに携わってきたが、どの現場でも直面する課題がソフトウェアテストの効率化である。空き時間を使って、ハードウェアとソフトウェアの両面からそのカイゼン作業に取り組んでいる。

その他

CEDEC 2017 エンジニアリング部門 優秀賞受賞
受賞講演2: SQiP Best Report Future Award 受賞

アジャイル開発における利用者価値が高いソフトウェアの
リリーススピード向上に向けた取組み

酒井 響平 氏
酒井 響平 氏
富士通株式会社 共通ソフトウェア開発技術本部

概要

ソフトウェアを短サイクルでリリースしフィードバックを受け改良を加えていくアジャイル開発プロセスを適用した開発では、スプリントで作り込んだ機能の利用者視点での評価は次のスプリントの期間に並行して行われ、そこで不具合が検出された場合にはさらに後続のスプリントで修正が行われている。このことにより、利用者にとって価値が高いソフトウェアのリリーススピードが期待したほど上がらないという問題があった。今回、ソフトウェアの利用時品質を定量的に表現した指標であるUXメトリクスという考え方を導入し、開発スプリントの開始時にUX評価シナリオを作成するとともに、シナリオに対してUXメトリクスの目標値を設定し、開発スプリント内で作り込んだ機能のUXを同一スプリント内で評価・フィードバックする技法を考案した。

本報告では、UXメトリクスを用いた開発スプリント内でのUXの作り込みの概要と、それを実際のソフトウェア開発プロジェクトの現場で適用した際の成果と知見を報告する。

経歴

2016年、富士通株式会社入社。以降、ミドルウェア製品のUX評価、アジャイル開発支援、アジャイル開発基盤の開発業務に従事。
受賞講演3: SQiP Best Paper Future Award 受賞

GSN及びESDモデルを用いたソフトウェアFMEAの提案

梅田 浩貴 氏
梅田 浩貴 氏
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 研究開発部門 第三研究ユニット 主任研究員

概要

JAXAでは、新規のシステムを開発する際、ソフトウェアの要求定義や設計段階で、要求の抽出や設計のレビュー、試験ケースの網羅性向上、運用への制約を抽出するためにFMEA(故障モードと影響解析)を行っている。FMEAの効果を向上させるためには、一般的に「故障モード」を如何に網羅的に導出するかと、システムへの影響が大きい「故障」を洗い出せるかが重要である。一方、ソフトウェアの製品としての特性からFMEAを適用する際、下記の課題が発生していた。
  • 課題①:
    ソフトウェアへFMEAを適用する単位は抽象的なアイテムになるため、ソフトウェアの「故障(求められる機能を遂行できない)」を発想する難易度が高い。
  • 課題②:
    ソフトウェアは、システムの利用や運用状況を分析して製作されるため、アイテム(機能等)の特性に合わせた上位システムへの影響を分析する難易度が高い。
本発表では、分析フレームワークで技術者の思考を段階的に誘導し、GSN(Goal Structuring Notation)とESD(Event Sequence Diagram)のビューによるレビューを行う方法で解決を試みた結果を説明する。
また、提案する方法は、ソフトウェアに関連する異常シナリオの発想法であり、その後の発展について説明する。

経歴

機構内全社情報システムインフラ設計・開発等を経て
現在、宇宙機搭載ソフトウェアの高信頼化技術研究開発に従事。

研究論文や著書

  • IV&Vガイドブック
  • 梅田, 神戸, 植田, 竹村, 佐々木, GSNを活用した技術者能力計測手法の提案, ソフトウェア品質シンポジウム2016
  • 大久保, 梅田, 川口, 神戸, 植田, Transition of Independent Verification and Validation Activity and Refined Concept at the Mature Age, ISTS2017
  • 柿本, 佐々木, 梅田, 植田, IV&V Case: Empirical Study of Software Independent Verification and Validation based on Safety Case, ISSRE2017
受賞講演4: SQiP Best Presentation Award 受賞

