2019年度 開催レポート
会場:日本科学技術連盟・西新宿本部
1.「JUSE-エグゼクティブセミナー」4月目実施される!
-事業構想を実現するためにいかに組織開発を行い、価値創造体系に落とし込むか!-
今年度新設した「JUSE-エグゼクティブセミナー」の第4月目が10月17日(金)、18日(土)の両日、日本科学技術連盟・西新宿本部にて開催された。
本セミナーは、1月目に「これからの経営は、経営者自らが顧客価値創造を考え抜くこと、そして顧客価値創造と組織能力向上の連携が不可欠であること」を学び、2月目は、グローバルの中、日本企業が競争優位に立つために「サービスを提供するビジネスへの転換が不可避であること」、そのために「現在の顧客スクリプトをより広げ、顧客のDoニーズを徹底的に考えること」を自社研究で体感した。さらに3月目では「事業構想から実装に向け、いかに不確実性を回避し安定したマネタイズ・シナリオを確立するか」を踏まえ、顧客進歩プロセス、自社の活動システム、そのためのイシュー立てを考え続けてきた。
※過去のセミナーレポートはこちら
4月目は、事業構想を実現するために、いかに組織能力を獲得するか。そのためにはまず組織開発を行い、自社の取組みに落とし込むか、を主題として、講義と自社研究が実施された。
2.組織内部の諸機能を有機的に結合する取り組みを実行するか!
1日目は、中村和彦氏 (南山大学 人文学部心理人間学科 教授、人間関係研究センター センター長)が登壇し、「組織開発の考え方と社内での展開」と題し、講義、演習が行われた。
日本における組織開発の第一人者である中村氏は、まず冒頭に組織開発の本セミナーにおける定義を「組織開発とは、組織内部の諸機能を有機的に結合する取り組み」とし、結合する必要のあるものは、個人、対人間、グループ、グループ間、組織全体、と説明した。
その後、「なぜ組織開発が必要とされているのか?」、「なぜ結合(つながり/協働)が必要なのか?」を解説した後、組織開発の推進には「プロセス」がキーワードであり肝であると力説された。
そんな30分程度の講義の後、「組織の中で起こるプロセスを体験から学んでいきましょう!」と実習「トランプ奪取」が行われた。
この実習の内容を言葉で伝えるのはなかなか難しいのだが、概要は以下のような形で進められた。
- セミナー参加者を、ある会社の社員と設定する。
- その企業には、営業一部と営業二部があり、それぞれの部には2つの課があり、参加者はそれぞれに所属する。
- 各課の仕事は、トランプのいわゆる「神経衰弱」をすること。
- つまり、同じ数字のカード(マークは異なる)を2枚見つけることで業績(得点)を上げることができる。
- 2つの部は競争関係にあり、部として多くの業績(得点)をあげることが求められる。
- 一定の点数をとれなかった部は廃止される。
このゲームは、楽しいながらに適度な緊張感があり、あっという間にトランプ奪取実習の時間が過ぎていった。
組織における部長、課長、営業パーソンの各役割が再認識されると同時に組織プロセスをよくしていくこと、対話を通した協働づくりの必要性を痛感した。
本セミナーでは、これまで自社研究において、サービス・ドミナント・ロジックの考え方をベースに「事業構想」策定を行っているが、実行する組織の力がなければその事業は実行されない、いわば“絵に描いた餅”になってしまう、そのためには組織開発が不可欠である、ということが演習により、理解・体感できたと考える。
実習での体験を通して、組織の中で起こるプロセス(コミュニケーション、協働と競争、リーダーシップ、目標・役割・手順の明確化や共有化など)を理解する。
以下、詳述は控えるが、組織開発における筆者が感じたポイントを記す。
- 組織開発は、新しいものではなく、目新しい手法でもなく、「私たちの中にすでにある」考え方、捉え方、アプローチの仕方、価値観
- ある1つの具体的な手法ではなく、理論と手法のまとまり
- 個人だけでできる事業は限られている
- 能力がある個人が集まってもチームとして成果が出せる訳ではない
