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クオリティフォーラム2017 登壇者インタビュー

コマツにおけるIoTで建設現場を変えるための取り組み
 ~お客様に「ワオ!」と言わせるソリューション提供のために~

コマツ 執行役員 スマートコンストラクション推進本部長の四家千佳史氏に聞く(前編)

(聞き手:ジャーナリスト 伊藤 公一氏)

四家 千佳史(しけ ちかし)
執行役員 スマートコンストラクション推進本部長。
1968年福島県生まれ、1997年にBIGRENTAL(本社:福島県郡山市/建設機械レンタル業)を社員3名で創業、2008年社員数700名までに成長した同社とコマツレンタル(コマツ100%出資)が経営統合、同時に代表取締役社長に就任。15年1月にコマツ執行役員スマートコンストラクション推進本部長 兼コマツレンタル代表取締役会長に就任、現在に至る。
――スマートコンストラクションはIoTの成功例としてしばしば引き合いに出されますが、ご自身はIoTをどう定義していますか。
四家:私どもは「結果IoTだ」と言っています。その心は、初めにIoTがあって、それで何かをしたり、ビジネスにつなげたりするものではないということです。実際、スマートコンストラクションという考え方を唱えて運用したら、これって、ひょっとしたら世に言うIoTだよねなどと社内で確かめ合っていました。いわば後付けです。

 要するに目的を達成するために取り組んだ手段がたまたまIoTだった。従って「結果IoT」だという理屈です。KOMTRAXは、よくIoT事例に取り上げられますが、実は私は今でこそコマツの人間ですが、以前は機械の見える化を目指す「KOMTRAX」の初期の開発に関与していた外部の人間です。建機のレンタル会社を立ち上げていた関係で、KOMTRAXの開発、実証実験に協力し、その関係でさまざまな会議などにも立ち合っていました。1998年ごろのことです。
――KOMTRAXのような考え方は当時、すんなり受け入れられたのでしょうか。
四家:今だから明かせるのですが、KOMTRAXが目指した双方向コミュニケーションシステムを懐疑的に捉える人は珍しくなかったですね。その時に交わした言葉は今も鮮明に覚えています。首をかしげる開発陣に対して『コマツの製品がお客様の生産活動に使われている以上、双方向コミュニケーションは大きなビジネスをもたらすし、お客様の価値観も変わるはずだ』と言ったのですが理解はされませんでした。

 会議同席者の何人に理解されたかは分かりませんが『双方向でつなぐことそのものはビジネスに直結しないかもしれないが、つなぐ基盤を作っておけば、どこかでいろいろなものがコマツにもお客様にも新たな価値をもたらすはずだ』と熱弁をふるっていました。

■醤油の残量に応じて商品を補充する

――“懐疑派”を引き寄せた魔法の言葉は?
四家:引き寄せたかは解りませんが、昭和真っ盛りのころ、食卓の醤油は消費者が一升瓶から醤油差しに注ぎ分け、減ってきたら注ぎ足すのが当たり前でした。しかし、今では小ぶりの容器に入った商品をコンビニエンスストアで買うのが普通です。

 仮に、その容器に付けられたセンサーが残量を知らせてくれれば、消費者がコンビニに買いに行くタイミングを想定してメーカーはコンビニにジャスト・イン・タイムで補充することができます。IoTがビジネスを変えるのです。会議ではそんな説明をしました。KOMTRAXが本格稼働すれば建設現場もこれまでとは違った姿になり、われわれのビジネスも変わるという思いを込めて……。
――その努力が実ったせいかKOMTRAXは2001年から、すべての建機に標準装備されました。
四家:標準装備にすると決めた当時の経営陣の決断が今のスマートコンストラクションにつながります。仮にオプションにとどめていたら、今日のスマートコンストラクションは生まれてこなかったでしょうね。IoTをアピールするだけではビジネスにならないということです。