作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案

湯川 健 氏
湯川 健 氏
ソーバル株式会社 デジタルプロダクト部 品質評価ユニット 主任

概要

レビューを実施しても、重大欠陥の検出漏れは後を絶たない。検出漏れが発生する要因の一つとして、欠陥の検出難易度が高いことが挙げられる。検出難易度が高い欠陥とは、レビュー対象である成果物から記載すべき内容が抜け落ちている欠陥、将来の運用や保守性について考慮が漏れている欠陥が該当する。すなわち、検出難易度の高い欠陥は、成果物の記載内容のみをレビューしていては検出できない。
そこで我々は、作成者に掛かる認知バイアスに着目した。認知バイアスとは、人の思考を無意識に歪め、誘導するものである。作成者が認知バイアスに掛かることで、ヒューマンエラーが引き起こされる。その結果、成果物に必要な情報が記載されず、検出難易度の高い欠陥を混入してしまうのである。

本発表では、認知バイアスに着目したレビュー手法として、D2BOCs(Defect Detection from Background of Cognitive bias)法を提案する。D2BOCs法の特徴は以下の二つである。
  • 認知バイアスを推測し、欠陥の傾向を特定する
  • 高リスクの範囲を重点的にレビューする
効果検証により、重大欠陥・検出難易度の高い欠陥の検出にD2BOCs法が有効であることを確認できた。

経歴

2007年 ソーバル株式会社入社。 組み込み、Web、スマートフォンアプリケーションの品質保証、品質評価に従事。
2016年度、2017年度 ソフトウェア品質管理研究会(SQiP研究会)「ソフトウェアレビュー」に参加。

研究論文や著書

  • レビュー会議の可視化により目的の曖昧さを明確にする手法の提案,ソフトウェア品質シンポジウム2017
  • 作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案,ソフトウェア品質シンポジウム2018
受賞講演5: SQiP Best Report Effective Award 受賞

マルチベンダー構成システムの信頼性向上を目的とした
フェールセーフ設計に対する点検手法
~HAZOPを活用した例外事象を含む応答のモデル化~

相澤 孝一 氏
相澤 孝一 氏
富士通株式会社 品質保証本部

概要

ミッションクリティカルなお客様システムに対して、信頼性を中心とした非機能要件の充足性を向上させるために第三者検証を実施している。従来のシステム点検では、システムを構成するハードウェア、ソフトウェアの製品内部仕様や構造が把握できることを前提とし、製品内部の故障事象を始点とするホワイトボックステストにより、リカバリ設計の漏れが無いことを点検し、システム稼働前に障害を検出、対処を行ってきた。

しかしながら、近年のミッションクリティカルシステムはOSSを含めたマルチベンダー構成が主流となっており、構成する製品の内部仕様の全ては公開されていないことから、ホワイトボックステストは適用出来ず、ブラックボックステストによる点検のみとなる。ブラックボックステストの課題は、業務プロセスの無応答のような、外部仕様として表れない例外事象に対するリカバリ設計の不足、および設計漏れにより発生するトラブルを、システム稼働前の点検で検出、対処することが難しいことである。

この課題に対し、内部仕様が不明確なマルチベンダー構成システムの点検手法として、製品内部仕様として表れる故障事象に着目するのではなく、故障がシステムの業務処理に与える影響とその応答をモデル化し、モデル化した応答に対してシステムが備えるべきリカバリ設計を可視化する「フェールセーフ設計に対する点検手法」を開発した。その点検手法と適用結果について報告する。

経歴

富士通株式会社 品質保証本部にて、お客様システムの第三者検証に従事しており、設計工程での机上点検と、テスト工程での実機検証による、システムの可用性、運用・保守性を中心とした品質確保をミッションとしている。
近年は、システムのマルチベンダー化やクラウド基盤の導入へ対応するため、点検手法の確立、点検範囲の拡大に取り組んでいる。
受賞講演6: SQiP Best Paper Effective Award 受賞

