ソフトウェア品質シンポジウム2018
Award受賞記念講演会

Award受賞記念講演会を開催いたしました。

2019年3月11日(月)に東洋大学・白山キャンパスにおいて、特別企画「SQiP2018Award受賞記念講演会」を開催いたしました。
Award受賞者の皆さまから、ソフトウェア品質を確保するための取り組み、工夫やポイント、自社に取り入れ根付かせるためのヒントについて、ご講演いただき、どちらの講演も活発な質疑応答、意見交換が交わされました。



ご登壇くださいましたAward受賞者の皆さま
左から、折田武己氏、酒井響平氏、梅田浩貴氏、湯川 健氏、柏原一雄氏

続いて、ソフトウェア品質シンポジウム委員会一般投稿推進委員会、株式会社東芝、森俊樹委員長から「シンポジウム発表応募はしてみたいけど、なかなか一歩が踏み出せない」「外部発表の経験を通じて、モチベーションを高め、ひいては技術者のスキルアップ、職場活性化を目指したい」という方々に向け、Award受賞者、上司、先輩の声、応援メッセージなどの紹介も含めて「投稿のおすすめ」がありました。2019年度シンポジウムの発表募集締切は5/9(木)です。ソフトウェア品質を高めるために邁進、活躍されている皆様の工夫や成果を是非ご投稿ください。多くのご投稿をお待ちしております。
※詳細案内ページには、投稿支援資料も掲載しています。



基調講演は、「真の学び」が未来を拓く~競争力の源泉は人材にあり~」と題し、株式会社デンソー古畑氏から、 “組織の成長”は“人材の成長”である、「真の学び」こそが技術者、企業、組織の未来を拓く、など、ご経験に基づき、熱のこもったご講演をいただきました。

森俊樹一般投稿推進委員長 基調講演・古畑慶次氏 交流・名刺交換が
積極的に行われた情報交換会

この度、講演会資料を公開いたしました。
ご講演いただきました皆さま、ご参加くださいました皆さま、この場をもちまして、改めて深くお礼を申し上げます。ありがとうございました。

開催概要

日時 2019年3月11日(月)9:50 ~ 18:00
会場 東洋大学 白山キャンパス 6号館地下1階会場

プログラム

時間内容
9:20~10:00受付
9:50~10:00オープニング
10:00~10:45
受賞講演1: SQiP Best Report Future Award 受賞

UIテストの所要時間を10分の1に短縮する取り組み
~ラズベリーパイのクラスターで並列実行~

折田 武己 氏(レバテック株式会社 ITソリューション事業部 専属ビジネスパートナー)
講演概要:
Selenium等のミドルウェアが整備されたこともあり、WebアプリケーションのUIテストを自動化する事例も増えてきた。しかし、自動テストの開発資産が拡充されるのに比例し、その実行に要する 時間は増大する一方である。主要なWebブラウザーはヘッドレスモードを搭載しているが、膨大なテストケースの前では「焼け石に水」。UIテストの所要時間を大幅に短縮するには、複数のPCにテストケースを分散するのが最 も効果的である。そこで注目されるのがラズベリーパイである。インテルのプロセッサを搭載したPCに比べると、スペック的にはだいぶ見劣りするものの、テストクライアントとしての性能は十分である。足りていないのは、(CPUパワーではなく)クライアントの数だからである。
ラズベリーパイは、Ubuntuなどのディストリビューションが利用できるLinux PCである。Linuxのソフトウェア資産をそのまま継承できるため、Dockerコンテナを稼働させることも可能である。ラ ズベリーパイを8台、16台、32台とクラスタリングすることで、数世代前のスパコンに匹敵する計算能力を手にすることができる。ラズベリーパイのクラスターでUIテストを並列実行するには、自動テストの開発資産についても根本的な見直しが必要になる。
本講演では、クラスター構築のノウハウやUIテストを並列実行するための実践的なテクニックを紹介する。
  講演資料(pdf)
10:45~11:30
受賞講演2: SQiP Best Report Future Award 受賞

アジャイル開発における利用者価値が高いソフトウェアの
リリーススピード向上に向けた取組み

酒井 響平 氏(富士通株式会社 共通ソフトウェア開発技術本部)
講演概要:
ソフトウェアを短サイクルでリリースしフィードバックを受け改良を加えていくアジャイル開発プロセスを適用した開発では、スプリントで作り込んだ機能の利用者視点での評価は次のスプリントの期間に並行して行われ、そこで不具合が検出された場合にはさらに後続のスプリントで修正が行われている。このことにより、利用者にとって価値が高いソフトウェアのリリーススピードが期待したほど上がらないという問題があった。今回、ソフトウェアの利用時品質を定量的に表現した指標であるUXメトリクスという考え方を導入し、開発スプリントの開始時にUX評価シナリオを作成するとともに、シナリオに対してUXメトリクスの目標値を設定し、開発スプリント内で作り込んだ機能のUXを同一スプリント内で評価・フィードバックする技法を考案した。
本講演では、UXメトリクスを用いた開発スプリント内でのUXの作り込みの概要と、それを実際のソフトウェア開発プロジェクトの現場で適用した際の成果と知見を報告する。
  講演資料(pdf)
11:30~12:30昼食・休憩
12:30~13:15
受賞講演3: SQiP Best Paper Future Award 受賞

