ブックタイトル品質管理シンポジウム第100回記念史

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概要

品質管理シンポジウム第100回記念史

第6章|現役組織委員が語る今後のQCSへの期待恩師との縁株式会社ジーシー取締役会長中尾眞私が箱根QCSに初めて参加させて頂いたのは2000年6月であった。デミング賞創設50周年の年のデミング賞チャレンジに向け、最後の追い込みに懸けるみんなの熱気と、社内のムードとが最高潮に達した時期だと記憶している。参加へのきっかけは、日本のものづくり企業の多くの経営者・管理者と共に語り、学び合うことと同時に多くのエクセレントカンパニーの特徴ある品質経営を学び、今後の自社のGQM(ジーシーのTQM)のあるべき姿を確立することが大きな目標のひとつであった。当時、TQMの主役は日本企業からインド、タイなどの主要企業に移りつつあった。そんな中、弊社は創業時の厳しい経験から、「常にお客様の使う立場に立ち、考え物づくりをする」ことを社是とし、品質の原点に立ち返りクオリティを中心とした、品質経営の重要性を再認識する必要があるとの強い思いをもって、デミング賞にチャレンジしていた最中であった。更に、俵先生、角田先生、細谷先生、狩野先生をはじめとして多くの先生方よりビジョン経営に基づく中期経営計画の重要性を教えられた時期でもあった。顧みると学生時代からの恩師である村松林太郎先生より、生産管理を中心に現場の大切さを教えられ、更に社内のシームレス化に結びつくとTQCの奥深さを学び始めて、すでに30年近くは経っていただろうか。今日になってわかったことは、先生は第1回箱根QCSにおいて石川馨先生、水野滋先生、朝香鐵一先生、木暮正夫先生、森口繁一先生等の品質管理における日本の先駆者たちが一堂に会し、ともに各グループの司会者としてこの会を運営されていたことである。そうしたことが、後のTQC発展の足がかりとなり50年もの長い間、箱根QCSが継続されてきたことを考えるとき、何か運命的なものを感じざるを得ないのである。時代の変化に対応し、TQCからTQMへと変遷していく中で、弊社のGQM活動を広く海外子会社まで広げられたのは、ひとえにこの箱根QCSで学んだ事柄の多くが礎にあったからに他ならない。一昨年より私は組織委員となり参加者および会員企業に対し、どのような効果やビヘイビアをもたらすことが出来るかを考えながら委員の役割を務めさせていただいている。昨年の98回QCSでは組織主担当となって、佐々木理事長、圓川先生、宮村先生、鈴木和幸先生等の多くの先生方のご指導のもと「グローバル時代におけるダイバーシティを取り込んだ品質経営の実践」という大会テーマで、新しい方向性を模索する企画を実施することができた。この企画は過去長きに亘りここでは取り組んだことのなかった内容で、企画段階から多くの方々のご意見ご要望を賜り、当日の会がスタートするまでは少々の緊張感とストレスを感じる日が続いたことを覚えている。大会当日、会場へ着いてその景色を見ると従来のQCSでは考えられなかったような女性参加者の姿が30名という、まさにテーマの狙い通りの様相であった。現在スイスで暮らしながら、1年のほとんどをヨーロッパ、アメリカで働く私にとってダイバーシティは日々日常の中で対応せざるを得ない事象である。多様な人種、性差、年齢また多様な文化、文明の中でどのようにそれぞれの異なる特徴ある価値観を認め合い、また共有していくかがこれからの日本企業に求められる最も重要な課題と思われるのである。その意味では98回QCSテーマ企画は一石を投じることができたのではないかと考えている。ダイバーシティを各企業がどのように捉え、品質経営を実践していくかを議論し、互いに学び合う場であり続けるならば、QCSの必要性は更に高まっていくと確信している。53