欠陥混入メカニズムの知識を活用したDRBFMの提案

柏原 一雄 氏
柏原 一雄 氏
株式会社デンソークリエイト事業推進部 チーフマネージャ

概要

ベースソフトを部分的にしか理解できていない状況での作業が強いられる派生開発において、変更漏れに分類される欠陥の流出を防止することは重要な課題である。
組織の流出欠陥情報を分析し、派生開発で特定が漏れるソースコードの変更箇所には、次の3つのタイプがあることがわかった。
A) 変更仕様から直接特定可能な箇所
B) ソースコードの変化点から直接影響を受ける箇所
C) 設計制約の変化から影響を受ける箇所
C)の「設計制約の変化から影響を受ける箇所」については、変更漏れを防止するための効果的な手法がなく、変更箇所特定漏れにより、欠陥が流出した。この問題は、ベースソフトの調査が、人の知識・経験に依存していることから起きる。

本研究では、「設計制約の変化から影響を受ける箇所」を漏れなく特定するために、ベースソフト調査手法を開発した。提案手法の技術要素として、「欠陥混入メカニズムの知識の表現方法」と「欠陥混入メカニズムの知識を活用したDRBFM実施手順」の2つを定義した。
実験により、提案手法を適用することで、過去に発生した変更箇所の特定漏れが再現しないことを確認した。本手法を実開発に適用することで、派生開発における変更漏れ確実に防止する効果が期待できる。

経歴

2000年 株式会社デンソークリエイト入社。
カーナビゲーションの開発支援ツールの開発、SQA・SEPG・PMOなどを経て、2015年より車載組込みソフトウェア向けの基盤ソフトウェア開発に従事している。

研究論文や著書

  • 効果をもたらす"現場支援"の仕組みの改善(SPI Japan 2014)
  • ソフトウェア欠陥予測アルゴリズム(SQiPシンポジウム2015)
  • 統合テストにおいて影響範囲に対するテスト漏れを防止する「影響波及パス分析法」の提案」(SQiPシンポジウム2017)
  • 欠陥混入メカニズムの知識を活用したDRBFMの提案(SQiPシンポジウム2018)
  • 派生開発における影響分析の自動化に向けた取り組み事例 ~解析指向プログラミングアプローチの考案~(SPI Japan 2018)
基調講演

「真の学び」が未来を拓く~競争力の源泉は人材にあり~

古畑 慶次 氏
古畑 慶次 氏
株式会社デンソー コアスキル開発部 担当課長

概要

インターネット、人工知能がもたらす社会変化は全産業の仕組みを大きく変えつつある。さらに今後、日本では少子化が加速し、産業基盤を大きく揺るがすことは間違いない。この激変の時代を生き抜くため競争力を支える“人材”の育成は、   もはや企業や組織ばかりでなく日本の産業にとって喫緊の課題である。
本講演では、時代背景から人材育成の重要性を説き、“組織の成長”は“人材の成長”であることから、若手・中堅技術者の成長に必要不可欠な「学び」の原点に迫る。さらに、指導者や教育担当者が目指すべき組織での人材育成の考え方と課題を経験から示し、「真の学び」こそが技術者、企業、組織の未来を拓くことを力説する。

経歴

1988年名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程電子機械工学専攻修了、日本電装(株)(現(株)デンソー)入社。デジタル信号処理、音声認識の研究、携帯電話、ナビゲーションシステムの開発に従事。現在は、技術研修所にて高度ソフトウェア専門技術者を育成するカリキュラム開発、講師を担当。また、社内外でソフトウェア開発、マネジメント、問題解決の支援・指導に取り組む。2015年南山大学大学院数理情報研究科数理情報専攻博士後期課程修了。
博士(数理情報学)、産業カウンセラー(JAICO認定)、南山大学客員研究員、大学や企業研修の講師も務める。

研究論文や著書