ソフトウェア品質シンポジウム2019 申込み受付中!

ソフトウェア品質シンポジウム 2015

開催レポート 詳細版2
企画セッション、招待講演、SQiP特別セッション

企画セッション
招待講演 セッションC3
  • 工数入力定着モデルの提案~時間日誌を手に入れる~
    山路 厚 氏 デンソーテクノ(株)
  • 継続的システムテストについての理解を深めるための開発とバグのメトリクスの分析
    荻野 恒太郎 氏 楽天(株)
  • テスト自動化によるテストサイクルの短縮と高速回転を利用した、傾向分析の精度向上の仕組みについて
    永松 康能 氏 テルモ(株)
セッションC4
  • D-Case適用拡大に向けて~アジャイル開発への適用事例~
    森 素子 氏 三菱電機(株)
  • 車載システム製品へのコンカレント開発の適用
    ~コンカレントフィードバック開発方法への発展~
    林 健吾 氏 (株)デンソー
SQiP特別セッション
  • セッションE3
    ソフトウェア品質保証部長の会からの情報発信!
  • セッションE4
    SQiP-WEST 関西ソフトウェア品質保証責任者の会からの情報発信!

企画セッション

セッションD1
ANAのプロセス改革
~旅客サービスを支える大規模ミッション クリティカルシステムの刷新~

金子 肇 氏
全日本空輸(株)
講演者の金子氏 講演の様子
当セッションはタイトル的にも難プロジェクトを伺わせる大変興味深いものでした。聴講者の多くが日頃同社を利用していることもあってか、講演者の熱い講話に聴講者が引き込まれるような熱気を帯びたセッションとなりました。

旅客サービスとは、一例を示すと「旅割」のような航空チケットの予約管理、運行管理などをさします。
2006年から始まったこのプロジェクトは、2013年まで実に7年にも及ぶ長期プロジェクトで、そのような長い期間を要するプロセス改革とは一体どのようなものだったのか。
同社の顧客サービスを担う業務システムは長年汎用機を中心に構築されており、今回のミッションは将来を含めたコストダウン、新サービスの拡充に備え、これをOPEN化するというものでした。従来の開発言語はFortranとアセンブラであり、長年積みましたこれら膨大なソフトウェア資産をJavaに移行するのですが、現行サービスを維持し、エンハンスを継続しながら、6年目には新旧の同期をとり運用を切り替えていくという大変難しいプロジェクトですした。

講演でのエピソードを全ては紹介できませんので、主なキーフレーズに絞ると次のようなものがありました。
  • レガシー技術による制約と将来のプロセス改革のためのOPEN化
  • 1年目で徹底的なリスク分析と計画作り
  • あらゆる予約変更に耐えられることが必須(影響が利用者へ直結)
  • Java資産への年次段階的な仕様の移行
  • 超短時間での本番切替
大規模マイグレーションならではの様々なお話しを、本音を交えて語って頂き、本番切替の際の経営層をはじめ、プロジェクトチーム、現場オペレーションの方々が一丸となって稼働を迎えるくだりでは一種感動を覚えた聴講者も多かったのでは。

OPEN化による成果としては、次の点を強調されていました。
  • 開発効率の改善(技術的な生産性の向上、Fortran技術者の調達など)
  • 保守コストの改善(ハードウェア費用など)
  • 委託先ベンダーの制約がなくなった
これだけでも大きな成果と思われますが、プロセス改革の本丸はこれからなのだそうです。

同規模クラスの同業他社がOPEN化を断念していく中、同社は唯一成功をおさめこれまで手をつけにくかった様々なサービスの企画が現在進行中とのこと。例えばキャビンアテンダントがIPADのような情報端末を持って業務する姿を、わたしたちが当たり前の様に見かける日も近い将来に来るかもしれません。プロセス改革はまだこれからです。

