JUSE-エグゼクティブセミナー

2021年度 開催レポート

日程:2021年10月23日(土)~24日(日)
会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル

1.第3期 “これからの品質経営のかたちを学ぶエグゼクティブ教育” 2月目開催!
  サービス・マネジメント「価値づくり」の「レンズ」

前月(9月17日~18日)に開講した第3期「JUSE-エグゼクティブセミナー」の2月目が10月23日(土)~24日(日)の両日、日本科学技術連盟・東高円寺ビルにて、集合形式で開催された。

2月目は、「ポストデジタル×ポストコロナ」時代において、製品の生産・販売を通じた顧客の満足度向上(モノを生産、売る、サービスを提供する)活動だけにこだわらず、新たな顧客価値の創造を目指し、積極的に顧客と協業し、新たなソリューションを提供する「サービス・マネジメント:サービスを提供するビジネスへの転換」をメインテーマとして、講義と実践研究が実施された。

2.今の時代だからこそ、グッズ・ドミナント・ロジック(GDL)のレンズを
外し替え、「ポストデジタル×ポストコロナ」仕様のサービス・ドミナント・ロジック(SDL)、マルチ・サイド・プラットフォーム(MSP)のレンズにかけ替えてみる!

1日目は昨年度に引き続き、一橋ビジネススクール 国際企業戦略専攻 准教授&エクスターナル・アフェアーズ担当である、藤川 佳則 氏が登壇し、「サービス・マネジメント:「価値づくり」の「レンズ」」と題し、講義、演習を行った。リアルタイム・アンケートも活用していただきながら、講師と受講者が一体感を持って受講することができた。

本テーマは、本セミナーの基本コンセプトである「これからの日本はビジネスモデルで先行し、現場力勝負に持ち込めば負けることはない」の前段部分において、中核となる考え方である。

「サービス・マネジメント」は、Industry 1.0~4.0等の事業分野に留まらず、製造業のサービス化や企業内業務のアウトソーシング等、様々な分野にまで拡大しており、これからの「ポストデジタル×ポストコロナ」時代、企業・事業の未来を多方面から捉え、未来を切り拓くために重要不可欠な方法論であることを藤川氏の知見と経験を踏まえ、講義いただいた。

講義では、世界的企業である3社の事例をもとに、それぞれの企業が、なぜこの時代で生き残ることができているのか、その要因は何か、を題材に、参加者自身の会社の強み、自社の未来課題は何か、やるべきことは何かを検討した。

現在、地球規模で物事を考えた場合、世界ではここ数十年で以下のことが起きている。

● SHIFT(世界経済はサービス化へ:Petty-Clark’s Low)
● MELT(産業の垣根はあいまいに:モノ⇔サービス)
● TILT(未来は北緯31度の北から南へ:The World is「FLAT!」「NOT!」「TILT!」)

グローバル規模での急激な変化に加え、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が世間を賑わしている中、企業にとって、従来の「価値づくり」もモノからコトへ変化してきている。

「モノづくり」というレンズを外し、サービス・マネジメントの「価値連鎖(Value Chain)から価値星座(Value Constellation)」、「顧客と価値を創造する」という価値概念・顧客観の転換による「価値共創」のレンズを外したり、つけたりすることで、同じ物事でも見える世界や未来が変わってくることについて、具体事例を交え、わかりやすく説明いただいた。

● LENS 1:グッズ・ドミナント・ロジック(GDL)
 ・・・モノかサービスか。企業が価値を創造。
    企業が一方向的に造り込む「価値生産」。

● LENS 2:サービス・ドミナント・ロジック(SDL)
 ・・・モノもサービスも。企業と顧客が価値を共創。
    企業と顧客が共に創り出す「価値共創」。

● LENS 3:マルチ・サイド・プラットフォーム(MSP)
 ・・・「価値共創」の相手を複数に。「価値獲得」の相手も複数に。
    二つ以上の異なる顧客サイドを巻き込む「価値共創」。

演習では、グループに分かれて、自社・関連企業の事業が「LENS1」から「レンズ2・3」へ転換する必要性や可能性の高い事業は何か?その事業を「LENS1」から「レンズ2・3」へ転換する際に直面しうる最大の課題や障害は何か?その課題や障害に対してどのような解決策があるか?の検討と発表、講評が行われ、転換のための思考方法、実践へのヒントを、身をもって学ぶことができた。
参加者には、これまでのレンズを外し、価値共創というレンズにかけ直して、今後の実践研究に臨んでいただくことを強く希望する。

発表風景

3.「品質経営フレームワーク」の再検討、Doの展開

1日目の最後から2日目にかけて、グループに分かれ、モデル企業をベースとした品質経営推進フレームワークの検討ワークを行った。具体的な実施内容は以下の通り。

  1. 顧客の未来課題から顧客Doニーズを展開する
  2. 顧客Doニーズのうち我々(自社)が担いたいことを特定する
  3. 我々(自社)が担いたいことについて新製品・サービスアイデアを導出する

1.顧客の未来課題から顧客Doニーズを展開する

Do展開上の留意点は以下の通り。
① 顧客Doニーズは、顧客がしたいジョブ「●●を ××する」が基本表現
② 第三者から観察可能な具体的な振る舞いを捉えること
③ 「手段・方策・製品を用いる」はNG。それらを用いて、どのようなジョブを遂行するかがDoニーズである
④ 「顧客が喜ぶ一連のストーリー」を1つでも多く見つけること(まずは、縦軸ではなく、横軸のつながりを重視して展開する)
⑤ 何より皆さんの「ときめき」を大事にする。

1日目の藤川講師からの講義にあった、「レンズのかけかえ」「マルチ・サイド・プラットフォーム」等の考え方を学んだことにより、より魅力的な議論をすることが出来た。

2.顧客Doニーズのうち我々(自社)が担いたいことを特定する

顧客Doニーズを展開していくと、あるところから、自社で担うことが可能な・自社が担いたいと思うDoが出てくる。そのDo(自社Do)の特定を行った。

3.我々(自社)が担いたいことについて新製品・サービスアイデアを導出する

そして、自社で担うことが可能な・自社が担いたいと思うDoを具体的にどのように担うのか、その新製品・サービスのアイデアを5つ/人ずつ導出した。いずれのアイデアもとても魅力で、今後のストーリー展開が楽しみな結果となった。

ワークシートW13(Do展開表)
ワークシートW13(Do展開表)

次月はデザイン思考について学び、デザイン思考の観点で再度、2月目のグループ研究の内容をブラッシュアップさせていく。

文責:平山 貴之