2021年度 開催レポート
会場:日本科学技術連盟・東高円寺ビル
「JUSE-エグゼクティブセミナー」の第5月目は、1月21日(金)~22日(土)の2日間で、日本科学技術連盟・東高円寺ビルにて開催された。
今月は、新型コロナウイルス オミクロン株の爆発的な感染拡大に伴い、オンラインと集合のハイブリッド形式で実施されたが、大多数の参加者がオンラインでの出席となった。
前月までの検討で、「顧客の何の実現にコミットするか(What)」と「どのように実現するか(How)」を考え続けて、それを明確に表した図面「事業構想基本フレーム」が完成した。今月からは、その構想を“絵に描いた餅”にしないため、具現化の強力なツールである、TQMをフル活用すべく、「TQM推進計画の作成」のステージに入っていった。
1.事業構想基本フレームの発表(グループ研究・個人研究)と、中間まとめ
冒頭は、前月までの「事業構想基本フレーム」(W19~22)のグループ研究発表からスタートした。
それぞれのグループ研究の発表と意見交換を行い、グループ内だけでは気付かなかった視点のコメント・アドバイスがあり、夕方のディスカッションへ向け大いなる参考となったと考える。
また、グループ研究の発表後は、昼食を挟んで、個人研究の発表を行った。
1月目から進めてきた「事業構想基本フレーム」の集大成の発表であり、次の「TQM推進計画」を作成するにあたって、個々の頭の中の整理に繋がった。
発表後は、「顧客価値創造(事業構想フレーム)中間まとめ」と題し、鈴木浩佳委員(トヨタ自動車㈱)から、事業構想基本フレームのまとめと、次のTQM推進計画への流れについて説明があった。
事業開発の全体像から始まり、1月目から4月目までに学んだ内容を、ダイジェストで解説があった。本セミナー前半部分(事業構想)の内容が終わったところで、ここまでの全体の流れをビジュアルに解説してもらったことで、改めて整理が出来、理解が深まったように思う。


2.事業構想からTQM推進計画へ
前半部分のまとめが終わり、後半への繋ぎとして「価値創造におけるTQMの役割とその活用」と題し、中條武志委員(中央大学)より、講義を行った。
まず、以下4つのTQMに関する典型的な誤解について、参加者一人ひとりに発言(意見)を求め、各参加者の認識を披瀝しあった。
〔TQMに関する典型的な誤解〕
- TQMはコトづくりには役に立たない
- TQMとは品質保証のことである
- TQMとはQCサークル活動のことである
- TQMは高度に情報化された社会では役に立たない
続いて、以下の項目についての講義が展開された。
- (1)TQM(総合的品質マネジメント)とは
- (2)TQMの原則、活動要素、手法
- (3)TQMを経営に活用し、変化に対応できる、変化を生み出せる組織をつくる(デミング賞受賞組織に学ぶ)
- (4)TQMに対する誤解を解く
TQMの基本と本質を丁寧かつ明快に解説がなされ、前記(3)ではデミング賞受賞の3組織の事例を交えながら具体的な説明も行われ参加者の理解が促進されたと考える。
最後に、講義の内容と、上記の誤解を照らし合わせた説明があり、「TQMとは、変化の激しい時代において、変わり続ける顧客・社会のニーズに対応できる・変化できる組織能力の獲得と向上のために有効なツール・方法論の一つである」ということが強調された。最後の質疑応答は、時間内に収まりきれないほどの質問が出され、参加者のTQMへの関心度の高さを感じさせた。

3.TQM推進計画の作成開始!
光藤義郎委員(日科技連・嘱託)から、これからのワークについてのオリエンテーションがあった。ここでのポイントは、TQM推進計画に対する共通認識で、TQMの基本構造を踏まえ、「目的は、経営課題の達成に必要となる組織能力の獲得・強化であり、その手段としてTQMを活用することである。」ということである。
TQM推進計画は、これまで検討を行ってきた事業構想基本フレームから導き出したイシューに対して、この経営課題を達成するために必要となる組織能力を明確化し、獲得するための計画であり、事業計画ではないということを確認した。

