JUSE-エグゼクティブセミナー

2020年度 開催レポート

日程:2020年8月21日(金)~22日(土)
会場:日本科学技術連盟 東高円寺ビル

1.第2期“これからの品質経営のかたちを学ぶエグゼクティブ教育”2月目開催!
   「ポストデジタル×ポストコロナ」時代における価値づくりのレンズ

前月(7月17日~18日)に開講した第2期「JUSE-エグゼクティブセミナー」の2月目が8月21日(金)~22日(土)の両日、日本科学技術連盟・東高円寺ビルにて、集合とリモートのハイブリッド形式で開催された。

2月目は、「ポストデジタル×ポストコロナ」時代において、製品の生産・販売を通じた顧客の満足度向上(モノを生産、売る、サービスを提供する)活動だけにこだわらず、新たな顧客価値の創造を目指し、積極的に顧客と協業し、新たなソリューションを提供する「サービス・マネジメント:サービスを提供するビジネスへの転換」をメインテーマとして、講義と実践研究が実施された。

2.今の時代だからこそ、グッズ・ドミナント・ロジック(GDL)のレンズを外し替え、
   「ポストデジタル×ポストコロナ」仕様のサービス・ドミナント・ロジック(SDL)、
    マルチ・サイド・プラットフォーム(MSP)のレンズにかけ替えてみる!

1日目は昨年度に引き続き、一橋ビジネススクール 国際企業戦略専攻 MBAプログラム・ディレクター&准教授である、藤川 佳則 氏が登壇し、「サービス・マネジメント:「価値づくり」の「レンズ」」と題し、講義、演習を行った。

本テーマは、本セミナーの基本コンセプトである「これからの日本はビジネスモデルで先行し、現場力勝負に持ち込めば負けることはない」の前段部分において、中核となる考え方である。

「サービス・マネジメント」は、Industry 1.0~4.0等の事業分野に留まらず、製造業のサービス化や企業内業務のアウトソーシング等、様々な分野にまで拡大しており、これからの「ポストデジタル×ポストコロナ」時代、企業・事業の未来を多方面から捉え、未来を切り拓くために重要不可欠な方法論であることを藤川氏の知見と経験を踏まえ、講義いただいた。

藤川氏 講義風景
藤川氏
講義風景

講義では、世界的企業である4社の事例をもとに、それぞれの企業が、なぜこの時代で生き残ることができているのか、その要因は何か、を題材に、参加者自身の会社の強み、自社の未来課題は何か、やるべきことは何かを検討した。

現在、地球規模で物事を考えた場合、世界ではここ数十年で以下のことが起きている。

● SHIFT(世界経済はサービス化へ:Petty-Clark’s Low)
● MELT(産業の垣根はあいまいに:モノ⇔サービス)
● TILT(未来は北緯31度の北から南へ:The World is「FLAT!」「NOT!」「TILT!」)

グローバル規模での急激な変化に加え、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が世間を賑わしている中、企業にとって、従来の「価値づくり」もモノからコトへ変化してきている。

「モノづくり」というレンズを外し、サービス・マネジメントの「価値連鎖(Value Chain)から価値星座(Value Constellation)」、「顧客と価値を創造する」という価値概念・顧客観の転換による「価値共創」のレンズを外したり、つけたりすることで、同じ物事でも見える世界や未来が変わってくることについて、具体事例を交え、わかりやすく説明いただいた。

● LENS 1:グッズ・ドミナント・ロジック(GDL)
・・・モノかサービスか。企業が価値を創造。
企業が一方向的に造り込む「価値生産」。
● LENS 2:サービス・ドミナント・ロジック(SDL)
・・・モノもサービスも。企業と顧客が価値を共創。
企業と顧客が共に創り出す「価値共創」。
● LENS 3:マルチ・サイド・プラットフォーム(MSP)
・・・「価値共創」の相手を複数に。「価値獲得」の相手も複数に。
二つ以上の異なる顧客サイドを巻き込む「価値共創」。

演習では、オンライン会場、オフライン会場が一体となり、サービスとは何か?自社におけるGDLからSDL、さらにはMSPへの転換等の検討と発表、講評が行われ、転換のための思考方法、実践へのヒントを、身をもって学ぶことができた。

1日目の最後には、1月目からの課題である「我々は顧客の何を実現しているのか:何屋規定」とDoニーズを導出し、それぞれ発表いただいた。参加者には、これまでのレンズを外し、価値共創というレンズにかけ直して、今後の実践研究に臨んでいただくことを強く希望する。

発表風景 会場風景
発表風景
集合とリモートの会場風景

3.「品質経営フレームワーク」の再検討、Doの展開

2日目は、グループに分かれ、モデル企業をベースとした品質経営推進フレームワークの検討ワークを行った。具体的な実施内容は以下の通り。

  1. 未来の社会的課題(見直し)
  2. ジョブ洞察シート(顧客Doの再検討)
  3. Do展開表を使用したジョブ展開

1.未来の社会的課題(見直し)

先月検討した、(顧客の)未来の社会的課題について、以下の視点で見直しを行った。

  1. ① 自社の課題になっていないか
  2. ② 時制が現在ではなく未来になっているか
  3. ③ 方策・手段の表現になっていないか

2.ジョブ洞察シート(顧客Doの再検討)

上記にて見直しした未来の社会的課題をもとに、顧客Doの再検討を行った。
「顧客は何を出来るようになれば喜ぶか?」という視点で、○○を××する(したい)という表現で顧客のDoニーズを挙げていった。

前日の藤川講師からの講義にあった、「レンズのかけかえ」「マルチサイドプラットフォーム」等の考え方を学んだことにより、先月よりも、より踏み込んだ議論をすることが出来た。

3.Do展開表を使用したジョブ展開

導き出した顧客Doを起点にし、より具体的に展開していく。
出てきたDoに対して、「それは具体的に何をするのか?」という視点で、2次Do・3次Doと展開する。
展開の途中までは顧客のDoだが、あるところから、自社で担うことが可能なDoが出てくる。
次月は、そこからマルチサイドプラットフォーム(レンズ3)の視点を含めて自社Doを検討した後、新たなハード(製品)、ソフト(仕組み、ITツール)を検討する。

グループ研究の様子
グループ研究の様子
ワークシートW14(Do展開表)
ワークシートW14(Do展開表)
文責:平山 照起、菅田 未優