聴講者との質疑では見積もり作業から品質の見極めまで幅広い質問が10数件発言され、聴講者の関心高さが伺えました。その中で、プロジェクトの一番の成功要因はと問われると、「1年目にしっかりと計画づくりを行ったこと」「計画を信じてやるべきことをしっかり実行したこと」「幸運も味方してくれた」と振り返っておられました。

今後同社は新たな旅客サービスをさらに充実させていくことでしょう。そうした新たなプロセス改革についても、是非将来ご講話頂けたらと思います。
(レポート 上田 俊昭)

セッションD2
通信事業システムへのアジャイル開発の適用

荒本 実 氏
KDDI(株)
川上 誠司 氏
KDDI(株)
左から荒本氏、川上氏 講演の様子
通信事業というクリティカルな分野においてアジャイル開発を選択することになった背景および実践状況を丁寧かつ熱くご紹介いただいたセッションとなりました。

1. KDDIの品質に対する取り組みとアジャイル取組の変遷

通信事業主として法務省管轄のクリティカルな事業であることからISO26262を通信事業にテーラリングしたKDDIにおける機能安全の定義のご紹介がありました。上記の宿命を担いつつもCloud&Mobile市場においては技術変化・ユーザニーズ変化共に加速が激しく先読みが容易でない。その為、サービスを作ってお客様を待ち受けるような体制に無理があり、スピードに対応する為にAgileを選択したという経緯のお話がありました。
Agileを選択する際に社内背景となっていた既存状況(企画 < 開発チーム < 運用チーム < SIベンダー < 二次受け開発会社構造の抱える納品ベースの成果物管理)における、スピード的・モチベート的・技術的な低下という現象は多くの企業で共有されている問題であると感じました。

2. 実践プラクティス

スプリント内の活動、一日の活動が具体的にわかるような資料を用意して頂いた上での発表でした(インセプションデッキ、ユーザーストーリーマッピング、スプリント計画、DailyScrum朝会、スプリント開発(ペアプログラム、テスト駆開発とリファクタリング)、スプリント振り返りなど)。パイロットラン的な隣のチームの活動をご紹介頂いているようでAgileということだけでなくとても興味深かったです。
また、ペアプログラミングなどマネジメント側からは工数の無駄のように感じるプロセスも定着しメンバから改善提案が出るステップまで待つ。通信事業という特性上開発コードよりテストコードの方が上回っているというお話。BugFixをスプリント内で行っていること。等々、Agileを業務特性やプロセス改善の視点でテーラリングし取り組んでいる点をご紹介いただき有益でした。

3. 感想

納品ベースで成果物管理を行っている社内プロセスでは失われる物(手に入れられない物)があることを多くの方が認識されていると思います。加えてクリティカルな事業で新たにAgile開発手法を取り入れた登壇者のエネルギーを感じている内にお二人が侍(アジャイルサムライ)に見えて来たのは私だけではないでしょう。
個人的には子育て世代が多く、時間に制約のあるメンバが多い環境の中で仕事をしています。余計な作業を省き効率的に働くイメージを持って業務にあたっておりますが、今回のセッションでキーワードとなっていたLess Mass(余計なものは作らない)が重なりました。今後大切にしたいキーワードと出会えたことも収穫であったセッションとなりました。
(レポート 府川 ひかり ソーバル株式会社)

セッションD3
プロジェクト支援活動の葛藤とやりがい

パネリスト:河野 哲也 氏 (株)日立製作所
      関 将俊 氏 toRuby
      竹下 千晶 氏 (株) デンソークリエイト
      水田 恵子 氏 パナソニック(株)
モデレータ:堀 明広 氏 (株)NTTデータMSE
パネルディスカッションの様子
当セッションは、外部からプロジェクトへの支援を担当するSEの方なら誰でも自問自答したことがあると思われるテーマのパネルディスカッションでした。
パネリストには、実際にプロジェクト支援を行っている立場から、河野氏((株)日立製作所)、竹下氏((株) デンソークリエイト)水田氏(パナソニック(株))の3氏が、より現場に近い立場から著名なプログラマーで本人曰く「プロの無職」関氏(toRuby)が顔を揃え、モデレータにはプロジェクト支援の経験豊かな堀氏((株)NTTデータMSE)が参加し議論がすすめられました。