4.事業構想を実現するための課題の明確化
具体的なワークでは、事業構想を実現する上での課題から見たTQM活動要素について、マトリックスを使用し実現すべき事項を明確化し、各イシューとTQM活動要素の関係性に着目し事業構想を実現する上での重要な事項を明らかにした(ワークシートW31)。

5.事業構想のTQM推進計画への落とし込みと、具現化へ向けて!
2日目は、前日検討した、「事業構想を実現する上での課題から見た、TQM活動要素について実現すべき事項の明確化」について各グループから発表を行った。
ワークの進め方についてコメントがあり、イシューに対しての捉え方や重点思考の検討方法について、理解を深めた。質疑応答では、企画委員や参加者同士の議論があり、個人研究での取り組みに落とし込むための視点が得られた。
発表の後は、TQM推進計画の作成にあたり、改めてTQMのコアツールである「方針管理と日常管理」、「改善活動/小集団改善活動」についての理解を深めることを目的に講義・演習を行った。「方針管理と日常管理」は、中條委員が、「改善活動・小集団改善活動」については細谷克也委員長(品質管理総合研究所)からそれぞれ講義を行った。
トップマネジメントとして求められる役割、自身の立場に合わせた視点から講義を聴くことにより、より各活動に対する取組の重点、ポイントが認識できたとともに、改めてTQMの有用性が認識できたように思う。
質疑応答では、参加者の日頃抱えている業務に関連した疑問・悩みについてもアドバイスがあった。また、昨日中條委員からのTQM全体像の概要についての説明を聞いていたことで、より理解が深まったように考える。


午後は、引き続き、「新製品・新サービス開発管理とプロセス保証の考え方」と、「人財育成」についての講義があった。
「新製品・新サービス開発管理とプロセス保証」については、中條委員から講義があり、これまで誤って認識していたことについての気づき・理解が曖昧だった部分が明確になった。「人財育成」については、光藤委員から講義があり、質疑応答では、人財育成に関して、各社のエグゼクティブとしての心得を再認識いただいたものと考える。
6.現状の組織能力の評価とステージアップに向けた取り組み
今月最後のグループワークでは、組織能力を向上させるために、まずは現状の組織能力がどのレベルなのかをステージ1~5の5段階で確認し(ワークシートW32)、ステージアップのためのアクションを検討した(ワークシートW33)。
ここは現在の組織のレベル評価ではなく、“新しい事業構想を実現するうえでの組織能力”という視点で、レベル評価を行う。また、ここで言う“組織”とは自社だけでなく、活動システムの登場人物を指す。そのため、それぞれ「自社」「顧客」「パートナー」ごとに検討を行った。
そして、現状のTQMのステージをランクアップさせるためには、どのようなアクションが必要となるのか、とるべきアクションアイテムを抽出した。ここでのポイントは、経営環境の変化に対応するために必要となる事業構想を実現できる組織能力を獲得するためには、少なくともステージ4、できればステージ5のレベルに到達していたい。ということである。
その後、「TQM活動要素の実現事項設定シート」(ワークシートW34)を用いて、重点的に実施すべき事項を抽出し、具体的なアクションを定めたところで、ここまで実施した内容を、グループごとに発表し、意見交換を行った。





7.5月目のまとめと次月に向けて
今月は、これまで検討を進めてきた、事業構想基本フレームの「構想」をどうやってTQM推進計画へ落とし込むか、について検討をおこなった。
それぞれの班からの発表により、お互いに、自分たちの進め方だけでなく、異なる進め方があることを学べた。個人研究では、自分の課題に合った進め方で進めてほしい。
次月では、TQM推進計画のブラッシュアップをかけ、事業構想の具現化に向けた検討をさらに進めていく予定である。コロナ禍の中、9月に開講した本セミナーも5か月を消化し、いよいよ最終月まで残すところあと2回。3月19日(本セミナー最終日)に予定されている「個人研究発表会」に向けて、さらに自社内でも研究内容を高めていっていただきたい。
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