公開シンポジウム開催レポート サプライチェーン全体での品質保証体制の強化に向けて
 企業の経営層に、経営戦略の一環として、品質保証体制の構築に率先して取り組んでもらうことを目的として、公開シンポジウム「サプライチェーン全体での品質保証体制の強化に向けて」が2018年6月25日、経済産業省、(一社)日本経済団体連合会、(一財)日本科学技術連盟の共催(於:経団連会館)で開かれた。本シンポジウムは、製品検査データの書換えなど、製造業の品質保証体制に関わる問題が昨年来相次いだことを受けて開催されたもの。企業の経営層や品質管理担当幹部、業界団体役員など500人あまりが出席した。

挨拶1「問われる経営トップのコミットメントと現場とのコミュニケーション」

世耕 弘成 氏
経済産業大臣
 冒頭、挨拶に立った世耕弘成・経済産業大臣は、一連の事案を「各社の品質保証体制に関わることであり、企業経営そのものの問題」と指摘。その上で「品質は、かねてより、日本のものづくりの競争力の源泉の1つ。日本の製造業は顧客のニーズに即した高品質な製品を追求してきた。こうした先人たちの現場での努力の積み重ねにより形成されてきた、メイド・イン・ジャパンの製品は、今なお世界から高い評価を受けている。今後、第四次産業革命などが進展する中で、日本のものづくりのあり方は大きく変わっていくことが予想されるが、この先も品質の重要性が揺らぐことはない」と強調した。その上で「サプライチェーンという形で様々な企業がつながっている点を考えると、これまで培ってきた日本のものづくりに対する信頼や競争力を全体的に奪いかねない深刻な問題」との認識を示した。それだけに、経営トップの品質保証に対するコミットメントとそれを浸透させるための現場とのコミュニケーションが大切だとして、経営トップのリーダーシップと具体的な行動に強い期待を寄せた。

挨拶2「品質問題を経営課題として捉える」

中西 宏明 氏
(一社)日本経済団体連合会 会長
 (一社)日本経済団体連合会会長の中西宏明氏は「新たなテクノロジーを生産体制の中に埋め込んでいくことが大事。経団連でも、ソサイエティ5.0であらゆるものがつながる新たな社会の仕組みづくりに経済界を挙げて取り組むことを重点課題としている」と現況を報告。「ソサイエティ5.0で到来する仕組みと品質の問題は表裏一体の関係。同じことを両面から見ているのに等しいため、経団連としてもその具体化に力を入れている。こうした一歩進んだ品質管理を確立するためには品質問題を経営課題として捉えることが大切。経営者の皆さんには、新たな産業の発展を見越して尽力していただきたい」と呼びかけた。

講演「『見える化』がビジネスチャンスに」

坂根 正弘 氏
(一財)日本科学技術連盟 会長
 (一財)日本科学技術連盟会長の坂根正弘氏はかつて経営トップを務めたコマツ時代を振り返り「経営力を高めるためには企業価値と価値観、それらを実現する行動様式(コマツウェイ)をグループ全体で共有する必要がある。念仏を唱えるだけでなく、行動様式にまで落とし込まないと会社は永続的に発展しない」と強調。「マネジメント編では取締役会の活性化と経営の品質と信頼性を重視。モノ作り編では現場・現物・現実・原点・顕在化の5ゲン主義を徹底。ブランドマネジメント編では顧客にとってなくてはならない度合いを高め、パートナーとして選ばれ続ける存在となるための活動に注力した」とコマツウェイの要点を説いた。サプライチェーンの実効を上げるために、生産現場や機械の稼働現場、建設施工現場に導入しているそれぞれのシステムにも触れ「見える化してつなげることがビジネスチャンスとなり、かつ、品質保証体制の強化になる」との持論を述べた。