第54回(2025年度)信頼性・保全性・安全性シンポジウム
優秀報文(事例)賞、奨励報文(発表)賞、学術/技術貢献賞
受賞報文・事例決定
2025年7月17日(木)~18日(金)に開催された「第54回信頼性・保全性・安全性シンポジウム」における各賞の受賞者が決まりました。
参加者からの投票結果をもとに、本シンポジウム報文小委員会による厳選なる審査と組織委員会の最終審議を経て2025年10月2日(木)、今年度は「優秀事例賞(2件)」「奨励発表賞(1件)」「学術貢献賞(1件)」を授与することを決定いたしました。
(発表番号、所属は発表時のものです。Session番号順、敬称略、○は発表者)1.受賞者
※発表番号、所属は発表時のものです。Session番号順、敬称略、○は発表者。優秀事例賞
Best Application Award
発表事例: | ポゴピンの短寿命化事例紹介 |
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著 者: | ○北林 朋希、鬼丸 浩司 |
所 属: | ユーロフィンFQL株式会社 |
受賞理由
本発表は、電子機器や電気自動車の充電システムにおいて高い耐久性と安定した接続が求められるポゴピンの解析事例とその再現試験結果に関する報告でした。解析において、独自開発した試験機で高抵抗を顕在化し、高精度な断面研磨により腐食を特定している点は、汎用性ある技術力の高さを感じました。再現試験においては、FTAに基づいた汚染物質、検体の選定をおこない、視点を変えた2つの試験導入より、ポゴピンの高い信頼性を裏付けると共に、腐食に対する複雑な要因追及に向けた今後の取り組みが明瞭にまとめられていました。解析結果を信頼性試験にフィードバックした明瞭な事例であり、実用的であるとともに完成度が高く、信頼性解析・信頼性試験における模範的な事例であることから優秀事例賞に値するものと判断いたしました。発表事例: | リスクアセスメント技法(R-Map、HHA等)を活用したリスクマネジメント |
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著 者: | ○今中 俊行、松本 圭弘 |
所 属: | ダイキン工業株式会社 |
受賞理由
空調機器の冷媒開発では性能と共に地球環境への影響も考慮する必要があります。本研究では、実際の使用環境を忠実に反映した実験を通じて、地球温暖化係数が低いプロパンについて着火リスクや危害度を評価し、輸送・保管・廃棄などのライフステージ全体における具体的なリスク低減策について、新たな知見を提供しています。また、業界内外のステークホルダーを巻き込んだ社会全体での安全対策の必要性を提唱し、実践的な成果を示した点も高く評価されます。これらの取り組みは、地球環境保全と安全性向上の両立を目指す優れた研究であり、安全性業務の遂行に大きな裨益をもたらすものです。以上から、本発表は優秀事例賞にふさわしい内容と判断いたしました。奨励発表賞
Incentive Application Award
発表事例: | 機械学習を用いたボルト締結の軸力/トルク関係の把握 |
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著 者: | ○花井 洋志、白鳥 友風 |
所 属: | 日産自動車株式会社 |
受賞理由
近年、機械学習の活用が活発になっています。継続的に機械学習を用いて業務効率化を進めるため、自社スキルでツールを開発した事例です。試行対象として影響因子が多くかつばらつきが大きいボルトの締結を取り上げ、最大トルク予測モデルをつくりあげました。また、開発ツールの妥当性検証のため外製との比較まで行っています。今回の取組みは、ドメイン知識を持つエンジニアと、データサイエンティストがタッグを組み成功に導いた模範となるものです。本発表は、機械学習の適用範囲拡大を期待させるだけでなく、エンジニアとデータサイエンティストの新たな形を提案しているものであり、奨励発表賞に値すると判断しました。学術貢献賞
Academic Contribution Award
報 文 名: | トラブル未然防止への行動変容に向けて |
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著 者: | 鈴木 和幸 |
所 属: | 電気通信大学 |
受賞理由
トラブルの未然防止には、失敗事例を他人事から自分事にどのように意識転換するかが重要です。この行動変容の実現について様々な例を用いて考え方、指針を示されました。情動、理性、組織的推進の3つの要素が重要であること、それらの順序が重要であり、感情に訴え、引き出された関心を理性により共有し、組織的推進により継続、定着させることの重要性を説かれました。組織的推進の重要性は多くの方が認識していたと思いますが、情に働きかけること、ならびに理性的納得の重要さを痛感した講演でした。トラブルの未然防止に必要な観点を整理された本発表は、啓蒙的であり、参加者にとって大いに有益な内容であったことから学術貢献賞に値すると判断しました。2.本表彰制度の目的と選考方法
本シンポジウムは、企業の第一線で活躍されている研究者や技術者の方々が現実的に重要な信頼性、保全性さらにヒューマンエラー防止など安全性にかかわる問題を解決していくための知見を共有する場であり、発表者と参加者との討論により問題点を整理し、得られた知見をより体系化して知識の共有化を図ることを目的としています。
その目的を達成する1つとして、優秀な報文・事例を表彰する制度を設けています。そのねらいは、研究発表者のインセンティブを喚起するとともに、一般参加者には推薦を通して本シンポジウムへ積極的に参画していただくことです。
このような背景から、参加者全ての方々に幅広く優秀報文・事例の推薦をお願いし、これに基づいて選考を行っています。本年も、参加者の皆様の多様な視点から投票をいただきました。
一般発表(研究報文/事例報告)22件について参加者からの投票結果をもとに、本シンポジウム報文小委員会(委員長:弓削哲史氏(防衛大学校 電気情報学群 電気電子工学科 教授))による厳選なる審査と組織委員会(委員長:田中健次氏(電気通信大学 産学官連携センター 特任教授))の最終審議を経て、上記に示す各賞受賞を決定いたしました。
優秀報文賞、推奨報文賞、技術貢献賞は該当者なし。