議論の中から、いくつかポイントをピックアップしてご紹介しましょう。

1.「葛藤」について

  • 竹下氏(SEPGの様な立場で活動している)
    自分が現場の立場にいた時の事を思うと、プロジェクト支援は「嫌われ役」なので最初は嫌だった。「言っても話を聞いてもらえない」、「指導内容をただの手間に思われている」など当時の複雑な心境を吐露して頂きました。
    この状況は、支援体制の工夫や、まず相手の考えを聞くところから始めるよう工夫してくに従い、支援先との関係が良質に変化していったそうです。
  • 水田氏(SEPGとして活動、人と組織を元気にするがモットー)
    支援をしない方がかえって良い結果になったのではないかと思うことがある。でも例え嫌われても指導しなければならない事もある。という思いで事にあたっている。書式など形に囚われたり、在り方を強制することが目的にスリ変わらないよう注意が必要。とのことでした。
  • 河野氏(プロジェクト直下のQAを担当)
    経験的にトップダウンでは上手くいかなかった。業務外で問題意識のある有志による活動が有効だったとのこと。

2.「やりがい」を感じる時とは

  • 竹下氏
    支援した結果、現場が変わった時。感謝された時。相談や支援依頼が来るようになった時。
  • 水田氏
    品質面で人材が育っていると感じた時。現場が活性化し始めた時。
    プロジェクト支援活動の予算が確保できたとき成果を認められていると感じる。
  • 河野氏
    自分の活動が組織に貢献できており、ステークフォルダに貢献できており、自己が成長し、チームが成長している時。
    一生懸命に行動すれば、評価は自ずと周囲の評判となって現れる。(コスト部門だからというようなネガティブな)査定などは気にしない。

3.関氏の客観的な目線より

支援者視点からの発言に対し、関氏からは「現場密着でない支援なってあるの?」「(立場にかかわらず)すべて支援同士みたいなもんだろう」という発言がありました。支援する側、される側を分けた議論がすすむ中、「あるプロジェクトに携わる時、立場に関係なくみんながベストを尽くすものだろう」という当たり前を問いかけたのだと思います。このような目線でプロジェクトの有り様を時々見つめ直す必要があると感じました。

短い時間でしたが、モデレータをはじめ、それぞれの方の組織文化、SEとしての経験年数、品質担当としての経験値がにじみ出た、個性豊かなお話を聞く事ができました。聴講者にとって、プロジェクト支援担当者への理解が深まったセッションだったのではないでしょうか。
(レポート 上田 俊昭)

セッションD4
暗黙知を共有し生き生きとしたチームを作るパタン・ランゲージ

中埜 博 氏 (同)CEST
平鍋 健児 氏 (株)チェンジビジョン
モデレータ:細谷泰夫 氏 三菱電機(株)
中埜先生の講演の様子 パネルディスカッションの様子
他の組織の事例を自組織に取り入れようとしてもうまくいかない。なぜなら各組織のコンテキストは異なり、組織に適した様々な工夫や活動が支えているからである。「パタン・ランゲージ」はそれを乗り越える一助になるのではないかとの示唆をモデレータの細谷氏よりいただきました。

中埜先生が師事された建築家クリストファー・アレグザンダー博士が提唱された「パタン・ランゲージ」について広く深くご紹介いただきました。
パタン・ランゲージは名づけられない質(QWAN)を建築の世界で実践するために提唱されました。公園の中で街や建物、建設に関する253のパタンの一部をご紹介いただきパタン・ランゲージを垣間見ることができました。
パタン・ランゲージは熟練者の暗黙知を共通化、あるいは作ったパタンを組み合わせてStoryにすることができると説明いただいた。