GSN及びESDモデルを用いたソフトウェアFMEAの提案

梅田 浩貴 氏(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 研究開発部門 第三研究ユニット主任研究員)
講演概要:
JAXAでは、新規のシステムを開発する際、ソフトウェアの要求定義や設計段階で、要求の抽出や設計のレビュー、試験ケースの網羅性向上、運用への制約を抽出するためにFMEA(故障モードと影響解析)を行っている。FMEAの効果を向上させるためには、一般的に「故障モード」を如何に網羅的に導出するかと、システムへの影響が大きい「故障」を洗い出せるかが重要である。一方、ソフトウェアの製品としての特性からFMEAを適用する際、下記の課題が発生していた。

課題①:
ソフトウェアへFMEAを適用する単位は抽象的なアイテムになるため、ソフトウェアの「故障(求められる機能を遂行できない)」を発想する難易度が高い。

課題②:
ソフトウェアは、システムの利用や運用状況を分析して製作されるため、アイテム(機能等)の特性に合わせた上位システムへの影響を分析する難易度が高い。

本講演では、分析フレームワークで技術者の思考を段階的に誘導し、GSN(Goal Structuring Notation)とESD(Event Sequence Diagram)のビューによるレビューを行う方法で解決を試みた結果を説明する。
また、提案する方法は、ソフトウェアに関連する異常シナリオの発想法であり、その後の発展について説明する。
  講演資料(pdf)
13:15~14:00
受賞講演4: SQiP Best Presentation Award 受賞

作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案

湯川 健 氏(ソーバル株式会社 デジタルプロダクト部 品質評価ユニット 主任)
講演概要:
Jレビューを実施しても、重大欠陥の検出漏れは後を絶たない。検出漏れが発生する要因の一つとして、欠陥の検出難易度が高いことが挙げられる。検出難易度が高い欠陥とは、レビュー対象である成果物から記載すべき内容が抜け落ちている欠陥、将来の運用や保守性について考慮が漏れている欠陥が該当する。すなわち、検出難易度の高い欠陥は、成果物の記載内容のみをレビューしていては検出できない。
そこで我々は、作成者に掛かる認知バイアスに着目した。認知バイアスとは、人の思考を無意識に歪め、誘導するものである。作成者が認知バイアスに掛かることで、ヒューマンエラーが引き起こされる。その結果、成果物に必要な情報が記載されず、検出難易度の高い欠陥を混入してしまうのである。
本講演では、認知バイアスに着目したレビュー手法として、D2BOCs(Defect Detection from Background of Cognitive bias)法を提案する。D2BOCs法の特徴は以下の二つである。
認知バイアスを推測し、欠陥の傾向を特定する
高リスクの範囲を重点的にレビューする
効果検証により、重大欠陥・検出難易度の高い欠陥の検出にD2BOCs法が有効であることを確認できた。
  講演資料(pdf)
14:00~14:10休憩
14:10~14:55
受賞講演5: SQiP Best Paper Effective Award 受賞

欠陥混入メカニズムの知識を活用したDRBFMの提案

柏原 一雄 氏(株式会社デンソークリエイト 事業推進部 チーフマネージャ)
講演概要:
ベースソフトを部分的にしか理解できていない状況での作業が強いられる派生開発において、変更漏れに分類される欠陥の流出を防止することは重要な課題である。
組織の流出欠陥情報を分析し、派生開発で特定が漏れるソースコードの変更箇所には、次の3つのタイプがあることがわかった。
A) 変更仕様から直接特定可能な箇所
B) ソースコードの変化点から直接影響を受ける箇所
C) 設計制約の変化から影響を受ける箇所
C)の「設計制約の変化から影響を受ける箇所」については、変更漏れを防止するための効果的な手法がなく、変更箇所特定漏れにより、欠陥が流出した。この問題は、ベースソフトの調査が、人の知識・経験に依存していることから起きる。

本研究では、「設計制約の変化から影響を受ける箇所」を漏れなく特定するために、ベースソフト調査手法を開発した。提案手法の技術要素として、「欠陥混入メカニズムの知識の表現方法」と「欠陥混入メカニズムの知識を活用したDRBFM実施手順」の2つを定義した。
実験により、提案手法を適用することで、過去に発生した変更箇所の特定漏れが再現しないことを確認した。本手法を実開発に適用することで、派生開発における変更漏れ確実に防止する効果が期待できる。
  講演資料(pdf)
14:55~15:25

ソフトウェア品質シンポジウム2019の開催案内と発表募集について
~投稿のおすすめ~

森 俊樹 氏(株式会社東芝/SQiP2019一般投稿推進委員会委員長)
  資料(pdf)
15:25~15:35休憩
15:35~16:45
基調講演

「真の学び」が未来を拓く~競争力の源泉は人材にあり~

古畑 慶次 氏(株式会社デンソー コアスキル開発部 担当課長)
講演概要:
インターネット、人工知能がもたらす社会変化は全産業の仕組みを大きく変えつつある。さらに今後、日本では少子化が加速し、産業基盤を大きく揺るがすことは間違いない。この激変の時代を生き抜くため競争力を支える“人材”の育成は、   もはや企業や組織ばかりでなく日本の産業にとって喫緊の課題である。 本講演では、時代背景から人材育成の重要性を説き、“組織の成長”は“人材の成長”であることから、若手・中堅技術者の成長に必要不可欠な「学び」の原点に迫る。さらに、指導者や教育担当者が目指すべき組織での人材育成の考え方と課題を経験から示し、「真の学び」こそが技術者、企業、組織の未来を拓くことを力説する。
  講演資料(pdf)
17:00~18:00 情報交換会