公開シンポジウム開催レポート サプライチェーン全体での品質保証体制の強化に向けて

パネルディスカッション「各社の固有の手法や知見で独自性を訴える」

モデレーター
多田 明弘 氏
経済産業省 製造産業局長
パネリスト
安藤 豊 氏
新日鐵住金㈱ 常務執行役員
パネリスト
小河 義美 氏
㈱ダイセル 取締役 専務執行役員
パネリスト
平山 智明 氏
ジヤトコ㈱ 常務執行役員
 挨拶、講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、登壇者が、品質保証体制の強化に向けた具体的な取組などを紹介し、その取組を参加者と共有した。

各社の固有の手法や知見で独自性を訴える

 ダイセル専務執行役員の小河義美氏は「組立加工工程に画像解析システムを導入し、データを一元化したことで、標準作業の逸脱や重要工程の設備異常、作業ミスや抜けなどが検知できるようになった。これにより、一個保証の実現による品質基盤の強化のみならず、生産性向上、業務改革による効率化などが図られるなど利点は多い」と生産工程における品質管理面、サプライチェーン構築などでのAI/IoT活用の重要性を指摘。「今後はこれまで培ってきたノウハウや知見を人工知能で進化させ、知的生産システムに搭載することでオペレータの意思決定を助け、ヒューマンエラーの防止や技術伝承などにつなげる。継続的な技術革新のスパイラルアップに挑むため、生産革新(製造技術の向上)とプロセス革新(設計技術の向上)に交互に力点を置きたい」との決意を述べた。

 ジヤトコの平山智明常務執行役員は「お客様の期待値を実現する方策の一つとして、トレーサビリティによる品質管理によって、当たり前品質と魅力品質の双方を追求している。当たり前品質は『安心感=製品履歴が明確』『すぐ直る=すぐ対象を特定でき対策を打てる』『不満がない=お客様の声を商品に反映する』の3つ。この当たり前品質は、CVT(無段変速機)を構成する重要部品へのID付与、生産状況データ(寸法や試験結果)の紐付け、検索システムの整備を通じて、サプライチェーン内のトレーサビリティを高めることで実現している。魅力品質は『フィーリングが良い』『高揚感』『経済性』から成る、ありたい姿」と二段構えの対応を披露。「開発、生産、市場、解析という循環の中でお客様の期待値を捉え、最適なCVTを提案したい。今後は、リアルタイムでのデータ収集やビッグデータ解析で地域性や道路特性などの最適化を進め、お客様のさらなる期待値の実現を目指す」と語った。

 (一社)日本鉄鋼連盟技術政策委員会委員長の安藤豊氏(新日鐵住金常務執行役員)は過去、鉄鋼業において発生した品質事案を受け、日本鉄鋼連盟が2008年7月に定めた『品質保証体制強化に向けたガイドライン』を紹介。「ガイドラインの一層の浸透・定着に向けたアンケート等による取組状況フォローアップや、会員の子会社・関連会社にも積極的な参加を求めた上での交流会や講演会の実施に取り組んでいる他、トップマネジメントによるレビューも行っている」として、業界全体での品質保証体制向上に向けた取組を説明した。
 また、新日鐵住金という一加盟会社の立場からも「当社は『品質は生産に優先する』との考え方で、法令遵守と品質保証に関する意識を徹底し、ガイドラインに沿った取り組みを進めている。また、試験データの入力自動化などプロセスの自動化も順次進めていきたい。大切なのは、一人の失敗を失敗として終わらせるのではなく、会社全体の資産としていくことだ」と語った。
(取材:伊藤公一)