クリストファー・アレグザンダー博士のビデオ・メッセージからは「何をするかは内から染み出てくる美しさに依存する。美しさとは何か?正しさとは何か?をずっと追求してきた。世の中に散らばっている美しさを探してほしい」これが真髄なのだろうと思いました。

平鍋氏より我々の馴染みのある「デザインパターン」がパタン・ランゲージに影響を受けていることを記述方式で説明いただいた。またケント・ベックもソフトウェアへの応用としてXPを提唱し、ソフトウェア開発に多大なる影響を与えている経緯を紹介いただいた。さらに学びのパタンやプレゼンテーションパターン等々パタン・ランゲージは広く応用され暗黙知の共有化に多大なる貢献をしていることを学びました。

会場から「心の中の美」と「パタン」の関係性に関する質問に対し、中埜先生より興味深い回答をいただきました。
「人間の能力に中でつかめていないのが"全体性の把握"である。「美しさ」「感動」は無意識のうちに知っている。子供は美しい絵が描けるが知識がその能力をダメにしていく。"世の中の人はおかしいというかもしれないけど、行動する"ことが世の中を変える一歩になる。」

平鍋さんにロックンローラーと言わしめた中埜先生、汲めども尽きぬ知見の泉にもう少しお話を伺いたいと実感した貴重な時間でした。
(レポート 沼田 千賀子 (株)ニコンシステム)

招待講演

セッションC3

セッションC3は、2014年度のシンポジウムAwardを受賞した方々による講演でした。

「工数入力定着モデルの提案」(デンソーテクノ(株) 山路厚氏)では、チームメンバーが自分の作業工数を正確に把握することで仕事のやり方を見直し、改善していくための工夫点が語られました。山路氏はこのための工数情報を「時間日誌」と名付け、「技術者ひとりひとりの知的労働のありさまを表現するもの」と説明しています。
工数の中でも特に重要なのが、手戻り工数。手戻りに使っている時間がどの程度なのかを知り、そもそもその手戻りがなぜ起きたのかを分析することで、個人、そしてチームとしての作業効率を向上させることができます。
プロジェクト管理における「見える化」といえば、コストやスケジュールに目が行きがちですが、山路氏の職場では、「会議の遅刻」「議事録の発行漏れ」といった、日々起こりがちだけどなかなか改善されづらい現象を数字で見える化することで、ポジティブな効果を得ているとのこと。測定の手間とのバランスは重要ですが、アイデア次第で簡単に実践できそうな工夫と感じました。

「継続的システムテストについての理解を深めるための開発とバグのメトリクスの分析」(楽天(株) 荻野恒太郎氏)では、プロジェクトの終盤ではなく、早期から繰り返しシステムテストを実施する「継続的システムテスト」という考え方と、これに伴うメトリクス計測についてのお話がありました。
コミット数、LOC数、バグ数といったメトリクスを自動的に取得する仕組みを構築し、ソフトウェアの品質の状態を可視化することに加えて自動化されたシステムテストに向けられる懸念に答えていきます。新しいやり方を導入するだけでなく、変化に伴う抵抗感を、根拠となる数字を示しながら解消していくという進め方は、ソフトウェア開発の様々な局面で必要となるスキルでしょう。また、従来の「最終工程としてのシステムテスト」とは異なる傾向を見せるメトリクスをどう解釈するかといった説明があり、とても実践的なセッションでした。
リグレッションテストが自動化されていれば、個々のメトリクスの取得や分析に難解なところはなく、現場に大きな負担をかけることなく品質を安定させることのできる手法と感じました。

「テスト自動化によるテストサイクルの短縮と高速回転を利用した、傾向分析の精度向上の仕組みについて」(テルモ(株) 永松康能氏)では、際限なくテストケースが増え続ける原因の一つが、品質の十分性を説明できていないことにあると考え、ソフトウェアの品質状況を可視化し、テストを強化することによってこれを解決しようとしています。そのためにテストを複数回行い、「不合格の多い機能」と「合格率の低い機能」を弱点として、テストを強化するという手法を用います。
傾向を見るためにはテストのサイクルを短い周期で実行する必要です。このため、テストの実行のみならず、実行前のテスト分析/設計や、後の検証とレポートも含めて高速に実行する仕組みが必要になるとしています。ただその仕組みについては具体的な内容に踏み込んだ言及が少なく、やや物足りなさが残りました。
(レポート 鈴木 一裕)