- 人と人が、部門と部門がどのようにつながり、協働するか「プロセス」が重要
- 手法を実施することが組織開発ではない
- 組織開発の手法を実施すること、対話の場を設けるだけがきっかけである。
- 日本企業において、近年組織開発部を置く企業が増えている。
3.事業構想基本フレームの評価・講評
2日目は、加藤講師により「事業構想基本フレーム」の評価方法について説明があり、自社で作成してきた「事業構想基本フレーム」に対して、17の評価項目と照らし合わせて、参加者全員で示し合い評価を行った。
評価項目は以下の4つに大別される。
- 評価項目①:顧客視点になっているか。
- 評価項目②:グッズ・ドミナント・ロジックではなく、サービス・ドミナント・ロジックの考えになっているか。
- 評価項目③:模倣困難な内容(他社に真似できない内容)になっているか。
- 評価項目④:包括的に筋が通っているか。
各社の「事業構想基本フレーム」の良い点、再検討すべき点を導出し、全員で意見交換を行った。加藤講師からも各事例に対する講評も得られ、自社の「事業構想基本フレーム」の確立を目指していく。
4.収益獲得のシナリオに基づき活動システムの精緻化を図る!(自社研究)
午前の各事例に対して評価した項目を念頭に置き、午後は、グループワークに取り組み、これまでの振り返りと「品質経営推進フレームワーク」の検討を行った。検討内容は次のとおり。
- (1)「顧客進歩プロセス」は顧客の成長が描かれているか?「マネタイズ・シナリオ」は自社のハード・ソフトを駆使して4コマで対価が膨らむ様子が描かれているか?の振り返り
- (2)活動システムの実現に向けて組織一丸となって答えるべき問いのイシューが導出されているか?
- (3)価値創造体系づくり
- (4)検討内容の発表、講評
※前月(9月)の開催レポートはこちら
(1)これまでの振り返り
1日目の中村和彦氏の講義・演習を踏まえ、前月(9月)までに実施した「顧客進歩プロセス」、「活動システム」、「イシュー立て」の検討を振り返り、活動システム、イシューのブラッシュアップ、価値創造体系づくりの検討を行った。
(2)イシュー(活動システムの実現に向けて一丸となって答えるべき問い)の見直し
「いかに」「何を」「どうするか」を顧客Doの観点で検討してきたイシューと獲得すべき組織能力とは何かについて、改めて再検討を行った。
(3)価値創造体系づくり
価値創造体系づくりでは以下の視点に着目し取り組む。
- ①活動システムに関わる部門を列挙する
- ②部門別に、業務(Do)をリストアップする
- ③各業務の前後関係に着目して並べ体系図にする
(4)検討内容の発表、講評
各グループで取り上げているモデル企業の活動システム、イシューから価値創造体系の検討結果の発表があった。全グループとも、活動システムで携わっている企業、部門、協業先などのステークホルダーをよく理解し、まとめられている印象であった。
5.4月目のまとめと次月に向けて
品質経営推進フレームの検討では、前月(9月)同様、各グループによって進行のばらつきはあるが、「価値創造体系図」の検討まで進んだ。
これまで、約4か月をかけて、「顧客の何を実現して儲け続けるか?」に関する事業構想(構想)について検討してきたが、次回(11月)から「どのように事業構想を実現するのか?」にシフトしていく。
次回(第5月目)は、中條武志氏(中央大学 理工学部 経営システム工学科 教授)による「方針管理と日常管理」、「機能別管理」、細谷克也氏(品質管理研究所 代表取締役 所長)による「改善活動/小集団改善活動」についての講義が予定されている。本セミナー学長である坂根 正弘 氏のキーメッセージ「これからの日本は、ビジネスモデルで先行し、その上で現場力の勝負に持ち込めば、負けることはない」のように、顧客価値創造活動とTQMの連携を目指し、引き続き、全員参加型経営を模索していく。
これまでに策定した「事業構想基本フレームワーク」を、中條氏、細谷氏の講義を踏まえ、TQM推進計画書へ具体的に落とし込んでいき、いかに実現をするか、を考える重要なプログラムである。