 つながっていることが文字通り、次のステップにつながるからです。このように、コマツにはIoTにつながる見える化や現場主義を尊ぶ文化がある。それは強みでもあります。

■コストの低減か生産性の向上か

――現場の見える化に役立つKOMTRAXの登場で業界はどう変わりましたか。
四家:建機業界という狭い世界だけでなく、さまざまな業界を含む産業界に起きた出来事の一つとして興味を待たれたと思います。当初は建機の使った燃料とか稼働位置などを知る手段として重宝されました。建機のコストに関わる情報が得られるからです。

 しかし、それは基本的にコマツに有益なだけです。お客様にとっては建機にかかるコストよりも、生産性や安全などをどう高めていくかのほうが重要なはずです。メリットもある。そう考えると、KOMTRAXは機械のセンサー情報が主体だからお客様の施工量の見える化ができていない。そこで、2015年2月にスタートしたスマートコンストラクションでは、建設現場の生産性向上に狙いを定めました。
――施工の流れを全体最適の視点でお客様と一緒に捉え直すということですか。
四家:そうです。コマツが提供するICT建機、そのICT建機による施工はあくまでも全体の一部にしかすぎません。だから、部分最適ではありますが、施工全体の生産性向上には必ずしも寄与できていない場合がある。

 そこで、施工全体を一つの大きなまとまりと捉え、全体最適の視点から建設現場における安全や生産性、品質などの向上に取り組みました。運用にあたっては、最新のさまざまなICTやコマツの生産管理力、生産技術力などを活用し、お客様と一緒に実現していくことを目指しています。

■“一筆書き”で生産性が3倍に

――KOMTRAXからスマートコンストラクションへの移行で「機械の見える化」が「施工の見える化」に進化したわけですね。
四家:ICT建機を本格的に導入する前に、社長の大橋からは「従来の製品とは違うだろう、ICT建機をお客様へ販売、レンタルすれば良いと言うものではないのではないか」との宿題を受け取っておりました。そこで、建設現場までのラストワンマイルが一番強固な日本の市場で、本格展開する前にレンタル会社を通してお客様に試してもらうことにしました。

 結論を先に言えば、ICT建機を投入したメガソーラーの造成工事では生産性が3倍になりました。一般的にこういう現場ではオペレーターは地面に打たれた目印を見ながらブルドーザーを操縦し、土を盛ります。そのためには前進して土を押し、バックするという作業を繰り返さねばなりません。これをブルドーザーの側から見ると、一往復で半分しか仕事をしていないことになります。
――その点、ICT建機は自動制御が利くので合理的に動かせますね。
四家:おっしゃる通りです。ひたすら前進あるのみ。枯山水(かれさんすい)の小石をならすように一筆書きでぐるぐる回る感じです。バックしないので単純に考えて燃料消費量は半分で済みます。施工時間も半分。目印を打つ必要もないのでその時間もいらない。生産性が3倍に上がった理由です。

 この結果に大喜びしたわれわれは「ICT建機はお客様の生産性を抜群に上げる」と確信しました。しかし、次の現場で試したら、自信が打ち砕かれました。ダンプトラックが運んできた土で盛土をする工事です。確かに建機は3倍働いてくれました。ところが、ダンプの手配がつかず、到着待ち時間が発生したため、生産性を上げられなかったのです。

■全体最適の視点でボトルネック解消へ

――大橋社長の心配事が現実になった。
四家:そこで、社長に提出する調査報告書をまとめるために、現場の工程を一つひとつ拾って詳しく書き出してみました。山から土を掘削し、ダンプに積んで運び、盛土するまでの工程です。その上でコマツの建機が動いているところを赤く塗ってみました。長い長い工程の中で赤い場所はほんのわずかでした。

 これではどんなに頑張っても全体最適にはなりません。短期的に最適でも、ボトルネックがあれば結果として生産性は上がらないからです。報告を受けた大橋の指示は明快でした。コマツの建機が動く部分の部分最適だけでなく、工事全体で全体最適になるようすればいいじゃないかと言うのです。

四家:コマツの建機が関わる部分はもちろん、そうでないボトルネックもわれわれが見つけて解消する。つまり全体で関与しようというのです。しかし、これは建機の開発や生産、販売、レンタルといった従来のビジネスとは違う。だから新しい名前を付けて活動しようということになった。スマートコンストラクションはこうして第一歩を踏み出しました。