セッションC4

C4-1 D-Case適用拡大に向けて~アジャイル開発への適用事例~

森 素子 氏 三菱電機(株)
本講演は、2014年度 Best Report Future Award 受賞者による講演です。
講演者である森さんは、2013年のSQiPシンポジウムでD-Caseと出会い、以来、現場でD-Caseを活用されているそうです。昨年は、シュミレーター開発への適用事例を紹介されていましたが、今回はD-Caseの適用拡大に向けた取り組みについて紹介されました。 D-CaseではGoalに対してあるべき姿(特性基準)を決めることが重要ということで、 D-Caseを使用する際の勘所についても学ぶことができました。D-Caseのフレームを使用することで、ゴールとそれを裏付ける証拠に対しても漏れなく議論することができるので、品質保証の現場でも活用していきたいと感じました。

C4-2 車載システム製品へのコンカレント開発の適用 -新規開発における開発期間短縮へのアプローチ-

林 健吾 氏 (株)デンソー
本講演は、2014年度 Best Paper Effective Award 受賞者による講演です。
本発表は、複雑高度な製品を高品質でより短期間で開発することが求められる中、その状況に対応するための開発方法を改善された事例の発表です。昨年は、研究開発と製品開発を分けた2フェーズ開発方法から、開発プロセスの期間を一部重ね合わせるコンカレント開発方法に切り替えた取り組みを発表されていましたが、今年は、昨年以降からの課題と解決のため取り組みについての発表でした。コンカレント開発方法に切り替えたことで、開発期間の短縮はできたのですが、品質確保に懸念があったそうです。その課題解決のため、コンカレントフィードバック開発方法を考案。それにより、開発期間の短縮と内部品質の確保の二重の成果が出たそうです。プロセス改善の本来の目的であるQCD向上に向けて、組織全体で取り組まれているという点も含め、素晴らしい取り組みであると感じました。
(レポート 吉満 恵子 ソーバル株式会社)

SQiP特別セッション

E3 ソフトウェア品質保証部長の会からの情報発信!

孫福 和彦 氏((株)日立ソリューションズ)より第6期の活動について第1期からの成果とともにご紹介いただきました。参加人数は年々増え、活動テーマのステージもあがり、進化し続ける「部長の会」で今期再定義されたミッションとビジョンに日本の品質への強い思い、牽引力を感じました。

《第1部》超上流からの品質保証 partⅢ

増瀬 英雄 氏 (株)島津ビジネスシステムズ
「PassiveからActiveへ」をテーマに「発注側視点」に注目し、超上流での品証部門の関与に関する検討・議論内容をご報告いただきました。
また公共事業の入札事例を品質保証部長の目で再評価結果のご説明ではエンドユーザの立場に立った提案の重要性を再認識いたしました。加えて受注前工程で時には品証部門が「契約辞退」を物申すことも重要な責務であると話されていたことが印象的でした。

《第2部》設計工程での品質施策-要求・要件定義の合意形成のために-

廣石 高 氏 三菱電機(株)
要求・要件定義フェーズでの合意形成の重要性はステークホルダー全員が認識しているが、予算・スコープ・変化への抵抗・言語、文章表現の限界等々の課題が実現を困難にしています。そこから脱却すべく「モデル化による可視化」の有効性評価についての興味深い発表でした。今期はD-Caseを用い、まずはプロジェクト内部での合意形成の有効性を確認されたとご報告いただきました。今後の展開が楽しみなテーマでした。

《第3部》スピード経営を実現するためのアジャイル開発、品質保証部門は何するの?

榊原 康之 氏 (株)ニコン
アジャイル開発の導入が外圧(上層部やベンダー)等で加速することが十分に考えられる昨今、「品質保証部門としてアジャイル開発に対してすべきこと、できること」について有識者からの助言も含めてご提言いただきました。「開発モデルによらず、品質が作り込まれたことを確かな根拠で説明できること」「現場に当事者意識で積極的に参画すること」等々の貴重なご提言をいただきました。品証部門もアジャイルを学び開発部門と協力し、成長し続けることが必要であると実感しました。

《第4部》品質意識を醸成するには?

川原 章義 氏 日本システム(株)
ドキッと品質意識の状態を「病名」「症状」「原因と処方箋」「ありたい姿」「ありたい姿にするには」でカテゴライズし、ご紹介いただきました。対処療法にとどまらず体質改善までの知恵の集合に学びのきっかけをいただきました。付録の「なぜなぜ集」と「標語集」は必見です。
最後に
11月には今回発表の機会を逃した2テーマに加えて今回の4テーマをブラッシュアップした形での発信があるそうです。皆様お楽しみになさってください。
(レポート 沼田 千賀子 (株)ニコンシステム)

E4 SQiP-WEST
関西ソフトウェア品質保証責任者の会からの情報発信!

最初に、宿口雅弘氏(イーソルトリニティ)より、「関西ソフトウェア品質保証責任者の会」の2011年10月発足からの成立ち、現在の活動紹介がありました。「品質保証部長の会」と異なり、「品質保証責任者の会」と銘打ち、組織の中で様々な役割を担っている方々の集まりにしていることで、より広い視点・視座での議論が行われているようです。

研究活動を開始するにあたり、参加者の皆さんから研究テーマについてアンケートを収集し分析した上で、現在は①品質教育(人財育成)、②開発プロセス(各社の身の丈に合ったやりかた)をテーマとして活動していらっしゃいます。今回のSQiPでは、それぞれのテーマからの活動報告がありました。

《第1部》「人財開発」チームからの報告 ~とある組織の品質意識調査~

細谷 真奈美 氏  (株)デジタルデザインサービス
「スキルの習得(知識)」だけではなく「意識の強化」が必要であると、昨年度までの活動で実感した研究チームが、ある実在する開発チームに対して、「意識の強化」を実際に行った結果の報告でした。

1名のリーダと3名のメンバという4名のチームに対して、課題を抽出する目的で、品質の「意識」に関するアンケートを実施したところ、各人の品質意識にばらつきがあることが分かりました。その結果を元に、チーム内で意見交換をすることで、品質に関する方向性が合い、チームとしての品質意識が芽生えることが分かったそうです。アンケートのような「意識の見える化」と意見交換が、品質意識の向上に有効である、という知見は、普段、どうやって品質意識を向上させるか悩んでいる現場にとって参考になるのではないかと感じました。

《第2部》「身の丈プロセス」の深掘り

保坂 晃彦 氏 日本ソフトウェア(株)
冒頭昨年までの活動の説明がありました。中小規模レベルの会社でも実践できる、「身の丈に合った」開発プロセスが必要であり、メーカ派生会社等の大規模企業で行われているプロセスをテーラリングする物差しの研究を行ったとのことです。今期は、先期のテーマの継続として、実際に「身の丈にあったプロセス」を構築するために、開発プロセスを深堀した結果の報告がありました。

わたし自身は、いわゆる大規模企業のSIerという立場で興味深く話しを聞かせて頂きました。大規模企業においても、その案件の規模や、内容によってプロセスを軽量化するべきと言う議論はよくなされます。深堀りの結果として、必要となるプロセスを洗い出した結果、あまり絞り込めなかったという報告がありましたが、品質を一定のレベル保ちつつ、いかに必要十分なプロセスに軽量化できるかという悩みは、現場における永遠の課題だと感じました。今後「身の丈プロセス」を構築されるとのことでしたが、結果が楽しみです。
(レポート 手塚 聡子)